いきなり神様に魔法の世界へ飛ばされた。(1)
俺は今年の春に大学を卒業した所謂新社会人一年生だ。
最近では大卒新社会人が1週間で就職先を退職することも四月のネットニュースの定番になりつつあるきがする。
俺はというと地元付近の都会に就職して今は七月。蝉も泣き出す頃だ。
職業内容は主に外回り、営業だ。もっとも新卒の俺に件数を稼ぐことなど到底無理な話である。
「暑い・・・ここ数年で地球おかしくなってるんじゃないか・・・?」
ベンチで休憩していた俺は温度表示を確認する。公園の温度表示は31℃。まだ七月半ばだぞ?噴水で水遊びをしている子供達が少し羨ましい。
「さて、次のお客さんのところに行くか」
そう思いベンチから立った瞬間
グラッ・・・
「うぉ・・・なんだ・・・!?」
今まで経験したことの無い立ち眩みが来た。これは立てないと思い再びベンチに腰を下ろそうとした、が。
「痛ッ!あれ?ベンチが無い。というか暑くない・・・どうして・・・」
周りを見渡すと先程までいた公園とは風景が違う。というか・・・・どこだここ。記憶に無い場所だが・・・。
「ちょっと。」
声の方向に目を向けると、
「うぉあ!?」
そこには知らない女性が立っていた。
「そんなに驚かなくても・・・ただ話しかけただけじゃない。」
女性は言う。いやまて。こちとら頭の整理が追いついていないんだよ。まずここはどこだ。そしてあんたは誰だ。
「すみません・・・今頭の中がゴチャゴチャしていて・・・」
俺の発言を聴いた女性は「なるほど」と小声で言った。
「よーし。今から君の置かれてる状況を説明しようか。えーと、君、名前は?」
「橘です。橘剣斗。」
「じゃぁ剣斗。説明を始めるわ。」
いきなり名前で呼び捨てかよ。ていうか
「そういうあなたは誰なんですか?」
「あぁそうだね。私も自己紹介をしないとだね。私はミスラよ。神様よ。」
は?今何て言ったこの人。神様?中二病か?
「神様なんて冗談初めて耳にしましたよ。」
傷つかない程度に流そう。それがこの人の為だ。
「冗談じゃないわ。本物の神様よ。」
なんだ?俺は猛暑で頭がやられて夢でもみてるのか?
「ちょっと、黙らないでよ。」
いやいや、俺にこれ以上どうツッコメと。
「あのー、神様とは・・・?」
するとミスラは笑いながら
「なに剣斗、神様も知らないの?」
煽られてる。これは確実に煽れてる。だが堪えねば
「まぁいいわ。説明に戻るわよ?」
「まず、剣斗、アナタは別の世界、つまり異世界に行くことになったの。で、今はその途中という感じ。」
は?まてまて。異世界?なんだいきなりファンタジーな話が入ってきたぞ。
「ちょっと待ってください!なんで僕が異世界に!?」
「剣斗の疑問の一つに答えると、アナタはあの公園で命尽きたの。」
「え?」
「ただねぇ、剣斗の命尽きた理由はこちらの手違い、まぁ簡単に言うなら人間違い?」
「えーと、つまり僕は別の誰かが命尽きる予定だったのに、僕が命尽きたと・・?」
「そ。そういうこと。」
おい、軽すぎだろその反応は。
「もしかしてあの立ち眩みが・・・・」
「ご名答!だからさすがにあのまま剣斗を死なせてしまうのも神様側としては申し訳ないと思ってね。だから異世界で生き返ってもらうことにしたのよ。」
段々この状況が理解できてきた。いや理解できてしまうのも問題な気がするが。
「そこで新しい世界で生きていく剣斗に選んでほしいものがあるのよ。」
「選んで欲しいもの?」
「そう。アーツよ。」
「アーツ?」
「判りやすく言えばその者の固有能力みたいなものね。剣斗が向かってる世界では魔力があって剣魔術や魔法や錬金術とか色々あるの。その中に固有と汎用のものがあってね。固有がアーツ。汎用がスキルと呼ばれているわ。」
「スキルはどの人種にも習得できる可能性があるの。でもアーツは違う。その者の生まれた時に決まってるの。アーツを持ってる者は極稀。それも同じアーツは存在しないから唯一無二の存在になるの。」
つまり自分だけが持てる力か。なるほど。
「で、そのアーツは何があるんですか?」
「それがね・・・・冷静に聞いてちょうだい。」
「アーツはその者の固有能力、即ちその者の能力次第で選択の幅が変わるのだけど・・・」
「だけど?」
「剣斗、アナタの場合一つしか無いのよ。」
「一つ?」
「そう。アーツ名は『模倣』。」
「『模倣』・・・マネるってことですか?」
「そんな単純なものではないわ。ま、アーツの能力はアナタ自身で確かめなさい。あ、あとこれはサービス。」
そう言うとミスラは俺の頭に手を乗せた。
「何を」
「私もまさかアーツが一択だとは思わなかったからね。少しばかり神様からの贈り物よ。」
ミスラの手から頭に何かが流れていくような感覚があった。これが贈り物か?
「剣斗の基礎能力を引き上げたわ。これでそう簡単には死なないはずよ。せっかく生き返ったのにすぐ死んだら意味無いもの。」
「あと、特別に私と思念会話をできるようにしておいたから。何か困ったことがあれば聞いてちょうだい。」
「ありがとう、ミスラ・・さん?・・様?」
「ミスラでいいわよ。別に神様って括りなんて気にしてないから。むしろ一人でいることのが多くて暇だったんだから!」
なんで俺にあたるんだよ・・・。まぁ、でも
「まだ理解できてないこともあるけどなんとか頑張ってみるよ、ミスラ」
「うん。じゃ、いってらっしゃい!」
ミスラの言葉と共に光に包まれた。
そして・・・
初めまして。守里と申します。この度は私の作品を読んでいただきありがとうございました。私にとってこれがいわゆる処女作になります。なので拙い文、文法等あったと思いますがこれから成長していきたいと思っていますので柔らかい感じで読んでいただければと思います。短いですがこれで後語りを終わらせていただきます。