アイリスとマジュウ
真っ白な建物
その前に馬車を停めた
荷台の中から荷物を取り出し、台車に載せて建物の中に向かう
「こんにちわー!いつもの、持って来ましたー!!」
大きな声で挨拶をすると
「ありがとー!いつも助かるよ!」
カウンターの奥からパタパタ走って出てくるのは看護師のメルさん
「包帯と消毒液、あとモロモロのお薬です♪」
箱の中を確認したメルさんから、代金を貰い、領収書を書くボク
「いつもありがとう♪また来週もお願いね、アイリスちゃん♪」
ちょこんとお辞儀をして建物を出た。
ボクはアイリス。
両親と姉を亡くし、片方の翼も失くしました。
走って走って、気が付いたら人間界まで来てました。
今は、人間界で馬車を使って物資をいろんな街に運ぶお仕事をしています
もう…2年か…
そんな事を考えながら、市場に向かいます
「えっと〜、次の注文はスパイスだから…あのお店だな♪」
これから向かう街は、飲食店が沢山あるので大量に仕入れます
1種類につき1樽。これがいつもの仕入れです♪
お店の人に積み込みを手伝ってもらっている時、後ろを奴隷商人の馬車が通りました
馬車の中には15人くらいの女の子が乗っています…
「…天使様だ…」
そう呟いたのが聞こえ、馬車に目を向けると一人の女の子が手を振っていたので、ボクはニコ♪っと微笑み返した
すぐに積み込みに戻るボク
「…アイリスちゃん…顔、怖いぞ…気持ちは分かるが…」
「…ごめんなさい(⁎˃ᴗ˂)」
…人間界では、奴隷制度が残っている。
許せないけど、我慢するしかない。
もう少しで積み込みが終わると言うときに
「あの、すいません」
振り返ると、キレイな顔立ちのお姉さ…お兄さ…??
「何かご用ですか?オネニー様?」
「…よくどっちか分からないと言われるけど、カタカナにするのはやめよーね!?(╬⊙д⊙)」
メッチャ真顔で怒られました
…なんでだろ??
「じゃ、鬼ネー様?」
クビを傾げながら聞いてみたら
「誰がシンデレラのお姉さんだよ!!(╬⊙д⊙)あ、やば…」
「(。´・ω・)?汁出てら?何じるですか?」
「汁とか、じるとか言わない!女の子でしょ
!!」
「個人的には白くて濃いのが好きです(◍•ᗜ•́)✧」
「何の話をしてるの!?:(´ºωº`):」
「シチューですけど(。´・ω・)?あ、シチューは汁物ですよね!?」
「…た、確かにスープの一種よね…( ,,>_<,,)
」
「で、オネニー様のご用件は(。´・ω・)?」
「だからカタカナにすな!!!(╬⊙_⊙)それと、私は女だからお姉さんです!!」
と、一通りのってくれる優しいお姉さんみたいです♪
お姉さん
「その荷物、もしかしてタバルの街に運んで行ったりする??」
「そうですよ♪2日後に納品するので、このまま出発する予定です」
そうお姉さんに伝えると
「もし良かったら、私も一緒に乗せてくれないかな?ちゃんとお金払うからさ♪」
「構いませんよ♪念の為、IDを見せてください♪」
バッグから財布を取り出し、中からIDを取り出すお姉さん
「名前は…エレナ…さん!?」
思わず大きな声を出してしまった…
そんなボクに
「ど、どうしたの!?確かに人間界じゃ珍しいみたいだけど…」とお姉さんが返してくる
…姉さんと同じ名前だ…
「ごめんなさい、亡くなった姉と同じ名前だったので…つい…」
思わず下を向きながらそう応える
「そう…確かに天界だとよく使うって言われたよ…」
IDを返しながら、もじもじしているボクを見てエレナさんが
「…なんなら、エレナお姉ちゃんって呼んでもイイよ♪久しぶりに呼ぶんでしょ??(⁎˃ᴗ˂)」
「イイの!!??(✪▽✪)」
ものすごーく目がキラキラしているアイリス
「もちろん♪その代わり〜…」
「あ、代金は貰いますよ♪(◍•ᗜ•́)✧」
「ケチ〜(๑•́ ₃ •̀๑)」
二人で笑いあってから、スパイス屋さんにお金を払って出発しました
とりあえずエレナお姉ちゃんの荷物は荷台に載せて、お姉ちゃんは一緒に手綱を握ってくれてます
軽い話をしていたけど、エレナお姉ちゃんの視線がボクの背中にチラチラと向けられている
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「そっかぁ〜…それで翼が片方無いのかぁ…」
エレナが翼の事を気にしているようなので、自分から話したのです
「でも、凄くキレイな翼だね♪それに紅い瞳もキレイ♪」
「ありがとう♪ママにそっくりなんだって♪」
そんな話をしていたら、だんだん暗くなって来たので野営の準備です
エレナは獲物を取りに。ボクは火起こしをしています
ボクがちょうど火を起こし終わる頃に、エレナが解体した鳥の肉を持ってきた
…大量に
「エレナ姉さん…何羽獲ったの…^^;」
長い棒にぶら下がった鳥を肩に掛けて持って来たのだから仕方ないじゃん!(;^ω^)
「15羽くらいかな〜??大丈夫♪保存用に干し肉にするからさ♪」
そういうと、焚き火の薪を一つ離れた場所に持っていくと、薄めに切った肉を串に刺した物を持っていく
「後は…この葉っぱを載せて…」
狩りに行ったついでに採ってきたであろう香草を火にくべ、煙が上がった所で
エレナお姉さんが何かを呟く
「…我に現世の境界を…」
障壁魔法が展開され、肉は高い位置にぶら下がり、煙が充満した障壁の中で燻されている
「エレナお姉ちゃん、魔法も使えるんですね♪」
「あなたも使えるでしょ??そんな凄い魔力持ってるんだから♪」
「いや~、実は魔力の制御が苦手で…( ˊ꒳ˋ ;)」
ポリポリとほっぺをかきながら応える
「そうなの!?じゃ、今までどうやってモンスターとか盗賊と戦って来たの!?」
「ワタシには、マジュウがいますので♪」
「魔獣Σ(´⊙ω⊙`)!?」
「はい♪だから大丈夫です♪」
…魔獣…か…
…なんだ、分かって無いだけで召喚魔法は使えるんだな…w
二人でご飯を食べ終わり、寝る準備をしようとした時
ズズン!という地鳴りがした
その直後に子供の叫ぶ声
「何!?何が起こったの!?」
…まさか
スパイスの積み込みをしている時に通った奴隷商人の馬車…
「エレナお姉ちゃん!!」
「当たり前でしょ♪行くよ!!」
二人は子供の声が聞こえた方向に走った
暗い森の中でも的確に木を避け、枝を避け、焚き火の灯りが見える場所まで走った
生い茂った草むらから飛び出し
「大丈夫!!??…え…」
エレナとアイリスの前に転がる死体
それを貪るデカい魔物の群れ
アイリスは死体の中に「天使様…」と言ってくれた女の子を見つける
「流石にこの数は…逃げるよ!!アイリス!!」
プルプル震えながら何かを言っているアイリス
「アイリス!!早く!!」
その時、アイリスの周りに魔法陣が展開された
「コレは…魔獣を呼ぶつもりなの!?でも、こんな数相手じゃ!?」
アイリスはローブの中に手を入れ、腰の辺りから何かを取り出した
「…銃!?まさか、マジュウって…」
魔物の群れに向けて魔銃を構えるアイリス
「お前らーーーーーーーーー!!!」
引き金を引く
魔銃の先端から放たれた光は一気に分裂し、魔物の頭を的確に打ち抜いた
「…銃なんて…この世界に来てから見た事…ないぞ…それに…ロックオンして自動追尾まで…なんだ…アレは…」
「エレナお姉ちゃん!!誰か息のある子を探して!!」
アイリスの声でやっと動くエレナ
「わ、分かった!」
手分けして探したが、すでに息のある子はいなかった…
「…助けたかった…助けたかったよ…」
手も、服も、真っ赤になっているアイリス
「アイリス…」
その時、エレナの後ろで大きな気配が動く
「エレナお姉ちゃん!!走って!!」
後ろを振り向く事無く全力で走るエレナ
目の前には魔銃を構え、全力で魔力を溜めるアイリス
エレナは、銃口が少しだけ自分より上に向いている事に気付き、咄嗟にスライディングでアイリスの元へ
「アンタなんか…アンタなんか…!!!」
照準を合わせ、引き金を引くアイリス
先ほどとは比べ物にならない魔力で撃ち出される一撃
魔力の波に飲まれ、消し飛ぶ巨大な魔物
「ハァ…ハァ…」
息切れしているアイリス
「えぐ…えっぐ…」
「うああーーーーーーん!!」
泣き崩れるアイリスを抱きしめるエレナ
「頑張った…頑張ったね…大丈夫…大丈夫だよ…」
その後、亡くなった子供達を埋葬し、馬車まで戻った二人。
「…てか、エレナお姉ちゃんは転生者でしょ??」
「え!!??な、何言ってるのかなぁ!?:(´ºωº`):」
「…シンデレラのお姉さんじゃねーよ!!とか言ったでしょ??(๑⁍᷄౪⁍᷅๑)ニヤニヤ」
「え〜??言ったかなぁ…:(´ºωº`):」
「なんでガラスの靴だけ残ったんだろうね??」
「…確かに!!ドレスとか馬車は消えたのに…って…え??」
「アイリス、転生者だよ♪」
「だから銃創れたのか!?:(´ºωº`):」
「黙っててごめんね♪(ฅ∀<`๑)テヘッ♡」
「もっと色々教えて貰うからね!!www」
こうして、タバルまでの二人旅が始まったのでした
ごめんね、お姉ちゃん。
まだ、ボクのホントの力は隠させてね…