ライバル出現
「おい、貴様!こっちに来い・・・」
部長との騒動があった、その日の午後の体育の授業開始直前、俺はある男に呼ばれていた。
「貴様、三ケ原さんとはどういう関係だ」
「はぁ・・・」
ある男は中性的なイケメンで、そして三ケ原が好きならしい。体育の授業は、俺の所属するクラスと部長のクラスの共同で行われる。そして、このイケメンは俺のクラスにはいないので部長のクラスメイトだろう。
「部員と部長の関係だけど?」
俺は素直に事実を述べる。しかし相手は納得していないようで、
「どうやって三ケ原さんと仲良くなった!!詳しく教えろぉ・・・」
無駄に熱い。うざいな。
「俺が三ケ原?と出会ったのは二日前で、先生に仲良くなれって言われたからなってるんだけど」
実際に仲良くなれているかは分からないが、大体こんなもんだろう。
「それじゃあ、俺は授業を受けなくちゃならないから」
俺は授業を受けるため運動場へ向かう。
「ちょっと待て!!」
「ん?なんだよ」
「お前は先生に言われたから三ケ原さんと仲良くしてるんだな」
「まぁそうだが」
「なら、僕が代わってやろう!」
「無理だ」
せっかくいい玩具が出来たのにそれを易々と手放す気はない。
「なら、僕と勝負をしろ!!」
「はぁ!?」
「今日の体育は持久走だ。僕が勝ったらその役を交代しろぉ!!」
こいつはなにを言ってるんだ?
「無理だ。俺はその勝負を受けない」
「卑怯だぞ!正々堂々勝負しろ!!」
「お前が正々堂々三ケ原と仲良くなればいいだろうが」
「話しかけても嫌がられるんだ・・・。しかし、君に対しては心を開いていた!全てで僕より劣る貴様が、三ケ原さんと仲良くなれた理由、それは先生のお墨付きがあったからだ!!それしか考えられない!!!」
うざっ!これ以上一緒にいるとバカがうつる。これからは無視することにしよう。
「ふっ、僕を無視するのか?負けるのがそんなに怖いか!醜いな、そこまでして三ケ原さんと繋がっていたいか!?自分から振っておいて!!」
体育の授業が始まってもこいつはうざかった。こいつはなんで上から目線なんだ?明らかに醜いのはお前の方だろうが・・・。ちなみに男子と女子は一緒に体育をしない。このイケメンも部長がいれば良い子ちゃんに豹変するのではないだろうか。
「ピッピー。それでは、今から持久走を始める!」
いかつい体育教師が告げる。
「ブーブー!」
「マジかよ・・・」
「ダルっ」
生徒たちからは苦情が出まくるが、いかつい体育教師は涼しい顔で受け流す。
「さて、これから持久走だ。交代してもらう約束!守ってもらうからな・・・」
いったい俺がいつ約束をした?本気でうざい。
「僕に逆らったこと、すぐに後悔させてやる!!」
思い込みが激しいな・・・。
「お前ら、文句を言わずにスタート位置につけ!」
生徒達が渋々スタート位置につく。もうこうなったらこのイケメンにぎゃふんと言わせてやろう。
「位置について、よーい、ドン!」
一斉に生徒たちが走り出す。先ほどまでぐちぐち言っていた人たちもかなりの速度を出している。
「この程度か?笑わせる」
俺は先頭を走っていた。しかしそのすぐ後ろにイケメンがへばりついてきた。俺もかなりの速度を出していたが相手は余裕そうだ。大口をたたいていたいただけのことはある。そういえば、これって何メートル走だったけ・・・。
「これって何メートル走だ?」
「5000だが?」
マジか・・・、もう諦めよう・・・。俺は先頭をイケメンに譲り、真ん中より少し前のところに陣取る。下がる時にイケメンからぐちぐち何か言われたが知ったことではない。そもそも俺にはイケメンに対抗する意味なんてない。勝手に向こうが言ってきているだけだ。
イケメンは先頭を守り続け、結局1位でゴールした。俺は15位ぐらい。それでも文化部としてはトップなんじゃないだろうか。
「滝川、随分と余裕そうじゃないか。もっと本気を出せよ」
いかつい教師に注意される。実際に俺には余裕があったが、俺は頑張れない人間なのだ。やればできるがやれない。努力の天才というものがあれば、俺は頑張れない天才だ。
「僕の勝ちだ!おとなしく僕に役目を譲ってもらおうか!!」
まだ言ってるのか・・・。
「お前、三ケ原のどこがいいんだ?」
俺はずっと気になっていたことを聴いてみる。
「全てだ!!」
変態だな。
「確かに顔だけはいいが・・・」
「いや、三ケ原さんは性格も良いんだ!」
「あいつの性格のどこが良いんだ?頭、大丈夫か」
「貴様は今の三ケ原さんしか知らないからだ。小学校の頃は、今みたいでは無かった・・・」
そういえば飯塚さんが言っていたな。部長は中学生の時、父親が殺人を犯し、その影響でいじめられていたと。部長はそれで心を閉ざしてしまったらしい。
「お前は何かできたのか?中学時代の部長も知っているみたいだけど」
「部長?あぁ、三ケ原さんのことか。出来る限りのことはしたつもりだが、結局心は開けなかった・・・」
だから俺が部長と仲良くなった方法を強く聞いてきたのか。
「お前は不幸になれ」
「はぁ!?」
「だから、部長と仲良くなりたいなら不幸になればいいんだ」
「どういうことだ?」
「俺は5歳の時に両親を亡くしててな、それで部長が親近感を持ったんだ」
「なら僕は、はなから資格がなかったということか・・・」
「いや、だからお前が家族を失えばいいんだよ!」
「無理に決まっているだろう!!僕は三ケ原さんが好きだ、だがそこまでは出来ない!」
「ちっ、引っかからなかったか」
「思いっきり聞こえてるぞ!」
その程度の覚悟しかなくて部長に近付いてんじゃねぇよ。部長は俺の所有物だ。
「貴様の名前は何という?」
「俺の名前?それじゃあ名前は変わるから外道って呼んでくれ」
「外道!?ふっ、ダサいな。僕の名前は逢坂 公彦だ!せいぜいその小さな頭に入れておくんだな。また会おう!!」
うざいな、もう二度と会いたくない。




