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1話2018年3月下①




これは俺が現在進行形で経験しているものをなるべく忠実に再現した物語です



1話2018年3月下①



俺は田中

浅草の小さな劇場で俺は芸人をやっている

17から始めてかれこれ4年が経ち21歳

養成所で相方を見つけ事務所も入れずにふらふらとしていたところを劇場の支配人に拾われ今に至る

今日は客が30人、いつものように全員じいちゃんばあちゃん...だな

舞台袖で客の様子を見て

「今日もあれ、やるか」

相方につぶやくとスマホを触りながらこくりと相方がうなずく

時計が12時になり開演

1番若手の俺たちはトップバッターだ

幕が開き古臭い出囃子と共に舞台へ向かう

「はいどうもー!アシッド宣言ですー」

パラパラとした拍手が鳴る

一方では弁当を食べながら、また一方では

連れ添いと談笑しながらちらちらとこちらを見る

またいつもの客か...

表情が曇るのを抑えて必死に笑顔を作った


「今日はお客さんに話したいことがあってね

インスタ映えについて話したいんですよ」


と相方がいつものようにネタを切り出す


「バカヤロー!お前お客さんみてみろよ

老人しかいないじゃないか!

ちゃんとお客さんにあった話しなきゃ

えっと今日のお客さんだと...

生活保護の不正受給の話をしよう」


「失礼じゃねーか!」


会場はややうけ、客いじりしといてこれじゃあな

だらだらとバイトをしながら芸人をし

お互いに辞めるとも言えずに4年

売れようと必死にオーディションを受けることなく浅草の劇場に落ち着き高齢者の客が多いことから客いじりをするネタを一本つくり

それをこなす日々が続く


「どうも、ありがとうございましたー!」


軽く頭を下げ舞台袖に戻る


ため息をつきながら楽屋に戻ると


「おつかれー、どうだった?」


先輩芸人の井上さんがだるそうに舞台衣装に着替えながら聞いてきた


「井上さんお疲れ様です!

今日も同じですよ、いつもの客です

それより聞いてくださいよ!

この前の合コンで会った子と今度デート行ける

ことになりましたよ!

井上さんの方の子も上手くいったら4人で

飲み行きましょ!」


「お、いいねー!それにしても田中本当に女の扱い上手くなったな〜」


「いえいえ!井上さんのおかげですよ」


「そうだ、今日飲みいくか?」


「行きたいっす、今日これから何もないので」


「分かった!じゃあ8時に新宿集合な

それまでに俺女から金調達しとくよ

おっとそろそろだな、ちゃちゃっとネタやって

くるわ」


あくびを手で抑えながら井上さんは舞台袖へと向かっていった

井上さんとは俺がこの劇場に入ってからの付き合いで、元々ホストをやっていたらしい

18だった頃の俺は彼女ができたことなく、もちろん童貞でそんなことを楽屋で話してたら

合コンに行くかと誘われてから井上さんとよく遊ぶようになった

初めに参加した合コンでは緊張と人見知りが相まって酒のピッチを上げ、気づいたら泥酔で

その場にいた女の子にブスだのやらせろだの罵倒したのは今では黒歴史だ

それから井上さんに女とはこうやって落とすんだとレクチャーを受けながら場数をこなし

今では晴れて童貞を卒業できた


お笑いに打ち込むこともできずに

何も趣味がない俺には井上さんと行く合コンが

唯一の楽しみだった


井上さんは20からホストを5年ほどやり

そこからジョーカーというコンビを組み今29歳

まだ売れているとは言えないがお笑いの才能も

あり少しずつテレビの露出も増えている

ルックスもいいことから女性人気もある

収入はそこまでだが元々ホストをやっていた経験を活かし女の子から金を貢いでもらって生活している

世間的にはクズかもしれないが、俺にとっては

憧れの先輩だった


今日は合コンかな、平日だから人数集まりそうにないから相席屋かな


そんなことを考えながら劇場の事務室へ入る

「アシッド宣言の田中です〜

舞台終わりました」


「田中さんお疲れ様です、こちらが本日の

ギャラになります」


そうして千円をもらい劇場を出た

売れない芸人には千円でもありがたい


8時まで何しようかなちょっと眠いし

この金で満喫で寝てようかな


俺はタバコを吸いながら駅へ向かった






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