#1 その能力は
「どうか、この石清八幡宮を守るため、皆さんにお助けいただればと思います」
目の前の女性は、とても真剣に俺たちに語りかける。一方俺たちはというと、誰も状況が飲み込めていないようで、何の反応もできないままだ。
「勝手ながら、皆さんそれぞれに力を授けさせていただきました。えー、どのような力かと言うと・・・」
話を進められても全くピンとこない俺たち。俺たちと言っても、お互いに面識があるわけではないので、目を合わせては曖昧な表情をしての繰り返しだ。
「今日の夕方、皆さん自身感じられたかと思いますが、えー、身体に力がみなぎると言うか、まぁそういう感覚があったかと思います」
確かにあった。それどころじゃなかったから現実感はないが、確かに感じた。どうやら俺以外の皆も心当たりがあるようで、驚いたり考え込んだりしている。
「私たちが八幡さま、あ、八幡さまというのは八幡宮の祭神である神様です、その八幡さまのお力をお借りして皆様に能力を授ける場合には、授かる側にも強い意志が必要でして」
説明はどんどん進んでいく。
「夕方、この街で強い意志をお持ちだった皆さんに、その意志に沿った異能と、少しの神通力をお授けしました。それを使って、どうにか一緒に戦っていただきたいのです」
"戦って"という物騒なワードに、俺たちは動揺し、お互い目を合わせた。よく分からないが、何かと戦うのか?
「すみません、戦うというのは、何とでしょうか」
俺たちの中で一番年上であろう男性が質問してくれる。俺たちは目の前の女性の方を見た。聞きたいことは皆同じなようだった。
「ピンと来ないのは承知で申し上げますが・・・まぁその、妖怪です」
妖怪・・・?
「いや、妖怪というか・・・」
さすがに妖怪ではないか。
「まぁ妖怪です」
妖怪だった。
「ご協力をお願いしている身で言うのもおかしいですが、そんなに危険な戦いにはならないと思っています。そうならないように、皆さんにお力をお授けした次第です」
「その力というのは?」
「皆さんそれぞれで異なるお力です。プライバシーに関わることなので、これから別室でお一人お一人に説明させていただいてもよろしいでしょうか」
分からないことばかりだが、今はとりあえず説明してもらえるだけ説明してもらうしかなく、誰も反対しなかった。
「ではまず・・・一番端の制服のあなたから。こちらに来てください」
まさかの俺が一番手だった。皆の方を見て、なんとなくなぜかお互いに会釈をして、奥の部屋へとついていく。
「あの、えーっと、その力というのは・・・?」
「実はプライバシーに関わることと言ったのは、あなたのことなの」
「僕?僕だけがなんか違う能力ってことですか?」
「いや、どんな意志を持っているかということがそもそもプライバシーに関わることか・・・でも、あなたのが一番そうというか、皆の前で言っちゃダメだなと思ったの」
「えー、落ち着いて聞いてください。そして先に、勝手にあなたの意志を読み取ったこと、謝っておきます。ごめんなさい」
「はぁ・・・」
「えー、あの、八幡さまがあなたにお授けした能力ですが」
「はい」
「クラスメイトに熊沢さやという人間がいますね」
「くまさわ・・・あぁ、熊沢さんですね」
熊沢さんが何か関係あるのか?
「改めて、あなたの能力ですが・・・」
「"熊沢さやと両思いになるまで死なない"です」
「・・・・・・え?」
かくして、俺の恋愛事情にガンガン影響を与える、よく分からない戦いが始まることとなった。




