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異世界らくえん  作者: curuss


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9/11

すこしさきのはなし、からのつづき

「これからは+1(初級)グレードまでな魔法の武器・防具を、パーティで所有を提議したい!」

 けっこうな方針転換となるのに、総スルーされた。沈黙――いや微かな咀嚼音だけが返事だ。

「なんだよ、これ!? やけにでけぇけど……尻尾?の丸焼きか?

 あれだ……みんなで相談して、飯だけはケチらねえって決めたよな?」

「土竜のテールティップ・ホウルローストだそうです。……高級部位だとか」

 こちらへ目もくれずに悟が教えてくれた。珍しく食べるのに夢中だ。

「普通に美味しいよ! うん、かなり美味しい!」

「うむ。トカゲの類は尻尾が最上というが……これは美味いな!」

「悪くないアイデアと思うけど、一応、理由を聞いときたいな」

 そう応じた陽平は一人だけ、なぜか細切りの干し肉を齧っていた。

「なんだよ、それ? うん? これって魚を干したやつか?」

「お、俺のだぞ!」

 一本奪い取っただけなのにケチ臭いことを。

「ふふ……直人、そのような意地悪はいけませんよ。それはエミリー嬢が陽平の為にと、わざわざ取り寄せてくれたものなんですから」

 エミリーは、この店の看板娘だ。けっこう可愛い。……もしや?

「なんだって!? まさか陽平ってば、独り占めするつもり!?」

「そのような訳あるまい。仲間思いな陽平だぞ? よもやよもや、よ」

 などいいながら健太郎は陽平を羽交い絞めに、翼は翼で自分と共謀者の口へと強奪品を放り込む。

 悟も好機とばかり、悠々と分捕っていく。

 よし、悪は滅んn――少し哀れだ。手加減してやれよ!


 断腸の思いで尻尾の丸焼きは後回しに、とにかく話を続ける。

「先々の話なるが、四階の探索も視野に入れたい。

 三階でも+2(中級)グレードは狙えそうだけど、少し分が悪いように思える。四階の方が確率高そうだし、リスク・リターンとも見合う……はずだ。

 で、その安全マージンとして、装備の更新をしたい。これからは+1(初級)グレードを前線へ送らず、俺達で消化だ」

 なぜか悟が、俺の皿を指さしてきたので、促されるままに渡す。どうやら俺の分を取りよけてくれるらしい。

「また甘やかして!」

 なぜか翼は感心してない様子だ。……幼馴染とは、いいものと思わないのか?

「似たようなことは、俺も考えてだぜ? だけどな?」

 最期の干し魚を抱え込むように守りながら、それでも陽平は話を続ける。

「先にヒーリングポーションだ。全員に一本ずつヒーリングポーション。

 いいか? 俺らっちには、悟しか回復役がいねぇ。これじゃ負担が大きいのはもちろん――

 悟の怪我を、誰が治すんだよ? 四階攻略に反対はしねえけど、この件は絶対条件だ」

 皆が考え込む沈黙の中、悟の作業音だけが聞こえた。


「……それは私が前へ出ないことで対応を」

「駄目だよ、長谷川。そういうの良くない」

 悟の提案を、翼が一蹴する。……これは翼と陽平が正しい。

「しかし、俺達は前線へ物資を、が大目標であろう? ヒーリングポーションを消費しては、本末転倒。やはり地道に低難易度階層を――」

「いや、健太郎。それは問題ない。たしかに余らしてはないようだけど、もう必須でもないらしい……ヒーリングポーションは。

 なんといっても選抜組は、前衛(クラス)ですら魔法を使える奴の方が多いらしいからな。回復方法には困らんようだ」

「……なるほど。それは生徒会副会長さんに聞いたのですか?」

 意地悪く悟が問い質してくる。……幼馴染なんて、最悪だ!

「どういうこと、長谷川?」

「ふふ……直人は、『姫カットふぇち』なのですよ」

 た、確かにそうだけど! そうだけどぉッ!

「話きこか、()()?」

 そして陽平ッ! どうして肩をッ!? やめろぉッ! 俺をいじられサイド(そっち)へ引き込むなぁッ!

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