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腐れたちの学園生活  作者: 馬鹿面
33/41

コアラ

 木曜日のこと。

 「こんにちはっ!みかちゃん!外道君!」

 「こんにちは・・・」

 「こなみさん、こんにちは!」

 飯塚さんが部室にやってきた。聞いただけではいつもの文芸部。しかし、目視すれば明らかに違うことがあった。

 「なぁ部長、なんで俺に抱き着いてるんだ?」

 放課後になり、俺が部室に着くと、いきなり部長がオンブされるようにして抱き着いてきた。俺が動いてもそのまま引っ付いてくるし、離そうとしても意地でも離れない。思いっきり密着しているため、部長の体温が、心拍が、柔らかさ等が全て伝わってくる。

 「最近は外道と一緒にいなかったから・・・」

 「出会って一か月も経ってないけど?」

 「私には外道が必要だ。会えない日はいつも胸が苦しい」

 それは告白だと思っても構わないですか?

 「ふふっ!二人とも仲良いよね」

 「これは明らかに一方的ですよね・・・」

 とはいえこんな体験は満更でもない。こんな美少女に抱き着いてもらえて、しかもそれが長い間。逢坂に見られれば『殺す・・・!!』とか言われそうだよな、とか思いながら部長をきつく抱きしめかえす(肋骨が折れるほど)。もう慣れられたのか部長が離す気配は無い。噛み殺したい。

 「部長、一緒にベットに入るか?」

 「一緒に昼寝する!」

 嫌がれよ・・・。

 「ならさ、一緒にゲームでもするか?」

 「うん!」

 世話のかかる娘が出来たみたいだ・・・、面倒くさい。


 とりあえず格闘ゲームで部長をボコボコにする(部長はずっと抱きついたまま首を捻ってやっていた)。十数連敗した頃に半泣きになり、三十連敗もすると俺の胸で泣きだした。泣かした張本人が泣かされた側を慰めるという意味が分からない状況に陥りながらも、俺はどうやって部長を引き離すかをずっと考えていた。本来であれば、こうして抱きつかれているというのは本望だ。しかし・・・。

 「トイレに行きたいんだけど・・・」

 俺はしばらくの間我慢していた。もう限界に近い。かといってこのまま部長を連れたまま行くわけにもいかない。変な噂が立つし、なにより女性に抱き着かれたまま小便をするというのはいささかどころじゃないほどに問題がある。

 「そうやって逃げようとしても無駄だ」

 部長がさらに強く抱きしめてくる。あまり圧迫するな!も、漏れる・・・。

 「漏らすぞ!早く離れろ!!」

 「なら一緒に行けばいいだろう」

 「無理に決まってんだろ!!!」

 クソッ・・・!この俺がこれほどまでに取り乱すことになろうとは・・・。せめて和音が居てくれたらどうにかなったろうが、今日は剣道なんざにに行っているため来ない。蹴り殺すぞぉ!!!

 「とにかく行くか!!」

 もう人目を気にせずに行くしかない。噂なら、ポニーテールの眼鏡っ子にでももみ消してもらおう、元々そのために友達になったわけだしな。

 「へっ!?何あれ・・・」

 屋上から5階に駆け降りると、さっそく学内に散らばって個人練習をしていたらしき、オカッパ吹奏楽部員に発見された。トイレは目の前だったが、他人に見られたまま男子トイレに部長を連れていくのはさすがにヤバい。

 「クソガァ!!!」

 俺は絶叫しながらそのまま4階へ降りる。各階にトイレがあることに感謝しながら、4階の男子トイレに入ったが・・・、

 「フンフフンフーン♪」

 軽く鼻歌を歌いながら、放尿しているテンパのキモ男がいた。

 「?」

 こちらを振り返ってこられる前に、俺たちは男子トイレから猛ダッシュで遠ざかる。

 「クソッ、何なんだよぉ!!!」

 俺は更なる絶叫をしながら3階へ降りる。走るたびに膀胱が悲鳴をあげる。しかも、本気で走れば走るほど、部長が離されまいと強く抱きしめてくる。本気でヤバい、漏れる・・・。

 「何だ・・・、と?・・・」

 3階トイレには、包帯ぐるぐる巻きの逢坂が居た。ただたんに携帯をいじっているだけのようだったので、部長を抱き抱えたまま飛び蹴りを食らわせて黙らせる。

 「えっと・・・、今から小便をするんだけど・・・」

 「すればいいだろう?」

 どうやってしろと!!?女の子を抱き抱えたまま小便をする奴なんて、前代未聞の大珍事だぞ!!そういえば昨日、俺が小便しているところに二葉さんが乱入!という珍事があったな・・・。そう思えば大した事は無いのかも。

 「・・・んな訳ないよな・・・」

 狂った自分の感性に苦笑いを浮かべながら、女の子に抱きつかれたまま用を足す、という快挙を成し遂げた。

 「なぁ外道、私もトイレしたい」

 「なら俺から離れていけよ」

 「嫌だ、このまま行く。行かせてもらえなかったら漏らすからな」

 「行きゃあいいんでしょ!行きゃあ!!」

 もうこうなったらヤケクソだ。何でも来いや!おいゴラァァァーーーーーーーーー!!





 「お帰り。何だか疲れてるみたいだけど大丈夫?」

 「あ、あはは・・・。大丈夫に見えますか?・・・」

 「何かごめん・・・」

 当の部長は、俺に抱きついたまま頬擦りなんかをしている。柔らかいよ、柔らかいけどさぁ・・・。

 「外道、私と一緒に昼寝をしよう」

 「無理に決まってんだろ・・・」

 「外道君ってそういうところだけはしっかりしてるよねぇ」

 だけは、ですか・・・。否定できない自分が辛い。

 

 「先輩!この鳥居がやって来ましたよ!!さぁて、その三ヶ原さんとはどういったご関係で!?」

 

 記者根性丸出しの鳥居がドアを開けて入ってきた。

 「あの少ない目撃者だけでよくもまぁこんな短時間にやって来れるな」

 俺は部長の肩ごしにチョップを繰り出しながら称賛の言葉を述べる。

 「相変わらず痛いです・・・。どうして結構本気でやるんですかぁ?」

 「相手の痛がっている様子が好きだからだ」

 「相変わらず最低ですね!」

 「ありがとうっ!」

 鳥居は、かけている黒ぶち眼鏡を押し上げて、奥にある鋭い目をキラーンと輝かせる。

 「で、お二人の関係は?一緒にトイレに入っていった、との情報が入っているのですけれど!!」

 「なんでもねぇよ、勝手に部長が男子トイレまで付いてきただけだ」

 「外道も付いてきてくれただろう?女子トイレに」

 「本当ですか!!?・・・これは大スクープです!!今すぐ記事を書かなければ!」

 目を輝かせたまま、部室を出ていこうとする鳥居の肩を掴んで引き留める。

 「その記事は改竄かいざんしろ」

 「どういうことですか?」

 足踏みをしながらも話は聞いてくれる。

 「この件は、奇跡的に目撃者は殆どいない。つまりだ、改竄しようと思えばいくらでも出来る。だから、改竄してこの事を闇に葬る。ついでに誰かに罪を擦り付けてな」

 「流石です!よっ、屑野郎!!」

 「ありがとうっ!ってグハッ!!」

 何故か部長が俺を殴ってきた。プクッと頬を膨らませているの顔がとてつもなく可愛いかったので、殺人衝動を抑えるのにに一苦労だった。





 『号外!!女子トイレに乱入!謎の包帯男!!

 先日の放課後、女生徒が用をたそうをトイレに寄った際、包帯を体中に巻いた男が小型カメラを設置していたのこと。見つかってすぐに逃げ出したそうだが、その生徒は1年□組の『おう〇か きみひ△』と見られ、先日、女生徒のエロ写真を所持していたという問題も起こしている。女生徒の皆さん、この男には注意しましょう』

 その包帯男は周りからの軽蔑の視線に堪えながらこう呟く。

 「外道だな。殺す、殺してやる・・・。この僕を敵に回したこと、存分に後悔させてやる!!」

 その男は笑っていた。量り知れない憎悪を湛えて。

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