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第百十八話 手錠3


「まあ!そういわれるのは久しいので嬉しくなってしまいます」


 両手を合わせる鮮血姫。うまく切り抜けられそうな気配がしてきた。


「そういうことなら、一緒にお茶でも――」


「鮮血姫!色づいてないで仕事をしろ!」


 鎧を着た人が声色を荒くして会話に割り込んでくる。

 余計なことをしやがって、と思いながら鮮血姫の顔色をうかがうと頭を振り眉をひそめていた。

 

「申し訳ありません。とても嬉しいお誘いなのですが、先にやらなければいけないことがありますので」


「……それって、俺たちをつかまえるってことですよね」


「はい」


「ということは、断られたってことですか……」


 こういうイカレたタイプは理屈よりも自分のルールに従うとかありそうなので、落ち込んで感情に訴えかけてみた。 


「いえ、そんなつもりではありませんよ」


「でも、自分が捕まったらお付き合いなんでできないです」


「問題ありません。捕まってしまってもお話をする機会はいただけますし、私もあなたと同じ牢に入ってしまえばいいのですから」


 鮮血姫は当然のように言う。

 

 いや!問題ありまくりだろ!まず、何をして俺と同じ牢に入るつもりなんだ!狂ったタイプに常識が通用しないというはあってたけどさ!


 考えと違った常識破りをされて思い通りに動かすのは難しい相手であることを悟っていたら、鮮血姫が目の前に迫り拳を振るっていたから避けた。

 ものすごい風圧が横から吹いて、借りた家がある後方からミシミシミシ!と音がする。


「良く避けました」


 小学生に花丸をあげる先生のような口調だった。

 

 そりゃ、避けなかったら頭から上が吹き飛んでいただろうからな……。


「クイックバレット!」


 少しも容赦してくれない――いや、してくれているのかもしれないが、まだまだ手加減が足りない鮮血姫にゼロ距離地点で魔弾をお見舞いした。

 けど、避けられてしまう。


「ふふ、やりますね」


 いや、頬をかすめて血を垂らすことは出来ていたみたいだ。それなのに何故か、鮮血姫は艶めかしく微笑んでいる。

 そんな鮮血姫を後方からジェナが棒を叩きつけようとするが、


「グハッ!!」


 鮮血姫は半身ずらし、逆に突進してきていたジェナを地面に叩きつけた。

 苦しそうな声をしたジェナに気を囚われると、鮮血姫が迫っており、


「他の方に目を奪われないでください」


 魔力もなにも篭っていない拳だったのに防御壁が割られ、背中から何かが破れるのを感じながら壁に叩きつけられる。


「いつつぅぅ」


 痛みに耐えながら目を開くと手錠を見せつけているメイベルがいた。


「外して」

 

……こういう場では判断を遅くするだけで命取りになるか。


「分かった」


 メイベルの両手首に繋がっている手錠へ魔力を流し込んだ。

 

「私が注意を引くから、ジェナとデイブを連れて逃げて」


 いつもの感情が見えない表情なのだが、瞳に強い意志が宿っていた。

 過去、現在含めて接してきて見たことがない芯の強さに気圧されていると、倒れこんでいる俺と目線を合わせるためにしゃがみこんでいたメイベルは立ち上がり、鮮血姫がいる方を向く。

 俺も手助けした方がいいんじゃないかと思った瞬間には、メイベルは鮮血鬼のことを氷漬けにしていた。


「いきなり凍らせてくるなんて、ひどいではありませんか」


 鮮血鬼は凍らせられていたはずなのに、内側から氷を割ってなんてことないようにメイベルに抗議する。


「あなたが私の彼に手を出そうとするから」


「彼?というのは?まさか、先ほどナンパしてきてくれた男性の事でしょうか?」


「そう」


 ……注意を引こうとしてくれているのは分かるけど、ちょっと責めた注意の引き方じゃないか?俺じゃあ手を出せない領域の戦いが起きて力不足を嘆く場面何だと思っていたんだけど?


「彼ということは、交際をなされている、ということでしょうか?」


「うん」


 いや、してないだろ!次に、鮮血姫に会った時が怖いからそういう嘘は辞めろよ!


 身を粉にして?いや、俺を出汁にして注意を引くメイベルと鮮血姫の寸劇に目が奪われる。俺の動きが止まっていることに気づいたメイベルが、早くやれとデイブがいる方向に顔を動かして訴えてきた。

 

「それなのに彼様はナンパを私にしてきたのですか?」


「うん、彼は美人に目がないから」


「まあ!」


 俺は今まで女性と付き合ったことすらないぞ!鮮血姫さんも頬を染めるところじゃない!


 とんだ風評被害とツッコミどころに声を出しそうになるが、今は逃げることが先決だと言い聞かせてデイブの元まで赴く。


「大丈夫か?」


「はい。俺はなにもされてないので。それよりもセオドアさんは……」


 デイブはあそこにいる二人に一瞬目を向けてから、俺に憐れむような瞳を向けていて、


「問題ないから……。だから、そんな目で見ないでくれ」


「あ……すみません」


 デイブのしゅんとした謝罪が不憫な目に合っていることを自覚させられて心がえぐられる。


「……とりあえずここから出よう」


「そ、そうですね」


 メイベルと鮮血鬼が争っていない出口を使い、気絶していたジェナを拾って村から脱出した。


お読みいただきありがとうございます

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