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創作の秘訣。

※ 前半はノロケです


先日の話。


家族とテレビを見ていたら、CMだったか番組のワンコーナーだったか、画面にふと、絵描きさんの様子が映った。

自分の背丈ほどもある大きなキャンバスに、油絵具を懇々と乗せつづけ、一枚の絵画を描いて――作り上げていく絵描きの背中。


「いいなあ、こういうの、一回やってみたいわ」

と、わたし。画面を見てなかったらしい夫が何のことかと問うてくる。

「壁ほどの大きさのキャンバスに、絵の具でガシガシ描いて行くの。ほとんど壁画だよね。このスケールの大きさ、取り返しのつかなさ、入魂ってかんじ」

などと、話すと、聞いた夫は三秒と置かずに言った。

「ええんちゃう?そこの壁。(リビングの一面を指さす)引っ越すときにどうせ壁紙総張り替えになるんやし」

あんぐり。

いやいやナニイッテンノと笑って流そうとするわたしに、彼はやっぱり本気で、というほどの熱意も特になくごく普通の口調で、そろそろ髪の毛切ろうかなーという提案に対しての返事みたいなあんな口調で、

「いまある画材で描けるん?大金かかるんやったらボーナスまでは待ってて」

いやいやナニイッテンノ。


夫はごくふつうのサラリーマンで、住んでる家は社宅の賃貸3LDK。

そこに子供二人がいるのだから、まあ狭くて散らかった生活感のある家で、こぢんまりと質素に生きている状態だ。お世辞にも、いろんな意味で余裕があるとは言えない。部屋数いっぱいの豪邸ならばまだしも、こんなところに壁画など描いたら、家のくつろぎインテリアは壊滅だ。

さらに、彼の趣味は釣りとゴルフとバイク。絵にはかけらの理解もなく、たぶんちゃんと見せたこともなく、漫画すらロクに読まない、本棚にあるわたしの蔵書(宝の山ですよ!)にピクリともしない、オタク趣味といえるものはなにひとつ感慨が無い男だ。



それで、この台詞。


何一つ「理解している」わけじゃないのに、「理解がある」。でかい。なんてデカい男なのだ。身長160センチだけど。


わたしはもう胸がいっぱいになってしまって、

「あのねあなた。十二の年の差で、わたしから好きになって応えてもらって、出会って十年結婚して八年でわたしももう三十路を過ぎて子供も小学生で、大黒柱によりかかってるような生活をさせてもらってて、それでそんなこと言ってもらえる妻が世の中にどれほどいると思うの。もうそれだけで満足です。このうえなく幸福です。幸せにしてくれてありがとうございます」

と頭を下げる。

彼はげらげら笑い、「簡単な女よのう」と殿さまみたいな言い方をして、焼酎をあおった。


いやほんとね。

こんなのってないですよ。ごめんよ世界、わたしったらこんなに幸せで。


__ここまでノロケ。


で、創作活動の話。


あのさ。「なろう」で、趣味垂れ流しにせよ書籍化狙いにせよ、小説を書く、物語を創作するという行為は、少なからず己の欲望と言うか、願望をぶちこんだシンデレラ・ストーリーなのだと思う。

ダークヒーローが鬱々な世界で自滅していくのも含めてね。

「こんな陰鬱な世界で、悪くて強いやつがのし上がって、そして死んでいくなんて、かっこいい!」

という心理は、シンデレラがプリンセスになるなんて素敵っていうのと発想として根幹は同じなんですよ。


とくに、なろうはそれが顕著なのではないでしょうか。

異世界転生しかり、チート、ハーレム、俺TUEEE、ファンタジーがとにかく多い。

かくいうわたしも、このどれでもないけども、やはり、自分が「こういうのって素敵だよね」と思っているものを書いている。

それが当たり前ですよ。

作者が「面白い」と思うから、書くのでしょう。たまに「テキトーに五分でツマンナイものを書いてみました」って前書きに書いてある作品もみかけるけども、あれ嘘でしょ(笑)それなりに自信はあって、「えーほんとに5分で書いちゃったんですか、発想力がすごい。ぜひ連載にして続編を」というコメント待ちでしょ(笑)もーばれてんだから素直になんなさいよ(笑)


でさ。そういったものに、またこういう感想がつくよね。

「主人公に都合よすぎ、話がうまいこといきすぎ、簡単に幸せになりすぎ、ヒロインチョロすぎ」

と。

いやそれもわかるよ。笑っちゃうくらいホントそれな作品いっぱいあるし、正直わたしも好きになれないから、そうと感じたら読まないよ?


でも、きっぱり言わせていただく。


でたらめに幸運な人間は実在する。やたらと己に都合よくうまいこと展開する時期ってある。なんの脈絡もなく簡単に幸せになっちゃうこともあるし、何の理由もなくモテることもあれば、なにひとつ理由なんてつけられないけども、命を懸けていいほど人を愛してしまうことってあるんだよ。


わたしがそうだもの!


あれらは、そういう話を書いたものなんだ。

「そんなこと、ありえない」っていう、アリエナイ体験をした人間を主人公にした、特別な物語なんだ。だからこそ物語になってるんだ。

「奇想天外人物列伝」なのだ。

奇想天外なことが起こって、あたりまえなのだ。


読者へ。そういう心構えで創作物を読もうよ。

作家へ。「ちょっと物語がご都合すぎるかな……」と、推敲するのはいいことだ。だけど、深く考えすぎないほうがいい。



事実は時として小説より奇なり。

ならば、「小説として、奇すぎる!」くらいが、案外リアルなのかもしれないよ。


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