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神様は善人に報われてほしい  作者: しろがね
転生、それから
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転生②

本日二本目の投稿です。


優しいにいさまと、かわいいねえさまとのお話。

 ーー1年後。


「マリーねーさま?」

「アルーー……えへへ」


 あれから1年。

 もうすぐ2歳の誕生日を迎える僕は、姉から熱い抱擁を受けていた。


「ん~……さらさらすべすべ……」


 わしゃわしゃと頭を撫でられ、思うがまま頬ずりされ、首がすわって以来の日常に僕は姉のなすがままにされていた。


 マーリーナねえさまは母譲りの輝く金髪と、父に良く似た深い碧眼を持つ美少女……美幼女だ。


「ねーさま、ちょっといたぃ……」


 これも毎度のことなんだけれど、僕が無抵抗でいるものだからどんどん姉は一人で盛り上がってしまい、手の動きが荒っぽくなってくる。


「はぁ……はぁ……アルー……ぅへへ」


 だんだん瞳に危ない光を宿し始める姉。

(あ、これヤバいやつだ)と思いながら、それでも無抵抗な僕。

 なぜなら。


「こら。マリー、アルが痛がっているじゃないか」


 マリーねえさまの後ろから、少し困った顔をして近付いてくるルクワートにいさまが見えていたからだ。


「こ、これはその……」


 肩をビクッとさせて、慌てて振り返るマリーねえさま。

 僕を撫でる手を止め、しどろもどろになりながら言い訳を始める。


「アルが可愛いのはわかるけれどね?あまり乱暴にすると、嫌われてしまうよ?」

「っそ、そんなぁ……」


 いつも通りのお説教に、いつも通り悲しそうな顔をする姉。

 ここまでがいつも繰り返されている日常だ。


「ルーにいさま。またちちうえとたんれんですか?」

「ああ、そうだよ。アルはまたお勉強かい?」


「ごめんねぇ」と、しがみつく姉の頭をよしよしと撫でてやり、僕は手元にある分厚い本を閉じる。


「はい!ぼくも、はやくかーさまのように、まほーをつかいたいので!」

「そうか。アルはえらいね」


 そう言ってルーにいさまは、優しく頭を撫でてくれる。

 その優しい手つきに心がほっこりする。


 ルクワートにいさまの髪は父とそっくりの濃い金色をしていて、瞳は母と同じ透き通るようなブルーだ。

 こちらも信じられないくらいの美少年で、最近になるまで本当に“兄”なのかと疑っていたくらいだ。

 ……いや、正直に言うと未だに信じられないのだが、正真正銘“兄”なのだ。

 一緒に水遊びをした時にしっかり確認した。


「さあ、二人とも。一緒に母様の所に行こう。そろそろおやつだって呼んでいたよ」

「おやつ!はーーい!!」


 さっきまでの悲しそうな顔はどこにやったのか、マリーねえさまはガバッと体を離し、目にも止まらぬ速さで駆け出していった。


「まったく……大丈夫かい?アル」


 そのあまりの勢いにころんと転がってしまった僕を、そっと抱き上げてくれるにいさま。


「……ちょっとびっくりしました」


 そう正直に言うと、ルーにいさまは「あはは」と笑って、とんとんと背中を優しく叩く。


「じゃあ、僕らも行こうか」

「はい。ルーにいさま」


 優しいにいさまに抱っこされたまま、僕はおやつの待つリビングへと向かった。


 ◇◆◇


 おやつを食べたあとはまた勉強の時間だ。

 この1年で様々なことがわかったけれど、その中でも重要だった事は、“話している言語が日本語ではなかった”ことだ。

 あまりにも違和感なく言葉がわかるものだから、てっきりみんな日本語を喋っているのだと思っていたが、母に見せてもらった本に書かれていたのは見たこともないような文字しかなくて驚いた。

 まあ、ここは異世界なんだし、普通は会話も通じなくて当たり前だよなとその時は思ったものだ。

 最初から言葉がわかったのはおそらく、神様が何かしてくれたからなのだろう。


(ーーよし。大体の文字は読めるようになってきたな)


 会話は問題なく通じるが文字は読めず、それだと魔法を勉強するのに魔法書が読めない。

 全て口頭で教えてもらうのも無理があるし、だったら文字を覚えてしまおうというのが直近の目標だ。


(早く魔法使ってみたいなぁ)


 こちらに転生してから、既に何度も魔法は目にしていた。

 ハイハイが出来るようになってからは家中をうろついて色々見て回り、その中で見た両親が使う簡単な魔法にでさえ、目を奪われてしばらく興奮が収まらなかった。

 それからというもの、目に入った本を片っ端から読み漁り、たどたどしくも喋れるようになってからは、母を質問攻めにして困らせてしまったことも少なくない。

 そろそろ2歳という年齢の子供には、おおよそふさわしくない程の熱意で勉強を続けていたのだ。


(……まあ、中身はもう18歳になろうかってところだもんなぁ)


 それもそのはずで、前世の記憶を持っている僕の頭は、現役で勉強を本分にしていた学生のものだ。

 別に勉強が得意だったわけではないけれど、好きなことに関しては昔から集中して取り組んでいたので、苦はなかった。


 そしてまた今日も僕は勉強に熱中し、夕飯に呼ばれるまで夢中で本を読んでいたのだった。

本日の投稿はここまでとなります。

また明日、何本か続きをあげられるよう頑張ります。

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