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第三章 「禍つ尾」

―幻の町~中央街ノーレラス間の街道―


「それにしても、あの悪魔達の目的は何なんだろうな?」

 グルナという悪魔が作り出した幻の町を出て、昼食も済ませた後、ジークは歩きながら隣を歩くカレハに向かって言った。

「初めのパテルでの事件は無差別だったみたいだが、昨日の幻の町での襲撃は、明らかにオレ達三人を狙ってた」

「……まあ、アタシ達『リィト』はこうして悪魔の動きを探ってるんだから、あいつらにとってはいろいろと邪魔なんだろうな」

 カレハは一考して、答えた。

 カレハの言う通りだった。しばらく前、スピルナ公国に悪魔が入り込んだことをいち早く知ったリィトのリーダーは、その動きを監視するという命令をリィト全員に発していた。

「そういえば、オレが初めにパテルに向かってたのは、テグレスに言われたからだったな。あれはメトネスがパテルに攻め入るのを知ってたからなのか。あのババア本当に何でも知ってるんだな」

 ジークは思い出したように言った。

「まあ、あんなんでも『預言者』だからな」

 カレハは笑って言った。

「あんなんって何だよ。仮にもリィトのリーダーだぜ」

 ジークは呆れたように言った。

 そう、テグレスとは、リィト達をまとめるリーダー的存在の老婆だ。スピルナ公国の東に位置するゾド山脈の中の緑龍峠に住んでいて、世の理を見通す『預言者』でもある。

「自分もババア呼ばわりしてるくせに何言ってんだよ」

 カレハはそう言ってまた笑った。しかし、ふと思い出したように言った。

「そういえばジーク、お前はレイアークに着いた後どうするんだ?」

「ああ、そう言えばまだ決めてなかったな」

 ジークはそう言って数歩後ろを歩いていたスゥに振り向いて尋ねた。

「なあ、スゥ、どこか行きたい所あるか?」

「ジークさんの居るところ!」

 スゥは即答した。

「いや、そういう意味じゃなくて……」

 ジークは呆れた声で言った。

「ま、しょうがない、そのことはレイアークに着いてから決めることにしようぜ」

「お前、そんなことでリィト(旅人)として大丈夫なのか?」

 今度はカレハが呆れたように言った。

「何言ってんだよ。リィトだからこそ、自由気ままに旅してるんじゃねえか」

 ジークはさも当たり前のように言う。変に筋が通っているだけに反論しづらい。

「ところで、そういうカレハはどうするんだよ」

 と逆にジークが聞く。

「アタシは東に向かうぜ。テグレスに幻の町の事も報告しなきゃなんねえみてえだし、ちょっと東の方に野暮用もできたしな」

 カレハが答える。

「それじゃ、もうカレハさんに会えなくなるんですか?」

 そこでスゥが少し寂しそうに口を挟んだ。

「大丈夫大丈夫、互いがリィトである以上、またそのうちどっかで会えるからよ!」

 カレハは明るい声でそう励ました。

「それに、別れることになるレイアークまではまだ時間があるんだから、先のことで悩むのはやめようぜ、な」

 カレハはそう言ってスゥの頭を撫でた。それでもスゥが浮かない顔をしているのを見て、カレハはスゥに近寄ってジークに聞こえないように耳打ちした。

「それに、アタシがいなくなったらまたジークと二人っきりになれるんだぜ」

 それを聞いたスゥは一気に尖り耳の先まで赤面した。

「今何言ったんだ、カレハ?」

 ジークが気になって尋ねたが、カレハはニヤニヤして言った。

「ジークみたいなデクの坊にはわかんない話だよ」

「……悪かったな、デクの坊で」

「否定しないのかよ……」

 カレハはジークの意外な反応に内心驚いていた。ジークのあの性格からして、いつものように反論するかと思ったのだが。今までスゥの事ばかり気にかけていたが、もしかしたら、この二人の出会いがきっかけで変わり始めているのはスゥだけではないのかもしれない。

「どうしたんだ?」

 ジークにそう聞かれて、カレハは自分がすっかり考え込んでいた事に気づかされた。

「あ、いや、何でもねえよ」

 カレハがそう答えると、ジークは素直にそうか、と呟いた。ホント、ジークが鈍感で良かった。とカレハは思う。

「そう言えば、スゥ」

 思い付いたようにジークが話を変えた。

「なあに?」

「幻の町でお前が吹いたあの曲、今でも吹けるのか?」

「え……と、どうかな……」

 スゥは困ったように言い淀んだ。

「あの時は必死だったから、あんまり覚えてなくて……たぶん、今はムリ……」

 スゥはだんだんと申し訳なさそうな口調になっていた。スゥのオカリナの持つ魔を祓う力は、今後悪魔と戦うことになった時も役立つかもしれない。だからスゥは、次は同じようには吹けないかもしれないという事を負い目に感じ始めているのだ。

「そうか。いや、いいんだ。ちょっと気になっただけだからよ」

 フォローするようにそう言いつつ、ジークは頭では別のことを考えていた。

 それは、自分の非力さについてだった。

 自分は弱い。その思いが、ジークの心を占めていた。もしスゥの助けがなかったら、自分も仲間も、死んでいただろう。そしてメトネスを切ることが出来たのも、メトネスがスゥの首を絞め付けるためにもともと煙状だった体を実体化させていたからだった。それも、間接的にだがスゥがいたお陰だった。

 力がほしい。ジークは心のそこでそう感じ始めていた。悪魔にも直接ダメージを与えることの出来るような力が。

 ジークは他の二人に見えないようにしながら、両手の拳をきつくにぎりしめた。


 その日の夕方、一行は夜営地を見つけ、スゥは習慣になり始めているオカリナの練習をした。基本を覚えたとはいえ、まだまだ技術は未熟で、失敗する度に自分なりに試行錯誤して対応していた。

 カレハがオカリナの元の持ち主から聞いて覚えていた曲は数えるほどしかなく、その内誰かに新しい曲を教わる必要がありそうだった。

 そしてスゥの懸念通り、幻の町で吹いた曲は覚えていなかった。

「だから気にすんなって、な」

 草の上に座ったまま、しょんぼりした表情のスゥに、ジークは隣に座って励ますように言った。

「でも……」

 スゥはやはり諦めきれない様子だった。

「……だって、もし次悪魔に襲われたら、どうするの?」

「それは……」

 ジークは痛いところを突かれて言い淀んだ。それこそまさに、ジークが最も懸念している事だった。

「あたしだって、ジークさんの役に立ちたいから……あたしにできることなら……」

 スゥは自信なさげに、ゆっくりとした口調で言った。

「……分かった。でも、だからと言って無理はするなよな」

 ジークはそう言いつつ、スゥを安心させることが出来ない自分を憎んでいた。

「うん……」

 スゥは目を伏せてそう頷いた。その後、互いに何も切り出せない時間が長く続いた。

 しかし、しばらくして思い立ったようにジークに振り向いた。そして静かな声で言った。

「話は変わるけど……ジークさん、あたしの正体っていったい何なんだと思う?」

「! ……スゥ、その事は……」

 ジークは驚いて言った。まさかスゥが自分からその話を切り出すとは思わなかったのだ。スゥにとって『そのこと』は、考えたくもないコンプレックス以外の何物でもないだろうに。

「さっきは取り乱しちゃったけど……やっぱりあたしも、自分のことが自分で分からないのは、怖いから……。ね、ジークさん、あたしっていったいなんだと思う?」

 スゥはどこか縋るように、草の上に置かれていたジークの手の上に自分の手を重ねて、そう尋ねた。

「それは、オレにも分からない。オレも親がいなくて自分の出生が分からないから、お前のそういう気持ちもそれなりに分かってると思う。でも……」

 ジークはスゥのいる方向ではなく前を向いて、スゥに向かってだけではなく、自分自身にも言い聞かせるように言った。

「一つだけ言っとく。オレはお前の正体が何だろうと気にしない。どんな出生だろうと、どんな力を持っていようと、結局お前はお前、スゥ・ロ・ヤマ・イシュラーグ以外の何者でもないからな」

 スゥはその言葉のひとつひとつに聴き入っていた。そしてジークが話終えると、ため息をついて言った。

「やっぱり、ジークさんはすごいなぁ……あたしはジークさんみたいに強くないから、すぐこんなに弱気になっちゃうのかな」

「そんなことないだろ」

 すかさずジークが声を多少大きくして言った。

「お前は今日、自分の危険も顧みずにオレ達を助けてくれたじゃないか。お前がいなきゃオレ達は死んでた。スゥはオレなんかよりもずっと強いよ」

「ジークさん……」

 スゥは半ば放心したような声で呟いた。ジーク越しに遥か遠くに見える夕日が眩しくて、スゥは目を細めた。

「だから、お前はもっと自分に自信を持てばいい。持っていいんだ。な?」

 ジークはスゥを振り返って言った。ジークとスゥの目が合った。

「……うん、ありがと」

 しばらくしてスゥは言った。しかし、それから突然思い出したように言う。

「そうだ、オカリナの練習まだ途中だった!」

 ジークの手に重ねていた手を離して、スゥはオカリナの吹き口を口に含み、ゆっくりと息を吹き込んだ。出てきた音は、ゆったりとした落ち着いた音だった。さっきの練習の時にはなかった奥深さがあった。まだ初心者らしいたどたどしさは残っているものの、その音色にはどこか惹かれる所があった。

 人々が現実を生きる内に忘れかけていた『幻想』そのものが篭った音色だと、ジークは感じた。どこか遠くにある世界、摩訶不思議で軟らかな光の差し込む、緑に満ちた世界。スゥのオカリナの音色は、そんな温もりに溢れた世界を想像させた。

 そうしてオカリナを吹くスゥの姿を、ジークは隣で不思議な感覚に包まれたまま眺め続けていた。



―幻の町のあった荒野―


「まさか、また計画を邪魔されるとは……」

 グルナは歯噛みして言った。真っ暗な夜、そこにはパテルの脇の林の時と同じ、四人の悪魔達が集っていた。

「まったく、あいつらホントに気に食わないしさ!」

 メトネスもグルナと同じような悔しさ剥き出しの声で言った。メトネスは右手でジークから一撃を受けた部分を庇っていた。明らかに深く切り込まれたようだが、血は出ていなかった。悪魔の体には血が流れていないのだ。

「ハッ、あんなやつら相手に傷まで負うとは、悪魔の名折れだなぁ、メトネス」

 二人の様子を見ていた別の悪魔が言った。その悪魔は、メトネスやグルナよりも人間に近い姿をしていたが、やはり体は真っ黒だった。そして、長い毛と、特徴的な長い尻尾が生えている。

「うるさいしさ、ベリウス! それにしても、スゥ・ロ・ヤマめ、あんな力まで隠し持ってるなんてね……」

「あんな力、とはどういう事だぁ?」

 メトネスのその言葉に、ベリウスと呼ばれた悪魔は目を細めて聞き返した。

「……やつの笛の音で、私の作った幻が掻き消されたのだ」

 グルナは静かな声で言った。

「ハッ、そいつぁ興味深い。いってぇ、どういうことだ?」

 ベリウスはさも面白そうに言った。

「やつが『特別な存在』だって事は知ってるが、まさか悪魔の持つ闇の力を打ち消せるとは、思っても見なかったなぁ」

「まあ、やつに限って言えば、あんな能力を生まれ持ってておかしくないがな。なにせやつは……」

「そんな事よりとにかく、今はあいつらを追いかけた方が良いしさ! この調子じゃ逃げ切られるぜ」

 グルナの声に被せるようにメトネスが言った。そのせいで、グルナが言おうとしていた言葉は聞こえなかった。

「……それもそうだな」

 グルナが半ば感心したように言った。

「メトネス、お前そんなマトモなこと言えたんだなぁ。ずいぶんと成長したもんだぜ」

「お前はいつも気に障る言い方をするね、ベリウス!」

 リィト達に二度も計画を邪魔されたメトネスは、悪魔達の中で最も気が立っていたようで、声を荒げて食ってかかった。

「まったくこの二人は……とにかく、早く行くぞ」

 グルナは嘆息して言った。

「それで次は、どこ行くんだぁ?」

「やつらの行き先はレイアークだ。それを追う」

「ハッ、そうかよ。けど、今度の襲撃はオレ一人に任させてもらうぜぇ。お前らじゃあ頼りないんでなぁ」

 ベリウスは意地悪そうな笑みを浮かべて言った。

「……勝手にしろ」

 グルナは屈辱を噛み締めつつ言った。しかし確かに、今までの戦績からして、次はメトネスやグルナと違い敵に物理的に攻撃できるベリウスに行かせるのが妥当だ。

「じゃ、さっさと行くしさ」

 メトネスのその言葉を合図に、メトネス・グルナ・ベリウス、そしてついに一言も喋らなかった四人目の悪魔は、例によって例のごとく闇の霧となって消えうせた。



―ノーレラス地方中央街レイアーク―


 翌朝、旅を続けていたジーク達の前に、中央街レイアークが姿を表した。外から見た感じは、パテルとほぼ同じだった。灰色の城壁に円形に取り囲まれ、その上から建物が建ち並ぶのが見える。

 パテルと違うところといえば、街が湖の中に孤島のように建っているというところだ。

 藍色の鏡のような湖面に映る、いくつもの塔がそびえる街の姿は、どこか神秘的な風格を漂わせていた。そしてその街の中央には、大きな灰色の荘厳な城が建っていた。城からは、いくつもの高さの違う塔が立ち並んでいた。もしその中で一番高い塔にのぼってそこからこの湖を眺めたら、きっとすばらしい風景が見えることだろう。

 そしてその街からジーク達のいる湖畔までまっすぐに石作りの幅の広い橋が架かっている。

「この街は昔はルネアっていう一族がこの地方を治めてた時の城だったんだぜ」

 とカレハがスゥに説明した。

「二年前、スピルナ動乱が終わってスピルナが平等主義国になった時、当然ルネア一族の支配権も失われた訳なんだけど、ルネア一族はこの地方の人々に慕われてたから、それ以来も町長として、この中央街レイアークの主導権は実質的にルネア一族が握ることになった。まあ、それだけルネア一族の今の女当主・シーゼル・セン・ルネアが魅力的だったってことだけどな」

「そのシーゼルさんって、どんな人なんですか?」

 とスゥが無邪気に尋ねる。

「さあね、アタシも直接会ったことがある訳じゃないから、詳しいことは知らないけど……ま、これだけ人気があるんならそれだけ綺麗ってことじゃん?」

 カレハは適当に答える。

「綺麗……」

 その言葉はスゥの心の中に不思議と響いた。その言葉は、自分とはまったく縁のない言葉だ。二年前から難民同然の生活をしていたスゥは、自分の見た目に完全に無関心になっていた。

 実際今も、ファッショナブルとはお世辞にも言えない、着古した茶色の質素な長袖シャツとスカートを着て、地味なサンダルを履き、顔に泥がついていても気にしないし、最後に髪に櫛をいれたのも、いつの事やら覚えてさえいない。

 今まではそれでも気にならなかった。誰かに綺麗に見られたいと思われた事などないし、周りの人間の中にもまた自分の見た目を気にする人間はいなかった。

 しかし今、人間らしい生活を多少なりとも取り戻しはじめたスゥは、自分への関心もまた曖昧にだが取り戻し始めていた。

 そこへ来て『綺麗』という言葉を聞いた時、スゥの中の何かが動いた。

 スゥは、特別美人になりたいとは思ったことはないし、自分の見た目で周りの人を惹きつけたいとも思わない。

 しかし、今のスゥには一人だけ、少しでも気を引きたい相手がいる。それが誰だかは、言うまでもない。

 スゥは自分の艶の無い髪の毛を見て、自分の今のだらしない服を見て、不意に恥ずかしくなった。

「おい、スゥ、カレハ、早く行くぞ!」

 その時、少し先に進んでいたジークが声をかけた。

「ったく、せっかちなやつだな~」

 と言いつつカレハもジークに続く。そこでスゥも考え事を中断し、急いでその後を追った。


 しっかりした石作りの大きな橋の手摺りには、植物をイメージしたらしい複雑な形の彫刻が彫ってある。

 その手摺りの上から見える湖と、その先のほとりにある林は、これまた中々いい風景だった。

 橋にはジーク達以外にも数えるほどの馬車や通行人が行き来していた。その誰もがなぜか、心なしかウキウキしているようにスゥには見えた。

 そんなことを不思議に思いながら、スゥはジークの後ろについて、高さ五メートルはあろうかという巨大な街の城門をくぐった。

 すると、まず目に入ったのは街のどこか異様な賑わいだった。大通りの脇に建ち並ぶ商店街はともかく、普通の住宅までもが、色とりどりの装飾を施されていた。

 といってもどうやらまだ準備途中と言った様子で、そこここに脚立に乗って作業をする男達や、飾りの入った箱を運ぶ子供達の姿があった。その表情は、橋の上で行き交った人々と同じくどことなく生き生きしていた。

「クレオスナ祭か……もうそんな時期になったのか」

 スゥの隣でジークが呟くように言った。

「『くれおすなさい』……? ジークさん、それっておいしいの?」

 とスゥがジークに尋ねる。

「いや……どう聞き取ったら食べ物に聞こえるんだよ」

 ジークが呆れたようにつっこむ。

「だから、要するにお祭りだよ、お祭り」

 そこでカレハがフォローする。

「それで……『おまつり』っておいしいんですか?」

「……」

 さすがのジークとカレハもこれには閉口する。しかし当のスゥはというと二人がそんな反応をする理由が分からず、ただ不思議そうに首を傾げるだけだった。

「どうしたんですか、カレハさん?」

 悪気なくそう尋ねる無邪気なスゥに、カレハは深く嘆息した。


 結局、二人はスゥに『お祭り』を説明するのに数分を費やすことになった。そうしてなんとかスゥが納得したようなので、カレハはやっとクレオスナ祭の説明に入ることができた。

「クレオスナ祭ってのは、スピルナに昔からある伝統的なお祭りで、年に一回、ちょうど今から二週間後の五月十日から一週間行われるんだ。もともとは、スピルナ帝国初代皇帝クレオスナがスピルナ帝国を建国したことを祝う祭典だったんだ。でも、時代を経るにつれてだんだん、いわゆるお祭りの要素が強くなって行った。

 クレオスナ祭では、国民は自分たちの一族の民族衣装を着て、それぞれの伝統に則ってこの日を祝うんだ。もともと多民族国家で民族間の軋轢が絶えなかったスピルナでは、民族同士の理解と親交を深めるために、こういう祭典が必要なんだよ」

 カレハはできるかぎり解りやすくかいつまんで説明したつもりだった。が、危惧していた通りスゥはチンプンカンプンのようだった。

「なるほど……えっと、それで『くれおすなさい』って細長いんですか?」

 スゥが尋ねる。

「なんでそうなるの!?」

 とつっこむカレハ。

「え……それじゃ、丸いんですか?」

 スゥは驚いたように言う。

「お祭りだから! 形なんてないから!」

 さすがに気疲れして声を荒げるカレハ。

「それじゃ、『おまつり』って食べられないんですか!?」

 スゥは落胆した声で言う。

「どうしてお前は何でもすぐ食べ物に結び付けるんだよ」

 そこに今まで横から二人の会話を聞いていただけだったジークが割り込む。

「だって、お腹すいたから、つい……」

 そこにきて不意にしょんぼりするスゥ。

「それはいいけど、少しは常識力も持っとけよ。今まで大変な生活してきたのは分かるけど、いくらなんでも教養なさすぎだぜ」

 とジークに言われてスゥは情けなさにさらにしょぼくれてしまう。

 その様子を見ていてジークは不意にあることに気がついた。スゥは、少なくともジークと会ってからは、一度も怒ったり言い返したりしたことがないのだ。

 始めの頃ジークは、おいてきぼりにされるのを恐れていたからだと思っていたが、ジークの直感がなぜだか、理由はそれだけではないと言っていた。

「おい、ジーク、ちょっと言いすぎじゃねえか?」

 そこでカレハがフォローするように言った。見るとスゥは落ち込むあまり涙目になっていた。ジークは一瞬怯んだが、強がって言った。

「何言ってんだよ。そうやって泣いたら許されるって思ってるから、女は質が悪いんだ。言っとくがオレはそんなのには騙されな……」

「……ぐすん」

「……しょーがねーな、今回だけだぞ」

 ジークはそう言って照れを隠すようにすたすたと先を歩いて行く。

「ナイスだ、スゥ」

 ジークが声が聞こえない所まで行った時、カレハはスゥの耳元でそう囁いた。

「ふえ……? 何がですか?」

 しかしもともと悪気のなかったスゥにとっては、カレハの言葉は当惑が増すだけだった。


 三人が街を歩いていると、来たるクレオスナ祭に備えて装飾を施されつつあるレイアークは、道を進むごとに新たな姿を見せた。当然、ノーレラス地方にもともと住んでいる民族だけでなく、他の地方から移住してきた人々や、クレオスナ祭を通じて他民族との交流を深めようとやって来る人々もいるので、街は色とりどりに彩られていた。

 あちらを見れば様々な色をゴチャゴチャに混ぜたようなタペストリを掲げていたり、そちらを見れば極彩色の摩訶不思議な絵柄が描かれた旗をなびかせていたり、かと思えば別の場所ではとげとげの茨を家全体に巻き付けるように飾り付けていたりと、スゥはそのひとつひとつを眺めようとするだけで首が痛くなりそうだった。

 クレオスナ祭まではまだ二週間あるという。それでこの状態だ。本番になったらどれほど豪華な物になるのか、スゥには到底想像がつかなかった。

「ジークさんは、クレオスナ祭に参加したことあるの?」

 スゥは何気なくジークに尋ねた。

「いや、オレがこの国に来たのはたった四年前だったからな。この祭は、去年まではスピルナ動乱の影響で休止していたんだ。だからこの国の国民にとっても、この祭はかれこれ十二年ぶりってことになるんじゃないか?」

 ジークがそう答えた。

「……それじゃ、その前はどこに住んでたの?」

 スゥが不意に気になって尋ねる。しかしなぜか、ジークはその問いに答えようとはしなかった。

「後でアタシが教えてやるよ、スゥ」

 ジークの反応を不思議に思って再び口を開きかけたスゥを制すように、カレハがスゥの耳元で囁いた。

「とにかく、ジークの前でその話はしないほうがいい」

 スゥはなぜだろうと聞きたかったが、それを今、口に出すべきで無いことは流石に分かっていたので、何も言わなかった。

「そう言えば、カレハさんはこの街であたしたちと別れることになってましたよね。いつ、ここを発つんですか?」

 スゥは知恵を働かせて、話題を変えた。

「そうだなぁ、残念だけど、今日中には出ることになるかな」

 カレハはそう答えて、それから突然言った。

「もしかして、ジークと二人きりになるのが待ち切れないのか?」

「そ、そんな、違いますよぉ!」

 慌ててそう答えながら、スゥは顔を真っ赤に染めていた。

「嘘つくの下手だねぇ、あんた」

 カレハはからかうように言った。

「だから、そうゆう、事じゃなくて……」

 スゥは慌てて言い訳するようにつっかえつっかえ喋ったが、終いにはどうしていいか分からなくなって困り果てて半泣きしてしまった。

「どーしてここで泣くんだよ。あんた、感情のコントロールも下手なんだなぁ」

 そう言いながらカレハは、ジークが『スゥは訳が分からない』と言っていた理由も、何となく分かる気がした。


 これもクレオスナ祭の影響なのか、街の宿屋という宿屋は客で溢れかえっていて、一行はジークとスゥの寝床を探すのにかなりの時間を要した。そしてしばらく歩いてやっと空いている部屋を見つけた。

 それからジークは、買い物をするためにスゥを部屋にのこして出かけて行った。

 一人残されたスゥは何となく部屋を見回していた。すると、扉の横に据え置かれた鏡台と、その上にあったベッコウ製の櫛が目に留まった。

 スゥは鏡台の椅子に座って、おそるおそる櫛を手にとる。今までスゥは自分で髪を梳いたことは一度もなかった。しばし櫛を目の前に掲げて眺める。

 茶色い半透明のベッコウのその櫛は、これと言って凝った作りのない、シンプルな物だった。柄は軽く括れていて、柄の先についた十三センチほどの長さの板から、数え切れない数の歯がついている。

 スゥはどこか緊張した面持ちで、その櫛を持った左手を後頭部にそえる。そして、思い切って櫛を下に滑らせる。

 ぐしっ、という髪の悲鳴のような音を立てて、櫛は数センチも進まない内に動きを止める。それきり櫛はスゥの髪の毛に刺さったまま動かなくなってしまった。

 今まで自分がどれだけ自分の髪を粗末に扱ってきたのかを、スゥは思い知って、深くため息をついた。

「あんた、髪の梳き方も知らないの? まったく……」

 その時突然カレハの声がして、スゥは飛び上がった。カレハはいつの間にか扉を挟んでスゥの反対側の壁にもたれ掛かっていた。

「カレハさん……」

「貸しな、アタシが梳いてやるよ」

 カレハはそう言うと、スゥの後頭部に刺さっていた櫛を抜き取って、鏡台の手前にあったベッドの端に座る。そして、慣れた手つきでサッサッとスゥの長い髪を梳きはじめた。

「スゥ、あんたせっかくキレーな髪持ってんだから、ちゃんと大切にしてやんなきゃダメだぜ」

 カレハは梳きながら言った。

「それに、あんたみたいな年頃の女の子なら、自分の髪くらいは梳けて当然なんだぜ、ホントは」

 そう言われてスゥは恥ずかしくなって少し顔を赤らめた。スゥは言うまでもなく壁側を向いていたが、鏡に写るので、カレハはスゥの表情を見ることができた。

「ごめんなさい、あたし、いっつもカレハさんに迷惑ばっかかけて……」

「別に謝んなくていいよ。迷惑だとも思ってねーし」

 カレハはそんなスゥを励ますように言った。

「そりゃ確かに、手のかかる妹が増えたみたいで、めんどくさいとも思ってるけどさ。でも、そういうのは迷惑ってのとは別だろ?」

「増えて……? カレハさんには妹さんがいるんですか?」

 スゥは何気なく聞き返した。

「まあな。ホント、手のかかるやつだよ。かれこれ六年は会ってないけどな」

 そう言うカレハの顔が一瞬曇ったように、スゥには鏡ごしに見えた。姉妹なのに六年も会ってないということは、何かただならぬ事情があるのだろうか。

 そう察してスゥは、そのことについてそれ以上は聞くのを止めて、カレハが自分の髪を梳いてくれる規則的で、心地よい感覚にその身を任せた。


 その頃、ジークはレイアークの商店街を歩いていた。食料など必要な物は買い終えたが、何となくまだ宿に帰る気にはならなかった。

 改めて考えてみると、スゥに出会ってから、こうして一人でゆっくりするのは初めてだった。

 ジークは別にネクラではないが、やはりこうして一人で目的もなく歩き、リラックスするのもなかなかに風情があった。

 商店街の先にある大きな噴水が見えはじめた頃、不意に商店街の一角にある装飾品店が目についた。

 特別な理由があった訳ではない。特にどうということはない、どこにでもあるような店だった。しかし、何かがジークをその店に引き付けたのだ。

 ドアを開くと、チリンチリンとベルが鳴った。店の中の配色は落ち着いた茶色で統一されていて、ジークが装飾品店に抱いていたけばけばしいイメージとはまったく違った。

「いらっしゃい、ぼうや」

 カウンターから声がした。振り返ってみると、声の主は店主とおぼしき老人だった。

「お探し物は何かね。カノジョへのプレゼントかい? え?」

「べ、別にそんなんじゃねえよ」

 ジークは慌てて否定する。

「ふふ……若いってのはいいねぇ」

 店主はお見通しといった様子で楽しそうに言った。決まりが悪くなって、ジークはその言葉を無視して、店内を見回す。

 すると、壁に並んだペンダントの一つが、不意に目に留まった。

「これ、見たところエンリアル製だな」

 ジークがそれを手に取りながら言った。

「ほう、良く分かるね」

 老人は感心したように言う。

「エンリアル製の銀は他のどこのよりも純粋で澄んでて、独特の金属光沢があるから、一目見ればすぐ分かる。今までいろいろ旅して来たから、これくらいの事はな」

 ジークはそう言いながら、手に持ったペンダントを眺めた。三センチほどの大きさの銀に、信じられないような細かい装飾が施されている。そしてその中央に、大粒のアメジストがはめ込まれていて、透き通った光を放っていた。その紫の輝きは、スゥのあの大きな瞳によく似合いそうだと、何となく思った。

「どうやらぼうや、ただもんじゃ無いな」

 店主はなおも面白そうに言った。

「そんなんじゃねえよ。なあ、これいくらだ?」

 ジークは手に持ったペンダントを掲げて見せた。

「本当は五千ギルだがね、ぼうやなら安くするよ」

「いや、定価で構わねえよ。五千だな」

 そう言ってジークは財布を取り出した。そして金貨を一掴み無造作に取り出した。

「これで足りるか?」

「ぼうや、アンタやっぱりただもんじゃないじゃろ……」

 カウンターに置かれた十数枚の金貨の束を見て店主は言った。五千ギルなど、大人であってもそんじょそこいらの一般人がポケットマネーで簡単に出せるものではない。そして店主はふとジークの白い髪に目をとめた。

「ひょっとしてアンタ、『白銀の獅子』じゃあないかね?」

 店主はまさかという様子で尋ねた。まさか、こんな子供が……

「……たしかに、昔そう呼ばれてたこともあったな」

 ジークは半ばはぐらかすように言った。正直、あの頃の事はあまり思い出したくはなかった。

「なるほどね、こんなぼうやがねえ……」

 店主は驚いたように言った。

「ったく、だからどうと言う訳じゃねえだろ。とにかく、これはもらってくぜ」

 ジークはそう言ってたった今買ったペンダントを、店主から受け取った箱にしまい、ポケットに押し込んだ。

「おう、カノジョによろしくな、ぼうや!」

 ジークが扉を出る際に後ろから店主がからかうように声をかけてきた。ジークは反論する替わりに扉を大きな音を立てて閉めた。

 目の前に、商店街の突き当たりにある、街の広場に堂々とそびえる白い石でできた噴水が見えた。湖に浮かぶこの街にはピッタリのモニュメントだ。おそらくは、今の女町長であるシーゼルが作らせた物だろう。

 ジークは何となくその噴水を眺め、広場にいくつか据え置かれたベンチの一つに座った。

 この街も今じゃこんなに平和になったのか、とジークはしみじみ思った。前にここを訪れた時は、まだスピルナ動乱の真っ只中で、この街に限らずどこもかしこも荒廃しきっていた物だった。

 それが今は、アルデバラン・アルトの働きによって平和を取り戻し、これだけ繁栄している。そして今、十二年ぶりに、人々に愛され続けたクレオスナ祭が復活しようとしている。改めて考えてみると、どこか不思議な気分だった。

 その時、ふと反対側のベンチに座っている人影が目についた。こんな暖かい明るい陽気なのに、その人は全身を深緑色のマントで包んでいるのだ。その上フードも目深に被っていて横を向いているせいで顔も見えず、高い鼻の頭だけが見えている。それなりの身長はあるようだが、そのシルエットから女性だろうと予測はついた。

 のどかな広場の風景にまったくそぐわないその女性が、なぜかどこかで見たことがあるような気がして、ジークはしばらく不思議な思いでその女性を見ていた。

「ジークさーん!」

 その時、突然後ろからスゥの声がして、ジークは飛び上がった。振り返ると、ベンチの後ろにスゥが立っていた。

「カレハさん、もう行っちゃったよ。挨拶しなくてよかったの?」

 スゥが心配そうに言った。

「いいんだよ。リィトの別れに言葉はいらねえからな」

 それに対してジークはどうでも良いというように答える。その間もジークの目線はベンチに座った女性に注がれていた。

「あの人が、どうかしたの?」

 スゥは不満げに少し頬を膨らませて尋ねた。そしてその女性を眺めて、言った。

「なんだか、ふしぎな人……すごく寂しそう……」

 なぜスゥにそんなことが分かるのか、ジークにはまったく分からなかった。しかし、パテルで魚屋がメトネスに操られていたのを見抜いたことからも、やはりスゥには何かしらの能力があるのだろう。もしかすると、精霊族の証でもある尖り耳とも関係があるのかもしれない。

 その時、ジークの後ろでスゥが何かに気づいた様に突然後ろを振り返った。

「どうしたんだ、スゥ?」

 ジークが眉をひそめて聞いた。

「この『音』……ジークさん、この街の近くに、悪魔が来てる!」

 スゥは緊張した面持ちで答えた。

「本当か?」

 ジークもまた、緊張して聞き返した。

「うん……それに、今までより強いかも……」

 それを聞いてジークは考えを廻らせる。パテルでの前例がある。よりによって祭の準備で活気づいているこの街を、パテルの二の舞にする訳にはいかない。だとすれば、こっちから出向いて敵の注意を街に払わせないようにしなければならない。

「スゥ、ついて来い」

 ジークはそう言ってスゥの手を掴み、最後にベンチの女性に一瞥を投げかけて、商店街に向かって走り出した。

 その時になってジークの存在に気づいた女性は、なぜかその顔に驚きを浮かべていたが、ジークがそれを見ることはなかった。

 そして女性は、唐突にジークの後を追って走り出した


 ジークはスゥに悪魔のいる方角を聞いて、その方向に走って行った。いくつもの小路を走って、角を曲がり、気付けば商店街とは別の大通りに出ていた。

 その通りは大通りといってもあまり人気がなく、どこか寂れた場所だった。そしてジークがスゥに、次はどっちだと聞こうとした時、足元の影が変な形になるのを見た。

 しかし、変になったのはジークの影ではなかった。ジークはすぐに、スゥを連れてその場所を離れる。

 次の瞬間、上空から落下してきた影の主が、大きな音と砂ぼこりを立てて着地した。

「今の攻撃を避けるたぁ、素早いじゃねぇか」

 影の主は言った。メトネスやグルナと同じく真っ黒な人間の姿だが、より形がはっきりしていて、見たところ今までの悪魔のような煙状の体ではなく、ちゃんとした実体があるようだった。

「てめえが今回の悪魔か。どうやら、今までとは格が違いそうだな」

 ジークはそう言ってその悪魔をにらんだ。そして背中に背負った包みを一気に取り払い、二振りの得物の大刀を引き抜いた。

「ハッ! そうやって余裕ぶっこいていられるのも、今のうちだぜぇ!」

 獣じみた声を上げ、悪魔はジークに飛び掛かってきた。

「スゥ、オレの後ろから離れるな!」

 敵の力が未知数である以上、むやみにスゥを逃げさせるのは逆に危険だ。幻の町の時のように拉致されてしまうかもしれない。

 悪魔の突き出した腕が眼前に迫って、ジークは咄嗟に刀でそれを受け止める。しかし悪魔の攻撃は、思っていたほどの威力はなかった。それで気を抜きかけたジークを嘲るように、悪魔は笑った。

 次の瞬間、ジークの刀ごしに何かの強いエネルギーがぶつかった。そのあまりの威力に、ジークは二本目の刀を地面に刺してブレーキをかけることによって、何とか吹っ飛ばされずに済んだ。

「一体、何を……」

 そう言いながら、ジークは刀を悪魔に向かって切り付けた。悪魔はそれを軽々とかわし、跳躍でジークと距離を取った。その身体能力は、メトネスやグルナにはなかった物だった。

「ハッ、お前、オレが何したかわかんねぇ、て顔してやがんなぁ」

 悪魔はさも面白そうに言った。どうやら好戦的な性格のようだ。

「いいぜ、冥土の土産に教えてやらぁ。悪魔にはよぉ、それぞれに対応した『体のパーツ』がある。それはその悪魔の象徴にして、その能力そのものでもある。例えばよぉ、メトネスの司る体構造は『耳』で、やつは音を使い、耳を通して相手を洗脳し、操る。グルナが司るのは『目』で、幻覚を見せて敵をたぶらかす悪魔、て訳だぁ。そしてこのオレ、ベリウスが司るのはぁ……」

 そこで悪魔・ベリウスは言葉を切り、再び跳躍で縦に回転しながらジークに飛び掛かってきた。そして叫んだ。

「『尻尾』だぁ!!」

 そして、宙返りで回転の力と遠心力が加わり、さっきとは比べ物にならない破壊力のこもったベリウスの尻尾が、ジークを襲った。

 ジークは焦らずそれを横に避けた。ベリウスの尻尾はその破壊力を保ったまま地面に打ち付けられ、轟音とともに地面に大きな亀裂を作った。もしこれをまともに受けていたら、まず命はなかっただろう。

 やはり、そうか。とジークは思った。ベリウスを初めに見た時からジークの中に構築されていた仮説が、ベリウスの言動とその攻撃力によって裏打ちされた。

 メトネスの司る体構造は『耳』、グルナは『目』、そのどちらもが感覚器官だ。今までの二人が攻撃力に欠いていたのは、そのせいだったのだ。

 しかしベリウスは『尻尾』で、感覚器官ではなく直接攻撃できるパーツだ。つまり、ベリウスはメトネス達のような人をたぶらかすような能力はない。その分の力が、攻撃に使われるということなのだ。

 だとすれば、今度の戦いは、今までとは次元が違う。ジークはそう覚っていた。



三章「The Darkness Tail」完

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