好きな漫画
好きな漫画話その2。
手塚治虫 「奇子」
アヤコ、と読みます。
主人公の名前がタイトルだけど、お話は、彼女にまつわるその親族たちの、ドロッドロのヒューマンドラマ。
戦前(だったかな?)の日本、田舎の豪商家。
絶対父君の親父が、息子嫁を寵愛。それを、奥様も息子もその兄弟たちも全員、知っていながら黙認。
生まれた娘が主人公、アヤコ。
穢れた子供を世間から隠すため、幼少から蔵に閉じ込める一家。
まずこれが第一話(笑)
そして美しく成長した彼女の蔵に日参する、近親の男たち。
闇に耐えきれず救いだそうとするものと隠しつづけようとするものの殺し合い。
そこから始まる長編物語は、もうね、カオスとしかいいようがないわな。
登場人物全員クレイジー、ってなお話はけっこうあるんだけども、それがすべて近親、ひとつの家の中というのがよりいっそう気持ち悪く、ぞっとする。酷いお話だけど、妙にリアルで生生しいのがほんとうに怖い。
グロい描写等ではなく、純粋にストーリーで吐き気がする漫画なんてそうそうありませんぜお客さん。
さらに何がすごいって、なんといっても、最終話。
こんだけどろっどろのカオス物語って、オチがすっきりしないことが多いんだけど、この漫画は例外中の例外といっていい。
終末はほんとに鳥肌立った。
手塚治虫作品といえば、鉄腕アトムに代表する子供向けアニメタッチの冒険ものと、ブラックジャックや火の鳥などのヒューマンドラマの2パターンが有名だろう。
手塚作品パターン3つめである、こういうドロドロホラーは表に出づらいように思う。
ぜったいアニメにできないし(笑)
でもさ、ほんとすごいよ。さすが神だよ。
ちょっと上手なお絵かきに「神ww」とかコメントされてる昨今だけど、マンガのカミサマの本を読んでから書けといいたい。
面白いから読んでみ〜とはよう言わん。
好きな漫画、としてあげるものでもない。
ただ「名作漫画と言えば!」と聞かれたら、
わたしはこれを上げずにはいられない。