カノンと会話
現在、二葉さんと部長は訳あって寝こんでいる。なんとなくカノンと一緒に晩ごはん代わりの食パンをかじりながら、俺の悪行のせいで気まずくなった雰囲気を壊すために話しかけてみる。
「いやぁ、今日は楽しかったな!」
「何処に楽しい要素が在ったのよ・・・」
やっぱりな。俺が楽しい時、大体他人は楽しくない。
「ホント、ワタシが吐いたオレンジジュースにワタシの顔を突っ込むとか最低よね」
ここで「ありがとう」とか言ったら殺されそうだったので、
「ご、ごめんなさい・・・」
と言わざるをえなかった。実際に、俺はカノンに顔面をボコボコにされたあげく、その拍子に見えたパンツを写メってしまい、つい先日買い替えたばかりの携帯をヒールで踏み潰された。これは俺が悪いんじゃない!カノンがティーバッグなんかはいてるのがいけないんだ!!なんて当然言えるわけもなく、俺は無駄にフワフワモチモチの食パンをオレンジジュース浸す。
「ブタもお兄ちゃんと友達になろうなんて変わってるわよね」
ん?俺は違和感を覚えて考える。別にカノンの言ったことが気に食わなかったわけではない。部長が俺と友達になってくれたのも自分で言うのもなんだが可笑しいとは思っている。
「なぁカノン。なんで今日はお兄ちゃんって呼んでくれなかったんだ?」
この家に引っ越した時から、カノンは俺のことをお兄ちゃんと呼んでくれていたはずだ。大体はあんただし、引っ越して一週間しか経っていないのもあって、司郎と呼ばれてもあまり違和感は感じていなかった。
モジモジしてなかなかカノンが話してくれなさそうだったのでもう一度。
「なんで今日はお兄ちゃんって呼んでくれなかったんだ?」
今度は金色の髪で作った縦ロールを人差し指でいじりながらも返してくれる。
「その、恥ずかしかったから・・・。ワタシは、あんまりそういうキャラじゃないし・・・」
キャラねぇ・・・、そもそも他人との関わりの薄い俺とは縁の遠い話だ。
「俺のことをお兄ちゃんて呼ばければいいんじゃないか?別に司郎でも構わないし」
「それはなんとなくイヤ。せっかく出来た兄なのに・・・」
俺は兄として認識されているのか?こんなことは初めてだ。これまでに十人ちかくの義妹がいたが、その全てに嫌われ怖がられて・・・。最終的には、俺が家に居るとき、義妹が部屋から出てきてくれない、という悲しい出来事が続いていた。
「俺のことを兄と見ていてくれたことは助かる。だけどな、俺はお前の実の兄じゃない。結婚しようと思えば出来るしな」
「な、何をいきなり言ってるのよ!!ワタシは14よ!!!」
プロポーズかなにかと勘違いされたのか?
「まぁ俺が言いたかったのはだな、他人を枠に入れて見なくてもいいんじゃないか、という話だ」
「枠に入れる?」
「そうだ。俺はお前の兄である前に他人だ。血も繋がってなければ、幼馴染みでもない。だから気にするな。俺は司郎でいい」
「でも・・・」
「でもじゃない、いちいち我慢するな。カビが生えるぞ」
俺は、オレンジジュースに浸りすぎて半液体と化した食パンを頬張る。両方とも素材が良いからかなり上手い、誰でも良いから殺したくなってくるほどに腹立たしい。
「えーっと、それじゃあ司郎でいいの?」
「ああ、もしくはダーリンでもいいぞ」
「・・・なんだか二葉さんみたい・・・」
二葉さんの方を変えてやろう。俺は面倒なので変わりたくない。




