合宿2
「さぁて何をしますか」
俺たちにはこれといってやることが無かった。普段から遊んでいるし、何もしていない。飯塚さんは絵を描いているだけだし、鳥居は休み中は新聞を出す必要もないので結構暇だ。
「どうするんだ?」
「どうしよう?」
「どうするんじゃ?」
「どうしましょう?」
俺たちは悩んでいた。これほどグダグダなら、『合宿なんかするんじゃなかったな』とも思うが、自分から言い出したことだ。止めようにも格好がつかない。
「えっと、メイド喫茶に行かないか?」
「嫌だ。あの長曽我部とかいう人が気持ち悪いから」
長曽我部先輩・・・、何も言い返せません・・・。
「ならさ、プールとかどうだ?もう夏休みだしな」
「それは良いな!でも水着は無いぞ?」
「こんなこともあろうかと用意しておいたんだよ」
俺は鞄の中から4着の水着を取り出す。それを皆に配ってやる。
「サイズはピッタリだと思うけど、念のために一回試着してくれ。合ってなかったら行きしなに買うから」
状況を把握できずにポカンとしている4人を置いて、一度部室から出る。きちんと小型カメラを仕掛けてあるので盗撮はバッチリだ。長曽我部先輩に6万円で売りつけよう。
「もう着替え終わったか?」
「あぁ、出来たが・・・」
扉ごしに部長の声が聞こえる。さぁって、俺はコンパクトカメラを構えて部室に突入する。
「おぉ、みんな可愛いな」
「そ、そうかの?・・・」
皆がもじもじしながらも水着を着ている。飯塚さんには小さめのスクール水着を。和音には白いひらひらの付いた可愛らしい水着を。鳥居には背中がパックリあいた昭和チックなオレンジの水着を。部長には・・・、
「なんで私は尼さんみたいなんだ?・・・」
部長には、スキューバダイビングの時に着るような、頭までカバーする水着?を着てもらった。
「なんで私はこんなものだ!?もっと可愛いのが着たい!!」
「五月蝿い、部長の肌を誰かに見られたくなんだよ」
「げ、外道・・・」
「熱いのぉ!熱いのぉ!!」
五月蝿いんだよ・・・。これは建前で、実際にはギャグ要素が欲しかっただけだ。俺はちょっと照れた部長を写真に撮る。
「とりあえず行きますか」
「ここがプールか・・・、人が多いな・・・」
「そうじゃのぉ・・・」
「今日はまだ少ない方だと思うけど?」
スクミズの飯塚さんが、一生懸命浮き輪を両手で抱えながら言う。これでまだ少ない方だと!?最盛期に行くと絶対暴力事件起こすだろうな・・・、気を付けよう。
「先輩!こっちの方はまだ空いてます。今のうちに泳いじゃいましょう」
「そうだな」
パシリの鳥居がきちんと働いてくれる。やっぱりパシリは最高だな・・・。
「そういえば・・・、何で私たちの体を知ってたの?」
その発言はエロいのでやめてください・・・、勃っちゃいそうです。
「それは先生です。俺が先生を買収して、スリーサイズとかを教えてもらったんですよ。ちなみに鳥居はAカップです」
「ちょ、先輩!!ばらさないでください!!!」
チョップして黙らせる。
「して、何故わしも?わしはお主ら学校の生徒ではないぞ?」
「それは、隈なくお前の体を眺め見たからだ!」
「変態じゃの・・・」
「下衆と言ってくれ」
「ぷはぁ、外道も一緒に泳がぬか?」
合計で、500メートルも泳ぎ切った和音が訊いてくる。
「お前ほど泳いだら俺は死ぬからな・・・。俺よりも部長を誘ってやれ。明らかに一人で浮いている」
部長は人々の視線を集めていた。明らかにプールでする格好ではないし、それに泳ぎが下手くそだった。「あんな格好してんのに泳げないってどういうことだよ?」「ダッサ」まぁこんな風に言われている。しかも顔が良い事もあり、かなり悪目立ちしている。「あの娘カワイイなぁ、でも何であんな格好してんだろ?」「あれじゃね?不思議ちゃんてやつ?お前告って来いよ」こんな感じにも言われている。飯塚さんと鳥居も結構目立っているが、群を抜いて目立ち過ぎだ。俺は助けるつもりはないし、やるんだったら和音にやらせる。
「おーい部長!わしが泳ぎを教えてやろうか?」
「ふん!馬骨などに教えてもらわずとも大丈夫だ。私は泳げる」
ビートバンを片手に言うセリフじゃないな。仕方ない・・・。
「俺が教えてやるよ」
「えっ、良いのか!?」
和音はダメで俺はOK。身分社会バンザーイ。
「まずは水に慣れるんだ」
「どうやってやるんだ?」
「こうするんだ」
俺は、傍に立っていた和音の後頭部を右手で掴み、そのまま水中に叩きつける。『ごぼごぼごぼ!!』と手足を必死に動かして抵抗しているが無駄だ、これも部長の為だと思って諦めろ。1分ほどしてからだろうか、和音はだらーんとして動かなくなった。俺は優しく抱き寄せると、そのまま陸に上げてやる。
「はい、それではやってみましょう」
「・・・」
恐怖におののいている顔だな。カメラがないのが惜しい。
「はい、それではやってみましょう。それとも俺の補助が無いと出来ませんか?」
「やるっ!やります!!」
「素直でよろしい」
部長は自分から顔を水につけた。30秒で出てきてしまったが、ここは褒めた方がいいのかもしれない。『褒められた子は育つ』的なものがあったはずだ。
「よーし、よく頑張った。お前は最低だな。最恐だな」
「全然褒めてないぞ、それ・・・」
そうだったな・・・。俺の感性は人とずれているんだった。これからは気を付けるとしよう。
「代わりといっちゃあなんだが、お前の頭を撫でさせてくれ」
「へっ!!?いいのか!!」
「・・・いいぞ・・・」
嫌がれるものかと思っていたのに、何故かこっちが引くほど凄く喜ばれた。本当に俺の事が好きなんじゃないだろうか?まぁないだろうが。
「それじゃあいくぞ」
「ああ・・・」
部長は、水着のフード部分を脱いでスタンバっている。俺は部長の頭へ手を乗せる。濡れた長い黒髪はスベスベで柔らかい。嬉しそうに撫でられている部長の顔が、溺死させたいほどに可愛い。
「ヒューヒュー!熱いねぇ熱いねぇ!!」
和音ではなく、スクミズ姿で浮き輪にすっぽりとハマりながら、ゆっくりと流されている飯塚さんが煽ってくる。いや、もうめちゃくちゃ可愛いな。孫に欲しいよ、ホント。
「先輩、コン〇ームって買っといたほうがいいですかね?」
「買わなくていい・・・」
いったい何に使うつもりだよ・・・。
オチは無理やりつけました。




