部長の憂鬱
今回は部長目線です。
私は1組から順に、ゆっくりと歩く。もともと自分からは絶対に話しかけれないと分かっていたので、ハナから他力本願、話しかけてもらうのを待っていた。
「外道は何処にいるんだ?」
既に何人かに声をかけられて、その全てを無駄にしてしまった。私の心はズタズタだ。外道に胸で癒してもらいたい。
「逢坂をコテンパンにした気分はどうだった?アイツは入学したときから気に食わなかったんだよ」
一見チャラそうな男が言ってくる。
「逢坂がモテるからだろ?」
私の代わりに眼鏡をかけた男が返事をする。
「しょうがねぇだろーがー。でも、これでアイツのファンが俺に付いて・・・」
「いや、ありえないから。鏡見てから言え」
「サトシ君がひどいよ!」
ワキャワキャ。大体いつもこんな感じだ。私をきっかけにして自分達だけで会話をする。ああゆう奴らは相手のことなど考えず、自分達さえ良ければいいのだろう。
もう諦めてしまおうか、どうせ私は友達を作れない。小学生の頃には親友と呼べる人もいた。どうやって作ったのかなんて全く覚えていない。覚えていたところで何も出来ない。もう私は高校生だ、小学生の常識は通用しない。
クソッ、クソッ・・・、私はどうすればいい?何も出来ない。私は無力だ。誰かの力にすがるしかない。すがる事すら出来ない・・・。
私の心の支えは外道だ。外道が居なけば、きっと私は誰とも関わらない、腐りきった生活を送り続けていただろう。でも、外道は居る。私は変わったはずだ。人と触れ合って、人の温もりを感じ、人の優しさを知った。
『諦めるな!ダメだと思ってもやることに意味がある』
父の言葉だ。その父は死んでしまった。母も父が死んだことで脱け殻のようになってしまった。そして私も。だからこそ頑張る。いつまでも引きずっていてはいけない。父に責任を擦り付けてはいけない。
「頑張ってみるか!」
私はゆっくりと、だが確実に歩き出す。
「ふにゃ~、ダメだった・・・。もう終わった。貝になりたい・・・」
私は部室に着くやいなや机に突っ伏す。結局友達は出来なかった。もう外道たちと遊びに行くという夢は泡となって消えた。
「でも、まぁいいか!」
何も収穫が無かったわけではない。友達はできなかったが、会話をすることは出来た。文芸部員以外とまとも話したのは久しぶりだ。私も変わってきたんだ!
「おう、部長。なんだ?友達でもできたのか?」
外道が部室に入ってくる。
「できはしなかったが・・・、どうしたんだ?顔が凄いことになってるぞ」
外道の顔は、腫れてないところを探す方が難しいくらいにボコボコだった。
「ああ・・・、まぁ集団リンチにあってな・・・」
外道は恨みを買いまくってるだろうからな。大して驚きはしない。
「先生と生徒会長と・・・、誰だっけ?」
一人忘れられたのか・・・、可哀そうに。
「そんなことより!私は他人と会話が出来たぞ!!外道が頭を撫でてくれ」
「俺がやるのか?俺はボコボコだぞ」
それは関係あるのか?
「早くしてくれ、外道に撫でてもらえば頑張れる気がするんだ!」
「あぁ・・・、分かったよ」
渋々といった感じだったが頭を撫でてくれる。意外と優しく撫でてくれた。
外道は本当に優しい。なんだかんだ言っても私の言うことを聴いてくれるし、なにより包容力がある。良いお父さんになりそうだ。
「外道との子供が欲しい!」
「黙れ」
「痛い!!なんでチョップをするんだ!?」
「子供が欲しいなんて言ってると勘違いされるぞ。俺は何度もそれで痛い目を見てきたから違うと分かるけど」
何が違うんだ?私は外道の子供が欲しいだけだぞ。
「おはよう、三ケ原さん!・・・・あと、外道君?」
「やっぱりそうなりますよね・・・。明日生徒会長に会ったら『殺すぞ』と伝えといてください」
「えっ!?どうしてしまちゃんが出てくるの?」
会話の内容はよく分からないが、生徒会長が外道をリンチした一人であるらしい。外道を目の敵にしていたし仕方がないのかもしれない。
私は自分から話しかけられない。誰かに話しかけてもらうまでは小説を書く。文化祭に書いたものの売上げはそこそこなそうで、すでに60冊も売れた。こなみさんと馬骨も面白いと言ってくれたし。
「期待してもらえるなら頑張らなければ」
今書いているのは、殺人犯が逃亡中に人の優しさに触れて変わっていく、というストーリーだ。犯罪のことについては外道がよく知っているので書きやすい。
「皆の者、こんにちはじゃ!」
鎧を着た馬骨がやってくる。
「おぉ和音、今は格ゲーやってるけど鎧脱いだら一緒にやるか?」
「やるぞ!今日のわしは指捌きは冴えておるから覚悟しておくのじゃな」
「ゲームで負けたらリアルで泣かすから大丈夫だ」
「大丈夫じゃないじゃろ!」
外道と和音がじゃれ合う。あの二人は本当に仲がいい。一緒にマンガを読んだり、一緒に昼寝したり、一緒にゲームしたり、一緒にチャンバラしたり、一緒に・・・・・。私も外道と一緒に遊びたい。馬骨と呼んでいるのもただの負け惜しみなのかもしれない。
「和音ちゃん!私も混ぜて!!」
「わっ!なんじゃ!?わしに抱きつくでない!!それにこれは二人プレイじゃ。だから一緒には出来んぞ!」
「なら外道君、代わって!」
「いいですよ。でも俺もやりたいので、交代しながらやりましょう」
「そうだね!って、なんで私のスカートの中を撮ってるの!!」
「エロい体勢になってたので」
「外道君・・・、きもいよ・・・」
「せめて下衆と言ってください」
こなみさんは馬骨が大好きだ。馬骨が来ないときはずっと絵を描いているが、来ると馬骨にベタベタする。それの副産物でもあるが、こなみさんは外道とよく話す。私にもよく話しかけてくれるが、外道との方が話している。
私はこの部の中で一番浮いている。自分から話しかけないのが原因だと分かってはいる。話しかければきっと話をしてくれるし、遊ぼうと言えば遊んでくれるはずだ。どうしてもそれが出来ない。今まで心を閉ざしてきたのだ、すぐに積極的になれと言われてもなれるはずがない。でも・・・、
「私も混ぜてくれないか?その・・・、一緒に遊びたい!」
すぐは無理でも少しずつなら変われる。私は意を決して話しかけてみる。
「珍しいの、部長の方から言ってくるとは」
「三ケ原さんも一緒にやろっ!」
「それじゃあ負けた人が次の人に変わるってことで。・・・あぁ、三連勝しても交代な」
やっぱり迎え入れてくれた。この三人は優しい。中学時代にいてくれたらな、とも思ってしまうが、思ってみたところで過去が変わるわけではない。今、こうして私のそばにいてくれることを神様に感謝しよう。ありがとうございます。
「っ!外道!!何をしている!!」
外道がパンツを撮ってきていた。顔がちょうど真下にあったので踏みつける。
「ごふっ」
「携帯を渡せ!!」
外道から携帯を奪い取る。もう面倒くさかったので力強く地面に叩きつけて割る。
「くっ・・・、俺の、俺の携帯がぁ・・・!」
「まぁ自業自得というやつじゃのう。観念せい」
「まぁいいか、最近は生活のためじゃなくて趣味だったしな」
「趣味でこんなことしてたの・・・、最低だね・・・」
「ありがとうございます」
私はこれからもこの人たちと一緒にいたい。私の居て良い場所なんだ、と思えるから。




