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11回目の転生目録  作者: 上代 迅甫
第二章
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第ⅩⅩⅩⅢ話 大鬼を倒す方法

この物語は、ただの創成物語(フィクション)である。

 あれから私達は陽が昇った後、早速私達はリリスを探しに馬を走らせた。


 遠回りにはなったが、馬の脚もあって想定よりも早く崖の上には辿り着くことが出来た。

 昨日崩れたところまで立ち寄ってみたが……まあ、いないよな。


 周囲を捜索してみよう。彼女もそうそう遠くまでは行っていないだろう。


 そう思い、街道に戻って暫く、馬を走らせていた時のことだった。


 ガサガサと茂みから物音がする。

 魔物だろうか。複数体、こちらに向かっている気配がする。


 すぐさま馬を止めて、身を構え、私達は警戒する。

 鬼が出るか蛇が出るか──。


 飛び出してきたるは一人の人影。

 白い毛並みにフードから飛び出た猫のような耳──。

 間違いない、見つけた。彼女だ。


 だが、見つけることが出来たのはリリス一人だけではない。


 無論、大鬼(オウガ)という付き添いもオマケについてきた。しかも、きっちり3体。昨日と同じ個体なのは想像に容易い。

 流石に一日中追いかけられていたということはないだろうが、しかし、厄介を引き連れてきたものだ。


 ──まあ、予想通りだけども。


 ■ ■ ■


 今回私達はこうなることを事前に考え、打ち合わせをしておいた。


 リリスは主に「殴る」「蹴る」「引っ掻く」稀に「投げる」といった直接攻撃を得意とする。素早い身のこなしで敵を攪乱し、急所を的確に狙って仕留める。相手の予想外の動きにも、その反射神経と類まれなる身体能力で臨機応変に行動し、対応する。

 猪突猛進、怪しい奴は取り敢えず殴って確かめる──それが彼女の性格だ。だとすれば、彼女は敵を見つけるや否や私達の指示を待たずに、即攻撃だろう。


 そこに私達が昨日のように攻撃を仕掛ければ、嚙み合わずにまた劣性に立たされるのは既に通った道だ。二度目は御免である。


 その為、このような打ち合わせる間もない場合は、万全な連携は望めない。


 だが、あくまで全員攻撃による話。


 今回、私とベルはあくまでリリスの補助に回る。


 リリスがまず狙うのは「急所」。大鬼(オウガ)の急所はコアのある右胸部と首──しかし、昨日の相手の動きから直接狙うのは難しい。なら、まず攻撃するのは邪魔な武器を持つ腕だ。

 邪魔にならない程度に、リリスを補助する方法。


 なら、私が足止めする。


 氷属性魔法で足元を凍り付かせ、相手の動きを封じる。いくら力が自慢の大鬼でも、第2級氷属性魔法を前には簡単に逃れることは出来ない。

 動きを封じてしまえば相手は連携もクソもない。得意の数による攻撃は崩壊し、完全に取り乱しているのが分かる。


 戦闘は冷静さを欠けば不利になる。こうなればこっちのものだ。


 とは言え、相手は身体能力に優れた大鬼、下半身が動けない状況でも、反射神経とその馬鹿力は侮れない。

 そこで、ベルの陽属性魔法でリリスの攻撃と素早さの増強を行う。


 速度増強魔法によって身体能力が増した彼女は目の端で捕らえるのがやっとの速さで相手の腕を切り落とす。私やベル、大鬼(オウガ)どころかリリスですら、空を切るようなそのあまりの速度に驚きを覚える程だった。


 しかし、リリスは「これは好機」と近くの木に飛び移ると、それを蹴り、勢いよく次の部位へと攻撃を仕掛ける。蹴られた木は嵐でもあったかのように吹き飛び、大きな音を立てて倒れた。

 その音よりも先に地面に着地した彼女の手には大鬼の首──そう、彼女は頑強な筋肉で覆われたその大鬼の首を、ただの腕力で捩じり取ったのだ。

 なかなかにエグいやり方ではあるが……連携は見事に決まっている。

 頭は無いが、項垂れるように大鬼(オウガ)の上半身は力を失って、そのまま動かなくなった。


 このままなら行ける。私達2人、全力でリリスを導く。


 ■ ■ ■


 その後はあっという間だった。


 行動封じとドーピングというアドバンテージを手に入れた彼女にとって大鬼など、もはや敵ではなかった。

 ただでさえ絡め手なしででも大鬼(オウガ)に勝るとも劣らない実力の彼女は圧倒的なものとなり、その姿は蹂躙そのもの。

 手助けしたこちらが少々ドン引きするレベルではあったが、まあ、倒したのでよしとしよう。


「大丈夫か、リリス」


 戦闘が終了し、彼女の元に急いで駆け寄るが──


「大丈夫、問題ない」


 こちらに向けてサムズアップしてくるあたり、全く問題はない様子。だが……


 ぐうぅぅぅぅ~~~~


 大きくお腹の虫が鳴く音が聞こえた。

 全くの無事である身体の調子に対して、どうやら、空腹は限界が近いようである。一晩中、逃げ回っていたのか、昨日の昼から食事をとっていないようだった。


「しょ、食事にしようか」


 まあ、私達は朝食も軽めに済まし、問題はないのだが……仕方あるまい。今回の優秀賞は間違いなく彼女である。

 心配していたこちらが馬鹿みたいだが、まあ、無事なら何でも良い。


 胸を撫でおろす気持ち半分、戦闘と彼女の捜索の疲れ半分に馬車の中から食事の準備のために器具を取り出す。


 ──しかし、このような圧倒的実力を目の当たりにすると尚更、「彼女達に後れをとっている」と自覚させられる。

 力ではリリスに劣り、魔法のセンスはベルに劣る。魔法によるバフがあったとて、ああにはならない。個人的に……いや、男として情けない限りだ。

 それに、もし今回のように分断されたとき、私一人になってしまったらどうなるのだろうか……。

 少なくとも、今回のような大鬼(オウガ)相手では生き残れないだろう。


 より、強くならなくては──。


 私は手に取った食材の処理をしながら、心の中で密かに再度自己研鑽を決意したのであった。


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