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願わくばこの俺に恩情を  作者: カツオ侍
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理想と現実

 この世は不平等だ。

 それは今に始まったことでは無いが確信したのは高校二度目の春だ。

 中学時代、恋とは無縁だった俺が受験勉強を頑張れたのは「高校では彼女作るぞ!」と高校生活に期待を寄せていたからに他ならない。

 だが言わせてもらおう。

 現実はそう甘くない。

 周囲の環境が変わった瞬間モテ期が訪れるなんて甘い考えをしていた当時の自分を殴りたい。

 妄想まみれのおめでたい思考は吹っ飛んでしまえばいい。

 しかし最初の一年でこの学校に俺に興味のある女子はいないことがわかっただけでも良しとしよう。

 ならばプランBだ。

 食パン咥えて急いで登校すればテンプレ通りなら美女と出会えるはず。

 フフ、我ながら天才的な案だ。

 さて、ならば早速明日からでも実こ…

 「お前、電車とバス登校だろ」

 「え?」

 確かに公共交通機関でパンを咥えるのはおかしいか、っていやそうじゃなくて

 「なんで俺の思考が読めんのさ。三島、お前もしかしてエスパー?」

 「いや全部声にでてたぞ…」

 え?ヤダ!恥ずかしい!まさか自分の心中を聞かれてたなんて…

 もうお嫁にいけない!なんて一人でツッコんでいると

 「そんなに焦らなくてもあと二年あるから大丈夫だろ。まぁ最悪は一人一人に当たっていけば一人くらいOKしてくれるでしょ、お前別に顔は普通だし」

 「まあな」

 なるほど、性格が問題だって言いたいのね了解。

 ていうか学年の女子全員に当たっても砕ける確率の方が高いし…

 こうなるなら保険にでも入っとけば良かったな。

 え⁉︎こんな性格でも入れる保険があるんですか?

 っていうのは置いといて告ってOKもらえるのはお前みたいなやつのことを言うんだよ。

 俺の目の前で何の心配もせず弁当を食ってるコイツの名前は

 三島祐希

 バスケ部で一年の頃からスタメン。スポーツ万能、成績優秀。まぁ、お、俺の方が成績ちょっと上だし…

 そんでもって顔も整ってる。普通にずるいな。

 そんなコイツとも小中高と長い付き合いだが今は彼女はいない。

 そう”今は”だ。

 コイツは作ろうと思えばいつでも作れる勝ち組と呼ばれる存在だ。

 実際、小中とそうだった。まぁほとんどは女子からアプローチしてきたんだけどな…

 …とまぁこれくらいにしておこう。じゃないと鏡を見た時泣きそうになる。

 そんなことを考えながら黙々と弁当を食っていると先に食べ終えた三島が

 「なぁ葉月、次は古典だったよな」

 俺はまだ口に含んでいたので頷いて返事をすると自分の席へ戻っていった。

 

 俺も食べ終え、授業の準備を始めると横目で三島を見る。

 アイツはクラスが変わって初対面の女子三人衆と平気で話していた。

 「住む世界がちげぇな」

 小さく呟き天井を仰ぐ。

 嗚呼神様。どうかこの俺、葉月理久太に出会いをください。出会いさえあればどうにかしますので…

 

 俺の高二の春は神頼みから始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

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