合宿3
「すぅー、すぅー」
泳ぎ疲れてぐっすりと眠ってしまった和音を担ぎながら、ゆっくりと学校へと戻っていく。
部長は最終的に、もがきながらも25メートルを泳ぎ切れるようになった。そうやって頑張ったせいで、現在は鳥居に肩を借りながら歩いている。ゲッソリという表現が似合う感じだ。
「楽しかったねぇ」
「そうですね・・・」
和音に追い回され、部長にスパルタしすぎたせいで泣きだし、最後は鳥居がケンカを売ってきた。結局は水に沈めて戦意を喪失させて治めたが結構面倒だった。
「先輩の強さを身に染みて分かりました!ありがとうございました!!」
鳥居のキャラがよく分からない・・・。
和音をベットに寝かせてやる。俺にここまで運ばせやがった罪、ここで晴らさせてもらおう。
「鳥居、俺の頼んでおいた罰ゲームに使えそうなものってなんだ?」
「これですっ!」
鳥居がスーパーの袋から取り出したのは・・・、
「テューテュテュー、テュテュテュテュテューン、ティンドン コン〇ーム!!」
俺は問答無用で殴りつける。
「お前は二葉さんか!!?変態行為はいい加減にしろ!!」
「・・・はい・・・、グスッ・・・」
強く殴り過ぎたせいで泣きだした。もう慰める気力などは残っていないので、和音に寝起きドッキリを仕掛けることに専念する。
「どうするか・・・」
現在、候補は10個ぐらいあがっている。犯罪にならないものは2つ。この2つの中から選ばなければ、きっと飯塚さんが五月蝿いだろうな。
「よしっ、こっちにしよう」
俺はプランを一つに決定する。ちなみにもう一つは、鼻の穴にタバスコを染み込ませたティッシュを詰め込む、といった下劣なものだ。
「3・2・1・どん」
「ふんがぁ!!」
俺は和音に鼻フックを決める。もちろん、手にはゴム手袋を着けてばっちり防備だ。
「痛い、痛いのじゃぁぁぁぁーーーーーーーー!!!
和音が鼻声で呻く。ゴムだしかなり痛いんじゃないか?・・・あと5秒で許してやるか。
「はぁはぁはぁ・・・」
和音がベットの上で荒い息をしている。
「どうだ?これが俺を働かさせた代償だ。今度俺の手を煩わせるような事があれば、・・・右手の中指な」
「それは折るのか!?折るんじゃな!!?」
和音が恐怖の顔になる。いやぁ、楽しいねぇ!
「よしっ、次は部長だ。疲れて眠りについたからな」
部長はソファーでぐっすり睡眠中だ。無防備すぎてエロいな、やるまえに写メっておこう。
「どんなやつにする?」
「はいっ!僕に案があります!!」
「今度も下ネタだったら殺すからな」
「分かってますよぉ。それじゃあ、このしめ縄をどうぞ!」
鳥居が渡してきたのは、綱引きで使う縄を少し細くしたようなものだった。
「鳥居にしては上出来だな」
「当たり前ですよ!」
鳥居が眼鏡を押し上げて偉そうに言う。首を思いっきり締めてしまいたくなったが、ギリギリのところで押し留める。
「さぁて、どんな結び方にしようかね・・・」
俺は、数多くのレパートリーの中からなるべくエロくなるようなものを選ぶ。
「げ、げごぉ!!ば、ばぶべぇ!!!」
口にも縄を噛ませてみました。ちなみに体勢はエビ反りに近く、ボディーラインがよく分かる。俺はコンパクトカメラのシャッターをきりまくりながら、部長の腹を踏みつける。
「ぼ、ぼごぉ!!」
何か言いましたか?俺は、部長の服を脱がしたりしながら様々な表情の写真を撮っていく。今回のは自信作だ!逢坂に10万円で売りつけることにしよう。
「外道君・・・、そろそろ止めてあげてよ・・・」
「仕方ありませんねぇ」
俺は大人しく部長を開放してやる。
「はぁはぁ・・・」
部長がソファの上で荒い息をする。俺が達成感に浸っていると、無神経な鳥居が話しかけてくる。
「先輩、夕食はどうします?」
「どうする?和音」
「部長、どうするんじゃ?」
「こなみさん、どうします?」
「・・・うん、分かった」
普段、飯塚さんが絵を描いている机には、海鮮サラダに電子レンジで作った味噌汁、サバの缶詰が入った炊き込みご飯に、オーブンで焼かれた鶏肉が所狭しと並んでいた。
「コンロが無くてもこんなものまで出来るんですねぇ~、もぐもぐ」
鳥居が人の5倍ぐらいがっつきながら飯塚さんを褒め称える。
「昼飯はそんな食ってなかったよな・・・」
「朝ご飯を3合ぐらい食べましたから」
何なんですか?その食いしん坊キャラは・・・。ますますコイツが分からない。
「そこまで美味しく食べてもらえると嬉しいなぁ。明日も頑張って作るね☆」
飯塚さんがウインクをする。似合いすぎててゲロ吐きそうです。
「ふぁぅあ・・・、もうそろそろ寝るか?」
「そうですね・・・。はぁあ」
俺たちは深夜3時まで遊び続けた。普段の部活でもそれぞれが好きな事をやっていたりするので、こうして遊び続けるというのは初めてだ。
飯塚さんは2時ごろにダウン。部長は2時半に俺がチョップしすぎて気絶。和音は先ほどから俺の膝枕で爆睡中である。寝顔が三人とも超可愛かったので、赤いサインペンでグロ目の落書きをしてやった。
「先輩、今日は楽しかったです!」
和音と飯塚さんををベットに寝かせてやりながら、鳥居が明るく言う。
「そうだなぁ」
俺は、ソファーで唸りながら眠っている部長に、厚手の布団を10枚もかけてやる。
「く、苦しい・・・」
部長が寝言でそう言っていたので、部長の財布から500円玉を抜き取っておく。
「全然関連性がありませんよ・・・」
「おっ!これは部長の使用済みパンツじゃないのか?撮れるだけ撮っておこう」
「先輩!そのことを新聞に載せますよ・・・」
そうなっては面倒なので切り上げておく。部長の横縞パンツをを綺麗に元の位置に戻す。
「ちゃっちゃと寝ろ。こんな時間まで起きてるなんて健康に悪いぞ」
「皆を寝落ちするまで無理やり遊ばせていた人の言う事ではないですよね!?」
寝落ちは良いぞ、爆睡だからな。ちょっとやそっとのことでは起きない。
「お前が寝てくれないと物色が出来ない」
「余計寝れません!」
結構頑固だな。そういえば、
「お前って何で俺の事を慕ってくれんの?自分で言うのもなんだけど俺は屑野郎だぞ」
ずっと気になっていた事を聞いてみる。俺はイケメンではない。ただ単に趣味で人を殴ったり、いたぶったりしているような性格の持ち主だ。こいつが一度俺に助けられたからといって、何もパシられたりする必要は無いはずだ。それも助けられて3年後にも。
「僕は先輩が好きだからです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・マジですか?」
俺は自分の耳を疑う。部長に大好きだとか言われたが、それはその場のノリである。今はそんなノリではない。いくら友達ができて間もないからと言っても、それぐらいの雰囲気は分かる。
「僕は先輩が大好きです。性格は腐ってますが、優しいし、格好いいし、強いし。こうして側にいれることが嬉しくて堪りません」
「はぁ・・・」
思考が停止する。俺が好き?俺が格好いい?俺が優しい?
「先輩!僕と、付き合ってください!!」
鳥居が両手を前に突き出す。これは握手を求めてるんですか?お見合い番組でこんな事をしているの見たことあるな・・・、「俺と付き合ってください!」的な。
「えっーっと・・・、はい?」
俺は聞き間違いであるはずだと思い、もう一度聞き返す。
「だ・か・ら、付き合ってください!」
聞き違いではないようだ。ということは???俺は状況がよく飲み込めないまま、何となく鳥居の手を握り返す。
「えーっと、付き合うの?」
「はい!」
俺に初めて彼女ができた。
とりあえず急展開です。




