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戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。  作者: 隣のカキ
第三章 ルートⅠ

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第7話 説得

 ストレッチ王国はイットリウム王国に吸収され、新生イットリウム王国となる事が決定した。


 色々と話し合わなければいけない事が山積みのようで、一先ず私達レイベルト隊は王が用意してくれた屋敷に滞在して報せを待っている。


 私達が貴族になる事は確定しているものの、どの程度の爵位になるかは検討中みたい。



「碧ちゃーん!」


「何―? 急にちゃん付けなんてしてー! 今お風呂入ってるから後でー!」



 なんと、この屋敷にはお風呂が備え付けられている。流石は王が用意した屋敷。



「私も入るー!」


「え!? 待って! ここは一人用だから!」



 大浴場が一人用なわけないでしょ。咄嗟に出た嘘なんでしょうから仕方ないけど。


 碧ちゃんは私が女だという事をまだ知らない。


 そして碧ちゃんは、私が碧ちゃんを女だと知っている事をまだ知らない。



「ダメでーす! 入りまーす!」


「ちょっ! マジでふざけんな!?」



 焦ってる焦ってる。


 ここでお互いが女だと強制カミングアウトしてやるのよ。



「ほーら裸の付き合―い!」


「キャアアアアアアアアア!!」



 自らの体を隠し、湯船に浸かって悲鳴をあげる碧ちゃん。



「エイミーです。戦争では大変お世話になりました。」



 私が素っ裸で深々と頭を下げると、碧ちゃんは驚いた顔でこちらを凝視してくる。


 完全に目が点になってるわ。



「え? エイミー? エイじゃなくて?」



 碧ちゃんの頭上にはいくつもの?が浮かんでいた。



「エイミーです。」


「あ、あぁ! エイミーね。知ってる知ってる。エイの妹さんだ。」


「違うよ?」



 その設定、どこから出てきたの?



「違うの?」


「うん。」



 碧ちゃんは考え込むようにして腕を組み、首を傾げている。


 そして手をポンと打ち鳴らし、今度こそ間違いないという顔つきで口を開いた。



「戦争でおち〇〇ん取れちゃったの? 大丈夫?」


「違うっ!」


「え?」


「ほら! 胸を見てよ!」



 私は自身の女性らしさを強調する為に胸を突き出して見せてやった。



「小さい……。」


「もうっ! 貴女がデカすぎるのっ!」



 確かに無理矢理お風呂場に突入したのは悪かったけど、まさかこんな形でダメージを負うなんて……。



「ごめん。」



 惨めになるので謝らないで欲しい。



「私は最初から女。エイってのは仮の名前で、本当はエイミーって言うの。」


「ほへー。」


「で、碧ちゃんが女だって気付いてたから、お風呂場に突入したのよ。」


「いやいや、ビックリするじゃん! 心臓止まるかと思ったよもうっ!」



 バシャバシャとお湯を叩いて怒りを示す碧ちゃん。


 あぁ……私の知ってる碧ちゃんだ。



「エイミーはいつから私が女だって気付いてたの?」


「実は最初から。」


「えぇ? だったら言ってくれれば……。」


「ちゃんと理由があるんだって。後でレイベルトと一緒にその事について話そう?」


「それは……ダメ。私は男のフリを通す。」



 え?



「どうして? レイベルトが好きなんじゃないの? 男のフリしてたらいつまでも友達のままだよ。」


「レイベルトには婚約者がいるんだ。だから、ダメだよ。振り向いて貰えない。」



 俯いてこちらに顔を見せようとしない碧ちゃん。



「婚約者も碧ちゃんなら良いって言ってるよ。」


「どういう意味? 自分の男に別の女を宛がう婚約者なんていないでしょ。」


「ここにいるよ?」



 私の言っている意味を理解していないのか、何言ってんのコイツみたいな顔でじっと見てくる碧ちゃんは結構辛辣だ。



「だから私がレイベルトの婚約者。そして、碧ちゃんをレイベルトと結婚させようと目論んでるんだけど……協力してくれないかな?」


「はい?」



 まだ混乱してるのかしら?


 まぁ、突然過ぎるから仕方ない。



「私がその婚約者なの。」


「嘘……でも、言われてみれば婚約者の名前って確かエイミーだった気がする。」


「そのエイミーです。」


「ちょっと待って! どうしてそんな事しようとするの!?」



 碧ちゃんにしてみれば意味の分からない行為よね。



「気になるでしょ? だから、お風呂から上がってレイベルトと話をしよう? ちゃんと女である事を隠さず、ね。」







 碧ちゃんは女である事を打ち明けるのに抵抗を示したけれど、最終的には折れてくれた。


 ここまでは上手くいった。


 後もう少し!



「レイベルト。」



 私は戦争以前にしていた格好でレイベルトに声を掛ける。



「どうした? 男のフリはやめたのか?」


「うん。碧ちゃんから話があるって。」


「碧ちゃん?」


「そう碧ちゃん。私からも話があるの。」


「はぁ……。」



 あ、これは意味が分からない時の顔だわ。



「あ、あの……碧、だよー?」



 声のする方に視線を向けると、部屋の入口からひょっこり顔を覗かせ恥ずかしそうにもじもじしている人物がいた。


 もうっ! どうして自信なさげなの!?


 碧ちゃんは世界一可愛いんだから自信持って!



「は?」



 レイベルトは驚きのあまり言葉を失っている。



「あ、碧です。実は……女でした。」



 小さな声を発して佇む碧ちゃんはこの国の人間から見るとまるで異国の姫のよう。


 レイベルトが呆けている間に私はそっと碧ちゃんに耳打ちする。



(碧ちゃん。胸でギュッと谷間をつくって。)

(何それ? ヤダよ。馬鹿みたいじゃん。)

(そんな立派なモノ付けといて、今使わなかったら意味ないでしょ。)

(恥ずかしいってば。)

(良いから。レイベルトは巨乳派だから。)



「あ、あぁー……えっと、なんだ。碧は……女、だったのか?」


「う、うん。あの……戦争でお〇〇ちん取れちゃって。」



 ちょっとーーー!!! 何を口走ってるの!?


 焦ってるからって意味分かんない事言わないでーーー!!



「は? それは大変だろ!!」



 何で信じるの!?



「嘘! 嘘だから! 碧ちゃん焦って嘘ついちゃっただけだから!」


「嘘? 嘘ってなんだ? 取れた事か? それとも女だって事か?」



 ダメね。このままだと収集がつかないわ。



「良く見てレイベルト。男はこんなに胸がデカくないでしょ?」


「あ、あぁ……。」


「触ってみて。」

「勝手に触らすな。」



 流石は勇者。鋭い突っ込みだわ。


 それでこそ碧ちゃんよ。



「勇者碧は実のところ女だった。そしてレイベルトが大好きで結婚したい。婚約者の私もそれを認めた。ここまでは良い?」


「あ、あぁ……うん? いや待て。」


「待たない。碧ちゃんと結婚しよう?」


「待て待て! 突然過ぎる!」



 レイベルトは何が不満なの?


 こんなに美人な嫁を連れてきてあげたのに……。



「エイミー? 確かにレイベルトの事は好きだけど、三人で結婚とかは抵抗あるっていうか……。」


「私はない。」


「えぇ?」


「二人は良く考えて。健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も……どんな時も三人で乗り越えてきたよね? だから結婚も三人でするべきだと思うの。」


「富んでたり貧しかった時なんて無かったじゃん。」


「余計な事言わないで。」


「あ、はい。」


「私はね? 勇者桜の生まれ変わりで、時を戻ってやり直す能力を持ってるの。信じられないかもしれないけど、前回は三人で結婚してたんだから。」




「は?」

「え?」


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