合宿1
「さぁて、これからどうします」
壁掛け時計は正午12時を指している。
「あの、僕はまだ昼食を食べてないんですけど・・・、他にもいますか?」
「ごめんね、りぃいちゃん。私は食べてきちゃった・・・」
「ていうか、その『りぃいちゃん』、って何ですか?」
「鳥居って言うんだよねぇ?ならりぃいちゃんだよ!」
そうですか・・・。そもそも名字に『ちゃん』を付けることが間違えていると思いますよ・・・、親しいのかよそよそしいのか分かりません。
俺がなんとなく和音にチョップをかましていると、部長が俺の耳元で何か言ってくる。
「外道、私は食べていないと伝えてくれ」
「自分で言え」
俺は部長にチョップする。
「いつもながらに痛いな!」
「当然だ」
部長を適当にあしらっていると、鳥居が気を使って話しかけてきた。
「あの、部長さんは食べましたか?」
「た、食べてないぞ・・・、ふんっ!」
これも多少はマシになっていると思っていいのだろうか・・・。
「他の人は?」
「わしは食べた」
「俺も食べたな」
「なら部長さん、僕と二人でコンビニでも行きますか?」
「ほ、ほへっ!!」
部長が素っ頓狂な声をあげる。ボイスレコーダーを持ってきておいて正解だったな。後で逢坂に500円で売りつけよう。
「何か買ってきてほしいものってありますか?」
「菓子が欲しいぞ」
「私、肉まんが欲しい!」
「罰ゲーム的なものを買って来い」
鳥居は俺らが言ったものを簡単にメモに書き留め、部長の手を引っ張って部室を出ていこうとする。
「ちょ、外道!助けてくれ!!」
部長が人見知りSOSを出すが俺の知ったことではない。せいぜい鳥居と仲良くなっとけよ。部長に友達ができれば、俺はお役御免でおさらば出来る。もう最近は生きてることも面倒になってきたからな。
そういえば・・・二ヒッ。ちょっと面白いことを思いついたので実行してみる。
「おい和音。少し外に出ないか?今日は天気も良いしな」
「そうじゃの。いつまでも籠っておったのではつまらんからのぉ」
「飯塚さんもどうですか?」
「うん!私も行くよ」
ぞろぞろと三人で部室を出る。
「あっ、忘れ物したので待っててください」
俺は適当な口実をつけて部室に戻る。部屋に戻れば鍵をかけ、チェーンもつける。これで部室には俺一人。部室の中には女子4人の着替えやら何やらがある、これを物色してやろう。
『ごんごんごんごん』
「開けるのじゃ!!絶対持ち物を物色しとるじゃろう!!!」
「早く開けろ!!私の荷物には見られてはマズイものが・・・」
部長と鳥居がコンビニから帰ってきた時、扉を開けようとして俺が籠城していることがバレた。俺は可愛らしいリュックサックに入っていた、可愛らしい水玉のパンツを写メりながらこう答える。
「俺は着替え中だ、勝手に開けて入ってくんなよ。男の神秘を目撃したくなければな」
「ひっ・・・」
引かれたな、うん引かれたな。まぁいいや、もう大体の物は写真に収めた。後は飯塚さんと和音の財布から100円を抜き取るだけだな。
「はぁい、もう着替え終わりましたよ」
完全な嘘にならないように、ジーパン・Tシャツから寝間着代わりの青ジャージに着替えた。ついでに言うと、物色した形跡は100円が消えたこと以外は残していない。たたみ方から皺のいき方まで完璧に元に戻してある。自分で言うのもなんだがかなり下衆いな、屑野郎だな。こんな芸当、空き巣以外に活用できる場所が見当たらない。
「漁ってないんですか?」
「おかしいのぉ・・・、していると思ったんじゃが・・・」
やっぱり気付かれないな。さすがは俺!完璧だ!!
「このパンツに外道の匂いがする」
部長が水玉にパンツを嗅ぎながら言う。「お前は犬か!?」とツッコミたくなるが、それをすれば物色したことを認めることになる。ここはじっと我慢しよう・・・。
「俺は着替えていただけですよ。その根拠に、鞄の中は何も変わってないでしょう?俺は触ってないんですから」
「「「「じーーーーーーーーーーーーーー」」」」
皆からの視線が痛いよ・・・。美女たちに一斉に見つめられると、どうしても直視できない。眩しいものは苦手なんだよ。
「まぁ良いかのぉ。実際に外道がやっておったとしても、物は盗まれておらんのじゃ。外道の携帯を壊しておけば問題は無いはずじゃ」
「!!?」
「それは名案だね!和音ちゃん!!」
「そうだな、携帯さえ壊せば・・・」
「ちょ、ちょっと待て!!!・・・助けろ鳥居!!」
「先輩もこの人たちには形無しなんですね・・・、メモメモっと」
ちょっと鳥居さん?助けてぇぇーーーーーーーーーーー!!!
『ごめんなさい、僕がやりました
変態 』
こう書かれたルーズリーフの1ぺージを額に貼られ、俺は部室の片隅に正座させられていた。俺の携帯は見るも無残なほどにボッコボコにされ、そして、俺も・・・。携帯だけでなくコンパクトカメラでも撮っておいたため、物色した成果はしっかりと残っている。だが、まったくもって採算が合わない。
「外~道君!!あっそびましょぉぉぉーーーーーーーーーーーーーー!!!」
何故か逢坂が部室にやってきた。
「僕が連絡しておいたんです」
貴様か・・・、パシリの分際で余計なことしやがって!!・・・まぁいいや、俺もムシャクシャしていたところだ。ここで逢坂をボコれば俺の気も休まるか。ちなみに逢坂の傷は完治しているので、サンドバックとして優秀な働きをしてくれるだろう。
俺は額に貼られた紙を取り外し、殴りかかってくる逢坂に足刀蹴りを決める。
「ぐっ、がは・・・」
無様に床に横たえる逢坂。靴を履いたまま侵入してきていたので、逢坂の体を肩に担ぎ、そのまま部室の外に放り投げる。
「ごはっ!!」
さらに呻く逢坂。あまりやり過ぎると飯塚さんに怒られるので、
「次、ケンカを売ってきたら殺すからな」
と、釘を刺すだけで留めてやった。優しいな、ノーベル平和賞を獲れてしまいそうなほどだな、うん。
「あっ、そうだ」
俺はあることを思い出して、悶絶している逢坂に近付いて耳打ちする。
「部長のパンツの写真が手に入った」
「何だと!!?」
「五月蝿いから黙れ。来週の金曜日、その写真を売ってやるから部室前に来い。分かったな」
「くっ、良いだろう・・・。その代り、また僕を陥れるような事をすれば、・・・絶対に殺すからな」
「分かったよ、分かりましたよ。これからはビジネスパートナーとして頑張っていきましょうか」
俺は逢坂の手を引っ張って立たせてやる。が、そのまま逢坂が膝蹴りを放ちやがった。完全に油断していたため躱し切れない。
「この僕をこんな目に会わせてくれたんだ。これぐらいはいいだろう」
「ぎ、クソが・・・」
逢坂が成長してきやがった。一生モノの傷を残してやりたかったが、みんなの前でそれはキツイ。
「逢坂、今度会うときは覚悟しとけよ」
「闇討ちはもう効かないからな」
やっぱり俺に慣れてきているんだな。はぁ・・・、面倒だなぁ・・・。
「では、さらばだ!!」
逢坂が偉そうに屋上から出ていこうとする。俺は、背後を見せた逢坂にドロップキックをかましてから部室に戻り、すぐさま鍵を閉める。
「おい!この下衆野郎が!!」
逢坂が、部室のドアを『ドンドン』と叩くいて喚く。
「五月蝿い黙れ。闇討ちに会ってんじゃねェか」
「くっ、油断しただけだ!!正々堂々と勝負しろ!!!」
逢坂がキャンキャン吠える。
「俺は真正面から戦いたくないんだよ。そもそも俺が好きなのは殲滅であって喧嘩じゃない」
「今度の金曜日!!覚悟しておけ!!!」
「はぁ、やっと立ち去ったか・・・。金曜は来ないでおこう」
「外道は本当にセコイのぉ」
「戦略的撤退と言ってくれ」




