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妖精に愛された僕  作者: 豆田あんじ
3/32

時間は時に残酷で

サブタイトルつけるのが大変(笑


懐かしくそして切ないような夢を見た。


智明と森と櫂がまだ3歳くらいの頃の、両親が生きていた智明にとって一番優しい時間。


起きる時間にはまだ早いのだろう。


滲んで見える薄暗い天井を眺めていると新聞配達のバイクの音が聞こえる。


少し寝ぼけているから視界が悪いのかと思い、目尻に指を這わすと自分が涙を流していたのに気がついた。


瞬きをすると瞳に留まれなくなった涙がこぼれ、同じ様に顔を伝い枕を濡らす。


夢の余韻は涙をこぼすほどには色濃くはないが、失ったものが全て存在していたその世界は、思うより幸せで残酷でもあった。


パジャマの袖でぐい、とそれを拭ってベッドから起きると、ルルが心配そうな顔をしながら智明の肩に乗ってきた。



「大丈夫、ちょっと夢を見ていたんだ」



安心させるようにルルに語りかける智明の表情は、大丈夫とは言い難いもので会話のできないルルはしきりに智明の頬を撫でている。



「ルルは心配性だね」



ふふ、と擽ったそうに微笑む智明を見て、ルルは更に智明に頬擦りしてくる。


ルルは他人の智明に対する気持ちを感知する力があるが、同時に智明自身の感情にも敏感であった。


智明が楽しいと思うとルルもご機嫌で踊りながら飛んでたりするし、逆に今みたいに沈んでいると智明の傍から絶対離れない。



僕にしか見えないルルの存在にどれだけ助けてもらっただろう。


僕の気持ちに共鳴して喜び、そして悲しむこの可愛らしい生き物。


い、生き物でいいんだよね…?

 


これで会話が出来たら言うことないのに、なんて智明は欲張りなことを考える。



「目が覚めちゃったし、シャワーでも浴びてすっきりさせようかな?」



欠伸をしながら着替えをクローゼットから取り出し、風呂場へ向かう。


まだみんな寝ている時間だからなるべく扉の開閉も、足音もたてないよう気遣いながら廊下を渡り階段を下りた。


洗面所の扉が開いていて、廊下に明りが漏れていた。


誰かトイレにいるのか、それとも消し忘れてこのままなのか。


扉に手をかけると中から水を流す音が聞こえ、トイレのドアが開き森が出てきた。



「…あ。おはよ」


「おはよう」



出くわすと思っていなかっただろう森が、驚いた顔をしながらも挨拶を交わす。


洗面台で手を洗いながら智明が着替えを脱衣かごに入れるのを見て、少し感じる違和感に眉間にしわを寄せた。



「智明、こんな朝早くから風呂?」


「ううん、シャワーだけ浴びたくて」


「珍しいな」


「うん…ちょっと夢見てうなされちゃったから、さっぱりしたくて」


「そうか、俺はもう少し寝るわ」


「うん、おやすみ」



ちゃんと横に手を拭くためのタオルが掛かってるのに、森はパジャマの裾で拭きながら部屋に戻っていった。


本当のことは言えないから適当に誤魔化した。


だって高1にもなって夢見ながら泣いて、起きたらその事実にへこんだ、なんて言えなくね?


櫂の気配が消えたのを確認してから、智明は深い溜め息を吐いた。


それでなくとも、ここの家族は智明に対してかなりの過保護だと思われる。


智明が引き取られた時から我儘も言わず、聞き分けの良い子供であったのが叔父夫婦には不憫に見えたのだろう。


それに倣ったのか森も櫂も、それはそれは智明を甘やかしてきた。


ただ森と櫂のそれが純粋な庇護欲だったのか否か。


それは今でも継続中の、彼らの思いは智明にはわからない。


もしそれが智明の望むものでなかったとしたら。


僕はきっと。


消えてしまいたいと思うんだろうな。


ふ、と自虐的な笑みを一瞬頬にのせ、智明はかぶりを振ると服を脱ぎ風呂場へと足を入れた。





次回も頑張りますので、是非お立ち寄り下さいませ。

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