始まりはこの後に
ここは学校。とはいえ、それではつまらなすぎる。変わっている点がある。【魔法】が使える生徒【も】いる点だ。その生徒らは、精霊の加護により魔法が使えるのだが、精霊には【火・水・風・地】の四種類があり、それぞれの属性の魔法しか使えない。説明はこれくらいにして、物語を始めよう。
「先生ー! 【田中】くんが寝ています!」
「まぁ!」
歳は十七くらいだろうか?巨体が机に突っ伏している。呼吸は深くイビキで授業はままならない。
「皆さん見ててくださいね。私の授業で居眠りをすると……」
教師の指は田中を指している。それは、やがて野球ボールくらいの球になり、高速で放たれた。
しかし、田中には効かない。
「あら?私の魔法が?」
火の魔法が効かず困惑する教師。すると他の生徒が言った。
「先生、忘れたのー?田中くんは特異体質の【二十四節気】の魔法が使えるんだよー!」
すると、一人の女子生徒が立ち上がり呟く。
「シルフ・プロトコル・ク・ンセイニク。……。先生、これで田中くんのイビキ、【音】を封じました。授業を続けてください」
「ありがとう、【モンハン】さん。音は空気の振動、つまり、風の精霊【シルフ】の力で音を封じたのね」
ウォンウォンウォン! ブーン!
「もう! 次は何!?」
どうやら校庭からの音らしい、バイクかな?
「田中ぁー! 出て来やがれ!!」
きっちりヘルメットは被っている暴走族、訂正、暴走してる一人、訂正、独りの男が田中を呼んでいる。
「まーたやって来たぜ。コントレイル男子校の不良(?)、【ライズ】だ。田中に喧嘩ふっかけてくるんだよなぁ」
しかし、田中は音が遮断されているため、深く眠っている。
バイクのライズを鎮圧するため、体育教師が出陣!
「君ー! どこの学校だい?ダメじゃないか! 校庭を!」
ライズは「うっせぇ!」と言って、ヘルメットを投げつけた。すると、そこには、ヘルメットの下には、坊主頭でマスクをきちんとしている花粉症のベビーフェイス。
「イフリート・プロトコル・レッスン!!」
ライズがそう詠唱すると拳に炎がコーティングされた!
「ほほう、君も魔法使いかい。私もなんだよね!」
体育教師は詠唱を省略して校庭に魔法をかける。地面が波うち、ライズは立てなくなった。
「こんなの想定内だぜ! イフリート・プロトコル・マツタ・ケウメ!」
ライズは炎の翼を生み出し、田中がいる教室へ突っ込んだ!
「なにっ!?」
はずだったが、間違えて職員室へ。
「ほー、いい度胸だね」「ふふふ」「失礼だな」
などと、教師は口々に言いながらライズに迫る。「ちょっ、ちょっと待て!」と、ライズは言ったが問答無用に力づくで捕まった。ちょっとやそっとじゃ逃げられないように、百キロの重りで繋がれて。
休み時間ー
「あれーライズくんじゃないか」
「田中! てめー、呼び捨てにするな!」
「コラ! ライズ! お姉ちゃんの生徒に悪口言わない!」
なんと、先生こと【マック・シェイ・ドナルド】と【ライズ・フェイ・ドナルド】は姉弟だった。通りで二人とも火の魔法を使うわけだ。
「お姉ちゃん、校長にお願いしてライズを見逃すことにしてもらったのよ! 感謝しなさい!」
「あ、姉貴が勝手にやったことだろ!!」
「家では「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」なのに。ぷっ!」
クスクス、ははは。職員室でこそばゆい笑いが広がる。
「ちょっと! 職員室で何してるのよ!?」
そこに現れたのはモンハンだった。実は田中、ライズ、モンハンは幼なじみの腐れ縁。ずっと一緒だった。だった……。




