すこしさきのはなし、からのつづき
「これからは+1グレードまでな魔法の武器・防具を、パーティで所有を提議したい!」
けっこうな方針転換となるのに、総スルーされた。沈黙――いや微かな咀嚼音だけが返事だ。
「なんだよ、これ!? やけにでけぇけど……尻尾?の丸焼きか?
あれだ……みんなで相談して、飯だけはケチらねえって決めたよな?」
「土竜のテールティップ・ホウルローストだそうです。……高級部位だとか」
こちらへ目もくれずに悟が教えてくれた。珍しく食べるのに夢中だ。
「普通に美味しいよ! うん、かなり美味しい!」
「うむ。トカゲの類は尻尾が最上というが……これは美味いな!」
「悪くないアイデアと思うけど、一応、理由を聞いときたいな」
そう応じた陽平は一人だけ、なぜか細切りの干し肉を齧っていた。
「なんだよ、それ? うん? これって魚を干したやつか?」
「お、俺のだぞ!」
一本奪い取っただけなのにケチ臭いことを。
「ふふ……直人、そのような意地悪はいけませんよ。それはエミリー嬢が陽平の為にと、わざわざ取り寄せてくれたものなんですから」
エミリーは、この店の看板娘だ。けっこう可愛い。……もしや?
「なんだって!? まさか陽平ってば、独り占めするつもり!?」
「そのような訳あるまい。仲間思いな陽平だぞ? よもやよもや、よ」
などいいながら健太郎は陽平を羽交い絞めに、翼は翼で自分と共謀者の口へと強奪品を放り込む。
悟も好機とばかり、悠々と分捕っていく。
よし、悪は滅んn――少し哀れだ。手加減してやれよ!
断腸の思いで尻尾の丸焼きは後回しに、とにかく話を続ける。
「先々の話なるが、四階の探索も視野に入れたい。
三階でも+2グレードは狙えそうだけど、少し分が悪いように思える。四階の方が確率高そうだし、リスク・リターンとも見合う……はずだ。
で、その安全マージンとして、装備の更新をしたい。これからは+1グレードを前線へ送らず、俺達で消化だ」
なぜか悟が、俺の皿を指さしてきたので、促されるままに渡す。どうやら俺の分を取りよけてくれるらしい。
「また甘やかして!」
なぜか翼は感心してない様子だ。……幼馴染とは、いいものと思わないのか?
「似たようなことは、俺も考えてだぜ? だけどな?」
最期の干し魚を抱え込むように守りながら、それでも陽平は話を続ける。
「先にヒーリングポーションだ。全員に一本ずつヒーリングポーション。
いいか? 俺らっちには、悟しか回復役がいねぇ。これじゃ負担が大きいのはもちろん――
悟の怪我を、誰が治すんだよ? 四階攻略に反対はしねえけど、この件は絶対条件だ」
皆が考え込む沈黙の中、悟の作業音だけが聞こえた。
「……それは私が前へ出ないことで対応を」
「駄目だよ、長谷川。そういうの良くない」
悟の提案を、翼が一蹴する。……これは翼と陽平が正しい。
「しかし、俺達は前線へ物資を、が大目標であろう? ヒーリングポーションを消費しては、本末転倒。やはり地道に低難易度階層を――」
「いや、健太郎。それは問題ない。たしかに余らしてはないようだけど、もう必須でもないらしい……ヒーリングポーションは。
なんといっても選抜組は、前衛職ですら魔法を使える奴の方が多いらしいからな。回復方法には困らんようだ」
「……なるほど。それは生徒会副会長さんに聞いたのですか?」
意地悪く悟が問い質してくる。……幼馴染なんて、最悪だ!
「どういうこと、長谷川?」
「ふふ……直人は、『姫カットふぇち』なのですよ」
た、確かにそうだけど! そうだけどぉッ!
「話きこか、親友?」
そして陽平ッ! どうして肩をッ!? やめろぉッ! 俺をいじられサイドへ引き込むなぁッ!




