始まり! 夢と現のあわい
西暦2092年。世界の情勢はもう誰も把握できない。
なぜならこの世界は無際限な広さを持っている。
世界一周なんてもう半世紀前の話だ。いまでは世界一周なんて誰もできない。それほど、地球の論理面積は広がっているのだ。この街が本当に物理的に専有されているかどうかなんて誰も知らない。
夢と現のあわいは、いまや確かに現実として受け入れられているのだ。
この世界はもう、誰も定義することができない。いや実際はそうではなくて、確かにデミウルゴスによって作られた世界は、その定義を白日の下に晒したのだ。
しかし、俺たちの世界は、その定義の範疇から、確かに逸脱している。
定義は書き換えられ続けている。誰がその領域の権限を奪取するか。そういうものが今では社会の闘争として現れているのだ。
政治? ビジネス? そんなものはもう21世紀初頭に無意味になってしまった。俺たちの世界に重要なのは情報だと思うかもしれない。
でも違う。
重要なのはそんなことじゃなかった。価値あるもの交換、価値ある情報の交換は、大した意味を持たない。なぜなら管理者の権限こそが、事実、重要なエクスカリバーだったからだ。
今、俺たちに必要なのは武器や技術ではない。宗教でもない。
紛れもなく、強大な化け者に立ち向かう敵意、闘争心だったんだ。