文化祭3
俺は和音と一緒に文化祭を回ることにした。
「それにしても驚いたのぉ。カシャっと音がしたから起きてみれば、おぬしがわしの股の間をカメラで撮っておったからのぉ」
「すまんすまん、つい癖で」
「それが癖とはかなり重症じゃな」
俺と和音は意外と仲良くなった。
「外道、おぬしのクラスは何をやっておる?ぜひとも見てみたいのじゃ」
「あぁ、いいぞ」
部長と一緒にもう見たし編集も俺がやったのでかなり見飽きていたが、隣で興奮しながら見てくれている和音を見ていると、何だかこみあげてくるものがある。
「ふぅ、面白かった!実にいい仕事をしておるの、外道!」
「まあな・・・」
素直に褒められたのはいつ振りだろうか。本当に和音はいい子だ。何故いままで友達がいなかったのかが分からない。
「次は何処に行くんじゃ?」
「んーと、その前に鎧、脱ごうか」
周りからの視線が熱い。武士のような格好をした美少女だ。そりゃ大体の人は「誰、あれ」ってなるだろう。
「わしは脱がぬぞ、それよりお面はないのか?その・・・恥ずかしいのじゃが」
お面をつけて歩いている方が恥ずかしいだろう。いったいこの子の親はどんな教育をしてきたんだ?
「お前のパンツの写真、ばら撒くぞ」
「なっ!そういえば消去してもらうのを忘れておった!!」
俺は和音を脅す。
「わしが鎧を脱げば・・・その写真、消してくれるかの?」
おぉ、上目使いだ!部長とは身長が変わらないから上目使いはされたことがない。
「・・・まぁしょうがないか。消してやる」
1枚の写真の儲けなど大したことはない。俺は和音の出した条件をのむ。
「なら、脱ぐぞ・・・」
ただ鎧を脱ぐだけなのに妙に緊張してしまう。
「脱いだはいいが、この鎧はどうするのじゃ?」
「職員室にでも鎧を預けてくればいいんじゃないのか?」
「ふむ、そうしよう。外道もついてきてくれ」
日本刀だけは取ってくれなかったが、鎧を脱いだ和音は想像以上に可愛かった。きしゃな肩に細い腕、ショートカットの綺麗な黒髪。こうして見ると、やはりどことなく部長に似ている。今度、部長に紹介して友達になってもらうとしよう。こう似ていれば部長も親近感ぐらいは持ってくれるんじゃないだろうか。
「ここが外道の部の場所か」
和音の鎧を五十嵐先生に預けた後、俺たちは文芸部の展示スペースに来ていた。
「わーっ、たくさんの絵じゃ。どれもうまいのぉ」
飯塚さんに聞かせればきっと喜んでくれるに違いない。
「外道の描いた絵はどれじゃ?」
「俺は絵を描いてないんだ。像を作ったんだけど・・・!?」
俺の像がおかしなことになっていた。
「な、なぜ顔がない!」
恍惚な笑みを浮かべた、部長そっくりな像の顔が無い!!首から上が切断されてなくなっていた。
「どうしたんじゃ?」
くそっ、部長の仕業か・・・。これじゃあ逢坂に売れねぇじゃねえか!
「・・・だけどこれが普通か」
考えてみれば、これは普通の反応だ。俺が部長の行動をとやかく言えたものではない。
「はぁ、収入ゼロか・・・」
「この顔の無いのが外道の作った像か?」
「ああ、そうだけど・・・」
和音は笑みを浮かべると、
「うまいな!グロイけど」
と言ってくれる。あぁ、和音ちゃん超いい子だな!俺の荒んだ心が癒されていくようだ。
「げ、外道!な、なんなんだ!?その、お、女の子は!!」
ドアのところに部長が立っていた。
「ん、誰じゃ?この女子は」
「こいつは俺が所属している部の部長だ」
「おい外道!!この子とはどういう関係だ!?」
部長が喚き散らす。うるさいな、いちいち大声で叫ばなくてもいいだろうに。
「こいつは本多和音。俺の初めての友達だ」
「と、友達・・・」
呆然とした顔になる部長。まさにポカーンという表現が似合う。
「おい外道、部長とおぬしは付き合っておるのか?」
「付き合ってない。俺と部長はこれから友達になる予定の間柄だ」
「うむ、よく分からんが分かったぞ」
B程度の胸の前で腕を組み、首を縦に振る和音。
「私ですらまだ友達になれてないのに・・・。なぜ、こんなロリが外道と友達になれる!?」
「わしはロリというものではない!来年で高校生じゃぞ!!」
和音って中三なんだな。いつも鎧を着ているせいで背が縮んでんじゃないのか。
「まぁまぁ二人とも落ち着けって。部長、和音とはお前のために友達になったんだ」
「へっ?」
部長が素っ頓狂な声を出す。もちろん嘘っぱちだ、俺が友達が欲しかったから作っただけだ。
「よーく見てみろ。和音はどことなく部長に似てないか?」
「た、確かに・・・」
部長が頷く。
「だから部長と和音で、姉妹みたいに仲良くなれるんじゃないかと思ったんだ」
「外道・・・私の為に・・・グスッ」
ナイスアドリブ!適当に言っただけでこの場を和ませれたぞ。俺の対人スキルもかなりのものになってきたな。
「外道!お前ってやつは、お前ってやつはぁ!!」
部長が涙を流しながら抱き着いてくる。
「おお、やっぱり付き合っておるのか!付き合っておるのだな!!」
和音に勘違いされたが、俺は何も言わずに部長を抱き返す。
「外道、もうちょっと優しく、って痛い痛い!!強すぎだ!!私の肋骨を折る気か!!」
「そのつもりですけど何か?」
「離せ!離せぇ!!」
俺は部長を離してやる。
「がはっ!」
部長が倒れるように座り込む。俺は息を整えている部長の前に手を差し出し、
「部長、俺と友達にならないか?」
と言ってみる。
「ぜえぜえ、いい・・・のか?」
「俺たちはもうほとんど友達みたいなものだからな。今更って感じもあるが」
部長が目を輝かせる。
「それじゃあ、さっきの熱い抱擁は照れ隠しか!?」
「なわけねぇだろ、あれは像を壊された腹いせだ」
「それは外道の責任だろ!私にそっくりな像なんか作って!!」
「その像は愛の形というものかの!?」
「違う!!」
和音の言葉に部長が否定する。そこは俺が否定するところじゃないか?
「とりあえず、ほら」
俺は差し出した手を、さらに部長に近付ける。
「ああ、これからは友達だな!!」
部長が笑いながら俺の手をしっかりと掴んで立ち上がる。部長の笑顔は俺のとは違ってとてつもなく可愛い。手首を捻り潰すぞ。
「これからは友達として、私と仲良くなってくれ!」
部長が俺の手を強く握ってくる。
「ああ、分かったから手を放してくれ」
これまで青春とは真逆の場所にいたので、なんだかこういうのはむず痒い。
「このまま恋人同士になればよいのではないか!?」
「ま、まだ私たちはそういんじゃない!!」
「まだ、とな。つまりは先にはあるということかの!?」
「ち、違うぞ!!それは口が滑っただけだ!!」
部長と和音はもうすっかり仲良くなったようだ。
「姉妹みたいだな」
俺は微笑む。
「・・・外道、笑うな!!お前の笑顔は人を殺せる・・・」
そんなに俺の笑顔は怖いのか・・・。
そんなこんなで文化祭が終了した。




