出し物決定
部長も完全に泣き止んだ頃、飯塚さんが何か言ってきた。
「外道君、三ケ原さん・・・一つお願いがあるんだけど・・・」
飯塚さんがもじもじしている。なんでも買い与えてしまいそうな可愛さだ。孫に欲しいタイプだな、飯塚さんは。
「どうしたんですか?」
「えーっとね、昨日何もしないで、って言っちゃたんだけど・・・その、手伝ってくれないかな?」
よくよく見ると、目の下に隈が出来ていた。
「そんなの絵を一枚だけ描けばいいだけじゃないですか。別に一日もあれば終わるでしょう?」
「それは私のポリシーに関わるの!!私は何枚も描く!」
飯塚さんが力強く答える。胸を張っているが、飯塚さんの胸は大して大きくないので迫力に欠ける。でもまぁ写メっとこう。
「私は一度こうと決めたことは最後まで貫き通したいの!美術部も10点ぐらい飾って、文芸部も5点ぐらい飾りたい!それも全部新作のを!!」
飯塚さんが熱い。結構面倒くさい人だったんだな、そんなの去年のを使いまわせばいいのに。
「で、どれくらい終わってるんですか」
飯塚さんの顔が一気に曇る。全然終わっていないらしい。
「もう諦めて、適当に終わらせてください」
俺は働きたくない。
「お願い!無理を言ってるのは分かってるけど、私、どうしてもやり遂げたいの!!」
もともと無理な目標を掲げていた飯塚さんに、さらなる仕事を押し付けたのは俺たちだ。
「・・・・・はぁ、しょうがないから手伝ってあげますよ」
部長と仲良くなるのはいいが、これまでまともに文芸部の活動をしていない。さすがに何かしといたほうがいいのだろう。
「私も手伝うぞ、飯塚さん!で、何を描けばいいんだ?」
「部長は小説を書け」
「えっ、何でだ!?文芸部はアニメか何かの絵を描くんじゃなかったのか?」
部長が首をかしげる。部長の絵は酷いので小説を書いてもらった方がまだましだろう。
「外道君は絵を描くの?」
「ええ、まぁそのつもりですけど」
「あ、うん・・・、外道君、絵、うまいし・・・」
俺が絵を描くのに反対なのか?
「なら、なんかの像作ります」
「なんかの像って、グロイやつ?」
「当たり前でしょう?」
それ以外に何がある。
「まぁ、絵を描くのよりかはましになるよね、きっとそうだよね・・・」
自分自身に言い聞かせている飯塚さん。その姿を写メっている俺に部長が訊ねてくる。
「私は小説なんかを書いたことがないが、それでも大丈夫なのか?」
「酷評のところは俺が作ったことにするから大丈夫だ。明日から休日だから、適当に設定とか考えてきてくれ」
「時間がないが間に合うのか?」
「大体間に合うだろ。それに、俺はパソコンとかは得意だから文字化するだけならすぐにできる」
「ならやってみるか!」
部長がやる気になった。部長は普段から本を読んでるみたいだしまあ大丈夫だろう。
「それじゃあ、もうここらへんで解散ということで」
美術室に残って絵を描くという飯塚さんを残して、俺たちは部室からでる。
「外道、今日はごめんな」
帰りしなに部長が謝ってくる。
「いいっていいって」
部長のパンツの写真も撮れたしな。逆に感謝している。
「それじゃあな!」
部長とは家が真逆だ。部長はバス、俺は電車。だから校門を出てすぐに別れることになる。
「ああ、また来週!」
俺は、家に帰るとベッドの上にすぐさま倒れこむ。
「ふぅ、疲れた」
今週はいろんなことがあったので疲労困憊だった。
「部長と出会って、飯塚さんと出会って、逢坂と出会って・・・」
俺の人生の中でまともに話し合える人間などそういなかった。五十嵐先生ぐらいか。それがこんなに多く・・・。
「まだまだこの世界も捨てたもんじゃないな」
俺はそうつぶやくと、そのまま眠りに落ちて行った。




