侵食者
「そっちは駄目だ!! 逃げろ!!」
俺は仲間に向かって叫んだ。俺の叫び声を聞いた奴らは、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。
それまで平和に暮らしていた俺達の領土に奴らが現れたのはつい先程の事だ。奴らは突然、俺達の領土に進攻を開始した。奴らは俺の仲間を片っ端から捕まえると、次々に自分達の仲間にしていった。どうやら奴らには、捕まえた者を強制的に仲間にする不思議な力があるらしかった。勿論俺達も抵抗はしたが無駄だった。力の差は歴然であり、一人、また一人と俺の仲間は捕まり、奴らの仲間となった。気付けば、いつしか俺の仲間は一人となっていた。そいつが言った。
「くそ、奴らに完全に周りを囲まれた。俺達もとうとう観念する時がきたようだぜ」
「最後まで諦めるな。援軍が来るのを待つんだ」
俺の言葉も虚しく、奴らは最後の俺の仲間を捕まえると、ついに俺へと手を伸ばしてきた。
「やった、俺の勝ちだ。全て黒で埋まったぞ」
勝敗の決したオセロの盤上を見た男は喜びの声を上げた。