お宅訪問
「ご主人様、友達とはそのメス豚のことだったのですね。このメス豚が」
リムジンを運転する二葉さんが部長を罵る。
「ふん、ただの駄犬に言われたくないな。この駄犬が」
人見知りの部長が二葉さんを罵る。
かなり雰囲気が悪いが、このドロドロした感じが楽しそうだ。放置しよう。
現在は土曜日。この間部長を家に招くと約束したので連れてきた。二葉さんは部長が気にくわないみたいだし、部長は極度の顔見知りのせいで態度が悪い。終始リムジンの空気は悪いままに大王邸へと到着した。
「さっさと降りやがれ、このメス豚」
「さっさと降りますよ、この駄犬」
仲悪いな。犬猿の仲ってやつか・・・、いや犬豚の仲か。まぁなんとなく写メっておく。
「いちいちいがみ合わないでください。どうせなら殴り合いの喧嘩でもしといてください。その様子を録画して売りますから」
「外道はそんなことまでしてるのか・・・」
美女二人の殴り合い、なかなか高く売れそうだ。
「ご主人様の頼みとあれば・・・」
「いや、やらなくていいから・・・」
そこは部長が止める。せっかくいい画が撮れそうだったのに。
「とりあえず入りましょう」
俺は睨み合っている二人を放置しながら応接間に入る。そこには豪奢な赤いドレスを着たカノンが、退屈そうに200万円もするぼったくりな長机に肘をつきながら、30万円もするぼったくりな椅子に腰掛けていた。このぼんぼんが!俺は俺用に用意された1000円の普通な椅子に座る。
「なんであんたはそんなのに座るの?こっちの方が絶対いいに決まってるのに」
「黙れ、庶民にはこっちの方がいいんだよ。椅子なんて座れりゃ十分だ」
「部屋も端っこしか使ってないし、家具なんて頼めば買ってくれるわよ」
「部室を作ってもらったから十分だ。それ以上やると次の家で支障がでる」
俺はこれまでずっと肩身の狭い生活をしてきたんだ、いきなり豪勢なことをすれば戻れなくなる。俺だってずっとこの家にいるわけじゃない。まだ次の家は決まってないが、しばらくすれば決まるだろう。次の家に移った時に金持ち癖がついていると何かと面倒くさい、面倒なのは嫌いだ。
「別に金持ちに感覚になってもいいじゃない。・・・ずっとこの家にいるんだしぃ!」
「はぁ!?・・・それってずっと俺を養ってくれる、ってことか・・・。Let's夢のひも生活!」
「ほんっと最低ね・・・」
「ありがとう!」
なんとなくカノンと会話していると、殴り合ってはいないが掴み合っている豚と犬がやってきた。
「私はご主人様の性奴隷です!」
「私は外道の友達だ!・・・というか、せいどれい?」
性奴隷の意味を分かっていない部長が首を傾げる。知らなくていいことなので教えない。
「カノン、二葉さんとじゃれあってるのが俺の友達の部長だ」
「ど、どうも!よろしく・・・」
部長がぎこちなく挨拶する。冷たくつけ離さなっかだけでも良しとしよう。
「司郎、この女は何なの?てっきり友達って男だと思ってたんだけど・・・」
「俺に男の友達はいないからな」
「なんか、ごめん・・・」
謝られてもな・・・。
「ご主人様、このメスブタを始末してもよろしいでしょうか」
「始末するな。こいつは俺の玩具だからな」
「私は玩具なのか!?」
何を当たり前のことを言っている。
「私も玩具です。ですのでめちゃくちゃにしてください」
「しないから・・・」
なんだか面倒になってきた。二葉さんを縄で縛って部屋の隅に放置する。
「ご、ご主人様!これは放置プレイですね、緊縛プレイですね!」
これでも五月蝿いな。でも、まだ付きまとってこないだけでもマシか。
「司郎。あんたの友達美人なんだけど・・・、どういうこと?」
「どういうことって・・・、まぁ、そもそも部長と友達になったのも顔が良かったからだしな」
「私は顔が良いのか!!?」
何故か部長が食いついてきた。うざかったのでスルーする。
「なぁ、私は可愛いのか?美人なのか?」
しつこいな、自分で分かって言ってるだろ。殴り殺すぞ。
「可愛いから黙れ」
「私は可愛いんだな!!・・・よし!」
何がよし、だ。蹴り殺すぞ。
「ずいぶんと仲が良さそうね・・・、二人は付き合ってるの?」
カノンが図太い態度で聞いてくる。肘をついたままなのでよけいに腹が立つ。
「外道とは、その・・・、まだというか、なんというか・・・」
「部長は喋るな・・・。えっと、俺と部長は付き合ってない。そもそも友達になって間もないし、俺が部長の友達になってやってる、って感じだしな」
「ふぅん、まぁいっか」
カノンは『カツッ』とヒール(室内用)の音を立てて立ちあがると、偉そうな歩き方で部長に近付く。
「今日は泊まっていくのよね」
「へっ?はぁ、まぁ・・・。ここは遠いし・・・」
「なら、今日はワタシの部屋を使っていいわよ。別に構わないから」
「なら貴女は何処に?」
「適当な部屋で寝るわ。使ってない部屋もいっぱいあるのよ」
「そうか、ならそうさせてもらおう」
なんだか分からないが、とりあえず話は決まったみたいだ。
「三人でゲームでもやるか?」
「ああ!」
「そうね、たまにはそういった子供の遊びも良いわね」
「ゲームを舐めるな、最近は大人の方が多かったりするんだぞ」
俺たちは巨大なスクリーンがある娯楽室へと向かう。何か忘れているような気がするが、きっと何かの間違いだろう。
「ご主人様、私も混ぜてください・・・」
応接間の角に一人残された二葉さんが、今にも消え入りそうな声でぼそっと呟いた。




