第5話 答え合わせ
私は娘の…………サクラの言葉を思い出していた。
『碧ちゃんの手紙には答えが書かれているよ。』
『答え?』
『うん。凄く分かりにくいけどね。先ずは前回三人で結婚出来ていた時の状況を考えて欲しいの。』
『状況? でもそれは…………』
『違う違う。別の男と寝ろって意味じゃないよ。三人で結婚する為には条件があるって事。』
『条件なんてあるの? お母さん良く分からないんだけど。』
『あるの。条件は二つ。運命に干渉する力を弱める事。死を偽装する事。』
『え?』
『お母さんは運命に干渉する力が強すぎる。だからお父さんと碧ちゃんが結ばれる運命を破壊してしまったんでしょ?』
『……そうね。』
『なら、その力を弱める必要があるの。そもそも勇者桜だって怪物を倒したなら運命に干渉する力を持っていた。だからお母さんにもその力が引き継がれた。』
『……。』
『最初、お母さんの運命に干渉する力が弱かったのは輪廻を繰り返して力が弱った可能性もあるけど、勇者桜が自身の能力を封じたその時、一緒に運命に干渉する力も弱まったからとは考えられない?』
『そう……ね。サクラに言われて封印魔法に関する知識が浮かんできたわ。サクラの言う通り、能力全般を封じる類いの魔法だったみたい。』
『やっぱりね。勇者桜の知識が引き継がれたと言っても、記憶まで引き継げたんじゃないなら完全に自分のモノにしたわけじゃない……という事なんだねきっと。思い出そうとしなければ知識として活用出来ない場合もあるのかも。』
『えぇ。そうみたい。』
『それなら話は簡単。後は繰り返しの能力はそのままに、運命に干渉する力の方にだけ指向性を持たせて封印魔法を使えば良い。』
『成る程ね……。』
『次に条件の二つ目。死を偽装しろ、についてよ。運命に干渉する力を弱めただけじゃ上手くいかない。』
『死んだフリって事?』
『うん。だって、お父さんとお母さんは元々婚約してたんでしょ? なら、お父さんは他の女にはなかなか靡かない。という事は、お父さんと碧ちゃんが結ばれるのはお母さんが寿命とか事故で死んだ後。下手すれば老後になるよ? しかもお母さんが死ぬと繰り返しが発動するから、結局結ばれないわけだし。』
『その通りなのよ。だから困ってるの。』
『普通は旦那が余所の女に靡かないのは歓迎すべきなんだけどなぁ。困る方が変なんだからね? まぁ良いか。とにかく、お母さんは二人をくっつける為に、一度二人から自然な形で離れる必要がある。』
『だから死を偽装する、なのね!』
『そう言う事。つまり、前回の再現というのはお母さんが怪物を倒す前と同程度にまで運命に干渉する力を弱めろという事。加えて、お父さんと碧ちゃんを自然な形で先に結婚させろという事。その為には…………。』
『後は分かるわ。私達を欺けというのは、二人が結婚する為のお膳立てとしてお母さんが死を偽装すれば良いのね? 運命を捻じ曲げろというのは、弱めた力で運命に干渉して結婚した二人に私も加えてもらえば良いという事よね?』
『正解。』
『でも輪を閉じろ、が分からないわ。』
『それはね。全てが上手くいった後、繰り返しの力が来世でも発動しないよう完璧に封印しろという事よ。ループの環を閉じろって意味。』
『あぁ……そうしないとひたすら繰り返しになるって事だもんね。』
『納得した?』
『えぇ。でも封印魔法はまだ完璧じゃないのよ。そこまで細かい制御が出来るかどうか。』
『勇者桜の知識を引き継いだお母さんなら出来るって。私も魔法の研究に協力する。お母さんの人生が永遠に終わらないなんて可哀想だもんね。だから魔法の研究を一緒に頑張ろう?』
『サクラ…………。なんて出来た娘なの。』
「エイミー。つまり君は初めから生きていた……と、そういう事なんだな?」
「うん。」
レイベルトと碧ちゃんにはしっかり説明した。
私が持つやり直しの能力、前回と前々回の結末、そして…………どうして死を偽装する必要があったのか、を。
「最初に言ってくれれば……って言いたいけど、それじゃあ前回は上手くいかなかったんだもんね。」
「そうなのよ碧ちゃん。本当に頑固ベルトには困ったものよね?」
「が、頑固ベルト……。」
私の一言に肩を落とすレイベルト。
前回サクラの前で言ってやった時と同じ反応だった事に思わず笑みがこぼれる。
「確かに変なところで頑固だよね。」
「アオイまで……。」
碧ちゃんも分かってるみたい。
「そ、そんな事より……エイミーは生きてたんだ。これからは一緒に暮らすんだろ?」
「うん……今更厚かましいかもしれないんだけど、二人の結婚生活に私も加えてくれますか?」
大丈夫だとは思うけど、碧ちゃんは良いって言ってくれるかな?
ダメだって言われたらどうしよう……。
「当たり前だ!」
「勿論!」
弱気になった私を元気づけるかのように、力強く返事を返してくれる二人。
「エイミーは苦労してこの運命を勝ち取ったんだ。ダメなんて言うはずないじゃん。むしろ本当に私が一緒で良いのか不安なぐらいだよ。」
遠慮がちに視線を向けてくる碧ちゃん。
全然気にしなくて良いのに。
「私は大歓迎よ。碧ちゃんも一緒にいて欲しかったから頑張れたんだからね。」
私の言葉にパッと笑顔を見せる。
「ありがとう!」
可愛い。チューしたい。
「あー……ところで、エイミーは今まで何をしてたんだ? もっと早く帰って来てくれても良かったんじゃないか?」
「うん。私も本当はもっと早く姿を見せようと思ってたんだけど……。」
「けど?」
「状況をより確実なものにする為に、レイベルトが碧ちゃんに手を出すまで姿を見せたくなかったの。」
「……そうか。」
レイベルトったら、なかなか碧ちゃんに手を出さないから出るに出られなかったのよね。
「ちょっと待って! もしかしてエイミー…………ずっと見てたの?」
「バッチリ。」
以前は三人でしてたけど、二人がしてるのをただ見るだけってのも新鮮だったなぁ。
「恥ずかしい……穴があったら入りたい。」
「覗きはどうかと思うぞ。」
「ごめんね? でも、今まで頑張ってきたんだから、ちょっとくらいご褒美があっても良いよね?」
「そんなのがご褒美になるのか?」
レイベルトは碧ちゃんと違って可愛くない。でもチューしたい。
「まぁまぁ。もういいじゃない。全て丸く収まったんだから。」
「君がそれを言うのか……。」




