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『通話履歴からわかった、いろいろなこと』   管理人側視点

通話記録によって、いくつかのことがわかった。

 最大の発見は、カロンとの通話はゼロだったこと。

 でもそれは、バーシュウレインの三人には予想通りだったらしく、互いの目を見ながら、ちいさく頷き返しただけで、一言の会話もなかった。

 不思議だったのは、僕の心の中に、微塵の乱れも生じなかったこと。素朴な疑問さえ浮かんでこなかった。

 もしかすると、それは、落ち着き払ったバーシュウレインの三人の影響によるものかもしれない。

 ただ履歴をスクロールしている途中「信じられないんだったら、履歴を調べてみたら」という声を聞いたような気がしただけだった。

「どのように、受け止めていらっしゃるんですか?」

 笑顔のままで訊くカモシンに、僕も笑顔で返した。

「僕の妄想が生み出したんでしょうね、カロンという女性を」

 カモシンは、ここでも自分の意見は述べなかった。たぶん、こだわりを見せない僕をみて、カロンの件は、これでおしまい。そんなふうに判断したのだろう。

「この番号は、どなたのものですか?」

 事務的な声で訊かれたのは、一番古い着信記録だった。

 それはカロンとは無関係だということは一目でわかった。着信時刻が、僕がチカチカマンションに名刺を投入してから、七分ほどしかたっていなかったからだ。

「わかりません。ただその時間だったら、帰りのタクシーの中だと思います。でも、電話はなかったはずです」

 すると、それまでだまって様子を伺っていたガウチが「もしかして」といった。

「それって、タクシーの運転手さんの携帯番号なんじゃないかしら」

「あり得るわね」

 ほかのふたりも同意したが、僕には理解不能だった。

「そんなはずありません。だって僕は後部座席にいたんです。タクシーの中なら、小さな声でも聞こえます」そこで僕は一息ついてから訊いた。

「じゃあ仮に、これが運転手さんからの着信だったとしましょう。その場合、何のための電話だったのか、説明できますか」

 ちょっとムキになった僕に、ガウチはにこっと笑った。

「お得意さんになってもらうためです」

 その意味なら知っていた。

「でも僕、タクシーにはほとんど乗りませんよ」

 ガウチは苦笑いを浮かべた。

「降りるとき、名刺を手渡されるのは珍しいことではありません。これは私の想像ですが、そのとき運転手さんは、こんなことをいったんじゃないでしょうか。

 ご利用の際はこちらの番号にお電話ください。よろしければ、お客様の電話番号を教えていただけませんか。いますぐわたしが電話します。それを登録していただくか、リダイヤルしていただく……」

「提案があります」

 話の途中でカモシンが割って入った。

「そこに、電話してみたらどうですか」

「え? 今ですか?」

「そうです。リダイヤルボタンを押すだけです」

 他人事だからといって、あまりにも簡単に言いすぎ。

「でも、現時点では、どこの誰かもわからないんですよ」

 カモシンは、にやっと笑った。

「案ずるより産むがやすし,案ずるより押すがやすし」


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