家族サービス
「なんでまたここなのよ!?」
「俺だってここに来てあまり日は経ってないんだよ。ここぐらいしか思い付かなかった」
俺たちは学校近くのショッピングモールに来ていた。もうさすがに見飽きてきたな・・・。
「ご主人様、この近くにもホテルがあるそうですよ」
「行かないので知りません」
夏休み中ということもあり、ショッピングモール内は人でごったがえしていた。暴行事件をおこさないように、なるべく人混みを避けながら進む。
「ご主人様、そう無理なさらずとも良いのではありませんか?」
「五月蝿い、俺は来たくて来たんだ。無理なんかしてない」
「そう言ってる割りには冷や汗びっしょりじゃない」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「よしっ、行くか。まずはメイド喫茶へ!」
「話を逸らすな!・・・って、またあの店行くの?」
問答無用だ。俺はカノンの手を引っ張って人混みから離れた場所をちゃっちゃと歩いていく。
「ご主人様、私の手も・・・」
「あぁもう!分かったから右手出せ」
俺は二人の手を引く。しかし重いな、早速手が疲れてきた。こいつらの片腕だけでも切り落とせば軽くなるだろうか?
「「いらっしゃいませ、ご主人様っ!お嬢様!」」
ポニーテールと赤縁眼鏡のメイドさんが出迎えてくれる。
「ふんっ!」
カノンがヒールで足を踏んでくる、というか刺してくる。激痛を必死で堪えながら、笑顔で接客してくれるメイドさんたちに「オーナーはいますか?」と質問する。
「いらっしゃいますが、現在は仕事中ですのでしばらくお待ちください」
「それまでの間、ゆっくりしていってくださいねっ♪」
カノンの俺の足を刺す力がさらに強くなる。俺は何もしてない!心の中でしかにやけてません!!
「ご主人様。これがハートとというものでございます」
二葉さんが綺麗に腰を曲げながら俺のオムライスにケチャップ文字を書いてくれた。模様でなくひらがなで『はーと』。しかも達筆過ぎて全く可愛げがなかった。『ドジっ子LOVEやで!!』と言っていた長曽我部先輩の気持ちが分かった気がした。
「やぁやぁ外道君。今日も今日とて美女たちを引き連れて何を見せつけてやがるんや?あぁんごら!!」
長曽我部先輩のキャラが崩壊している。殴れば治るかなとも思ったが、この前に近くで暴力事件を起こしたばかりなので止めておく。
「長曽我部先輩、俺に彼女ができたんですけどどうすればいいですか?」
長曽我部先輩の顔がどんどんどんどん歪んでいく。最後には涙を流しながら俺に抱き着いてきた。
「外道君、いつかはこうなる、こうなる思おとったよ!けどな、けどなぁ・・・、なんで僕に見せつけてくんねん!!年齢=彼女いない歴の僕をいじめにきたんか!?」
「その通りですけど、この二人のどちらかが彼女ではないんですよ。俺の彼女のパンツの写真でも見ますか?」
「・・・なんでパンツなんかは分からんけど、見たい!パンツ見たい!!」
長曽我部先輩が調子を取り戻す。カノンが殺気立ったものを向けてくるが気にしない。いちいち反応していたら、俺の少ないストレスのキャパシティーが暴走して溢れだしてしまう。そうなってはこの店を閉めざるをえない事件が勃発するだろう。
「ご主人様、もうこちらに居る用は無いかと」
俺はまだ萌え萌えキュンキュンしてないぞ!適度に頑張って粘ってみよう。
「長曽我部先輩、俺に彼女ができたお祝いに、今回の会計は長曽我部先輩持ちってことになりませんかね?」
「無理やね。この店ができてから1年も経ってへんからまだ僕の懐は寒いねん。なによりも外道君に彼女ができたってことが腹だたしくてたまらへんから!」
なぜ笑顔なんですか!?マジでキモいのでやめてください。
「司郎、こんな店からはちゃっちゃと出ちゃいましょ。アンタも彼女がいるんだったら、もう少し相手の事を考えてやりなさい。その娘が『自分の彼氏がメイド喫茶に来てる』だなんて知ったら、きっと悲しむわよ」
「・・・カ、カノンが真面目なことを言った・・・。・・・今日は台風でもくるんじゃないか!!?」
「なんでそうなるのよ!!・・・はぁ、ホント締まらないわねぇ・・・」
うんざりといった様子のカノン。俺は変なことはしていないはずだ。カノンが真面目なこと言っても笑わなかったし。
「「「いってらっしゃいませ、ご主人様っ!お嬢様っ!」」」
カノンに後ろ首を掴まれながらメイド喫茶を出る。二葉さんが会計をしている間、店の外でカノンにあることを訊いてみる。
「なぁカノン。俺と兄妹になったこと、『嫌だ』と思ってるか?」
「・・・別に悪いとは思ってないわ。・・・その、面白いし・・・」
「ならさ、『良かった』って思ってるか?」
今度は真剣に悩み、二葉さんが店から出てくる頃に答えが出たようだ。キッ!!と俺を睨んでくる。
「初対面でイキナリ盗撮してくるは告白してくるわでメチャクチャだったわ!・・・でも・・・」
カノンは一変、目一杯の笑顔を俺に向けてくれる。
「いつも楽しかったし賑やかだった。そりゃツライこともあったけど、・・・でも、司郎と出会えて本当に良かった!」
俺は人に好かれることも出来たんだな。これまではずっと嫌われてしかなかったので、こうして面と向かって言ってくれると自信がついてくる。
「ありがとうな、カノン」
それもこれも部長と知り合ってからなんだよな、人と少しは関われるようになったのって。きっと部長とはきちんと話をしておいた方が良いのだろう。
今度の金曜日。その時に全てを終わらせよう。
次はクライマックスです。




