転生④
本日2本目の投稿です。
母様から魔力操作を教わって数週間。
今日も家の裏庭で授業を受けていた。
「ーー炎よ、わが手に灯火をーー点火」
ポンっと姉様の指先に小さな火が現れる。
今は四属性と呼ばれる“火・水・風・土”の初級魔法をおさらいしているところだ。
「さすがねえさまです!」
「ふふんっ」とドヤ顔の姉様に拍手を送り、僕も“点火”の魔法を唱える。
「ーーほのおよ、わがてにともしびをーー点火!」
そして僕の指先にも現れる火。
姉様のに比べても、二回りくらい大きな炎が生まれていた。
この世界の魔法には、先の四属性の他に、“光・闇・時・空”という初級魔法の存在しない上位属性と呼ばれるものがある。
この4つの上位属性の魔法は、四属性と違って適性がない限り使うことができない上、そもそも難易度が桁違いなので授業ではその存在以外は扱っていない。
なので、この数週間で四属性の初級魔法を一通り使えるようになっていた僕達は、中級に移る前に、改めて覚えた全ての魔法をおさらいしているのだった。
「はい。2人とも、よく出来たわね」
両手をぽんと叩いて笑顔を浮かべる母様。
「初級魔法とは言え、魔力操作を覚えてからこんなに短い期間で全て使いこなせるなんて、とってもすごいことよ」
僕と姉様の2人の頭を撫でながら、自分のことのように喜んでくれているみたいだ。
姉様はともかく、僕も自分がこんなに早く魔法を使えるようになるとは全く思っていなかった。
「わたしはアルのお姉様だもの!これくらい当然だわ!」
それで何がどう当然なのかはさっぱりわからないが、姉様はどうやら母様以上に魔法の才能があるらしく、これくらいは本当に当然のことみたいだ。
……まあ、何故か僕にはそれ以上の才能があるらしいのだが。
「それにしてもさっきのアルの魔法、“点火”も“水玉”も“石礫”も、どれもすごく大きかったわ!」
自分でもどうしてなのかはわからないのだが、僕の使う魔法は人より若干……いや、だいぶ大きくなる。
まだ初級魔法しか教わっていないのでなんとも言えないが、これがもし中級・上級でも同じようならすごいことになる……らしい。
らしいと言うのは、この“魔法が大きくなる”と言うのはかなり珍しい現象のようで、母様や父様も見たことが無いから判断のしようがない、とそういう事だそうだ。
父様母様は「天才だ!」と、とても喜んでくれたけれど、僕としては普通に魔法が使えればいいなくらいにしか考えていなかったので、ちょっと複雑な気分ではあった。
でもまあ、喜んでもらえているならいいか。と、最近では開き直っている。
ーーちなみに、兄様も姉様も「さすがアル」と褒めてくれて、しばらく家族みんなからちやほやされていたのは、まあ、嬉しかったかな?
◇◆◇
「マリーは詠唱から魔法の発動までに、少し魔力のロスが多いわね。でも、発動までにかかる時間はアルと比べてもとても早いし、実戦向きではあるわね。だからもう少し魔力操作の練習を頑張りましょう」
「はーーい!」
母様が授業のまとめに入る。
こうして細かく目標を作ってもらえるので、一日の内短い時間の授業でも効率的に学ぶことができる。
「アルはもう、魔力操作について母様が教えられることは少なそうね……でも、詠唱はもっと練習が必要よ。時間はたくさんあるのだから、ゆっくり焦らずに練習を続けていきましょうね?」
「はい!かあさま」
やっぱり詠唱は練習が必要かぁ。
文言はちゃんと覚えているのだけれど、如何せん滑舌が悪いからなぁ……。
母様の言う通りゆっくりしっかり練習を重ねよう。
「じゃあ、今日はここまでにしましょうか」
母様の一言で今日も授業は無事に終了となる。
「はーーい!」
「はい!」
僕と姉様は元気に返事をして、母様と一緒に昼食の準備に向かった。
これから少しずつ主人公の力が明かされていきます。
……いくはずです。