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妖精に愛された僕  作者: 豆田あんじ
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ルルと僕

初めましての方も、過去にどこかで豆田を見かけた方も、どうぞよろしくです~。


13年前、交通事故に巻き込まれた両親が他界したらしい。


当時の僕はまだ3歳で死についてよく理解できなかったのだろう、たまにしか会えなかった同い年の双子の従兄弟たちと会えてはしゃいでいた。


遠く離れていた僕らが出会えるのは親戚の慶弔時くらいということが、今なら理解できるけどあの頃の僕らにはただ、もっと一緒に居たいと思うことだけだった。


僕の父親の弟の叔父に引き取られることで僕のその願いが叶ったのは、僕にとって幸運だったのか不幸だったのかはもうどうでもいいことで。


あの頃の願いはまだ今の僕にも同じはずなのに、彼らと一緒に居るのは辛いことばかりな気がする。


もっと大人になれば、こんな気持ちに答えが出せるのかな。


辛いことも、行き場のない想いも、それらを隠し続けることも、平気になるのかな。









リリリン。


うっかりすれば聞き逃してしまいそうなか細い、鈴の音のような羽音。


授業中にいい天気だなあ、と呑気に窓を眺めていると、その鈴の音の羽音と共に羽ばたく妖精の姿。


羽ばたく度に太陽光に反射してキラキラと輝く粉をふるいながら、いとも楽しげに宙を舞っている。


あ、言っておくけど僕狂ってないし、病んでもいないからね?


この現実と思えない風景の原因の説明を少ししようか。


体長はタバコの長さ程度で、金の巻き毛に宝石のような碧い瞳。


肌は透き通るかの如く白く、瞳と同じ色の薄衣を纏っている。


ほぼ丸出し状態の背中からは、所謂天使像といわれるものと同じ白い翼が生えている。


ただそれらと少し違うのは、鳥のような形の羽ではなく蝶のような4枚の羽だった。


ふかふかの羽毛に包まれた翼は、嬉しいと羽ばたく回数が増えるのに最近気付いた。


男の子なのか女の子なのかわからないけど、僕と目が合うと薄桃色の丸い頬を上げ微笑む。


ものすごく可愛いんだけど、ぶっちゃけこの子が何なのかは僕にもわからない。


わかっていることは少ないけど


①この子は僕が両親を亡くした翌日に見えるようになった


②お約束のようにこの子は僕にしか見えない


③この子は僕に対する他人の善意や悪意を見抜き、それを僕に教えてくれる


④僕の言ってることはこの子は解るし意思の疎通は出来るんだけど、この子からの意思表示は全てジェスチャーのみ


⑤妖精と言っていいのかどうか謎だけど、この子のできることは魔法に近いがそれが、僕の危機?に干渉するようなことはできないらしい


ってことくらい。


初めてこの子を見たのが子供だったからなのか、余り違和感も疑問も持たず受け入れられた。


だけど子供だから、こんな可愛くてきれいな存在をナイショに出来るはずもなく。


誰かに言いたくて大好きな従兄弟たちに話そうとしたら、ものすごい勢いで妖精が唇に人差し指を立てて当てる仕草をしながら僕の鼻に乗ってきたんだ。


何故話そうとしたのをこの子がわかったのかは僕にはわからなかったけど、この子が余りにも悲しそうな顔をしていたから。


ただ悲しませたくないなと思った僕は、従兄弟たちにも話すのをやめた。


名前を訊いたら首を傾げて見せたので、僕がつけていいの?って訊いたら嬉しそうに何度も頷いたから、その時からこの子は「ルル」になった。


「僕はね、ちあき。あしやちあきっていうの。ルルは、僕とずっと一緒にいてくれる、かな…」


お父さんと、お母さんみたいに、いなくなったり、しないかな…。


そう言った時の、ルルの悲しそうな顔は今でも忘れられない。




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