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異世界らくえん  作者: curuss


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11/11

たたかいおわって、ひがくれて

 地上へと戻ったら、もう夕暮れが広がっていた。

 さすがに美しいという他なく、数少ない異世界の良いところで……ずるくも感じてしまうところだ。

 そして、なんだろう? この居残りさせられたかのような無念さは?

「お帰りなさいっス、先輩!」

 場違いなまでに元気な声は、まあ一年坊の田中 翔太だった。

 ……しかし、鼻でも詰まってんのか? 妙な声だして?

「なんだ。こんな時間まで自主練か?」

「もちろんです! 見て下さい、先輩に教わった『緊急帰還の羽根』捌き! だいぶ上達しました!」

 いうなり西部劇のガンマンの如く、羽根を素早く取り出したり、戻したりを繰り返して見せる。

 なんでも上達できるものだと感心してしまうが……残念ながら全く意味はない。

「それより! ちゃんと走り込みもやってんのか?」

 翔太をどやしつけつつも陽平は、俺へ批判的な視線を投げかけてくる。嘘テクでの誤魔化しに納得いかないのだろう。

 しかし、後輩にダンジョンの潜り方なんて――命を的にした凌ぎ方なんて教えられないし、教えたくもない。まだ翔太は(クラス)も得てない()()だというのに。

 なんか悔しいので翔太の死角から、陽平へ下品なハンドサインを返しておく。

「まあ足腰を鍛えるは、無駄にならなかろう。もしダンジョンに挑むとなれば、一日中、歩き通しだからな!」

 などと健太郎は講釈を打つけれど、そんな悲劇を避けるべく、俺達は頑張ってんだぞ? ……かなり緩くではあるが。

 どうにも翔太の育成方針では、皆との距離を感じてしまう。

「ボク、お腹が空いた!」

「しかし、食事処に寄ったら、門限に遅れてしまいます」

「えー! またパン齧りながら帰るのぉ!?」

 なぜか距離を感じさせる翼と悟を、断固として叱る!

「馬鹿、言ってんじゃねえ! いいか? ダンジョンから帰ったら、美味いもんを食う! 絶対にだ! そうやって少しでも辛i――」

「先輩、先輩!」

「後にしてくれ、翔太! 心配せんでも、お前の分は奢っちゃる。ちゃんと陽平と健太郎が金を出s――」

「御馳走になるっス、先輩! でも、現地の人が! むこうで手を振って呼んでるっスよ!」

 そう翔太の指し示す方向には、確かに二人の人影があった。あれはアッシュと弟子のレオンだろう。

「……とりあえず、いってくるぜ。ちょっと皆は、ここで待っててくれ」



「一人増やしたのか、ナオト?」

「……いや。あれは同郷人だけど、懐いてきただけの()()だよ」

 そう惚けておく。

 おそらくクラスを得る条件は、満十六歳以上なこと。そしてモンスターを殺すことだ。

 しかし、それを異世界の奴らは、正確に分かってない。きっと数え年の習慣だからだろう。

 よって一年生の半分近くは、クラスを得れてない――ここの表現で『子供』となる。

 が、だからって馬鹿正直に教えてやる義理もない。偶然にでも安全圏へおけた以上、そのまま守ってやるべきだ。


「どうやら三階の探索を始めたようだな? さすがは異世界人というべき長足の進歩よ」

 褒められて嬉しいというより、疑念が先に立つ。どうして俺達が三階へ降りたと分かる?

 しかし、それで駆け引きのつもりはなかったようで、安心しろとばかり豪快に笑う。

「お主、臭うのだ! もう遠くにいても分かるほどよ!」

 いわれて自分で自分を嗅いでみれば、確かに臭かった! 強烈なアンモニア臭がしだしてる!

 もしかして巨大な蝉の体液か!? そして皆が妙に距離をとってたり、翔太が口呼吸していたのも!?

「ヒュージ・シケイダの体液は、時間が経つと臭ってくるんです」

 そう説明してくれたレオンは、なにやら布袋を差し出してくる。

「あやつに引っ掛けられたら、その粉で臭いをとるのよ」

 アッシュは、ニヤニヤと面白そうに笑ってやがるけど、まあ一応は親切か。

 だが、不精無精に粉を塗り付けてたら、真剣な顔つきで話題を変えてきた。どうやら用もあったらしい。

「お主らが三階で――中層より下で掘るのであれば、折り入って頼みがある。もし『万能薬』を引き当てれたら、それを譲ってほしいのだ。それというのもレオンの母親g――」

 失礼を承知で、話を遮る。……正直、聞きたくなかった。

「その『万能薬』?というを引き当てられたら、譲るのはいいよ。受けよう。

 でも、そのために深く潜るとは、約束できない」

 嫌な沈黙が降りた。残念だけど友好的な関係もここまでか?

「すまぬ、ナオト。そう約束してくれただけで充分よ。……少し、血迷いかけておったわ」

 そういって頭を下げるアッシュに、レオンも続く。

 ……誰にだって命を懸けるだけの理由はある。それだけの話だろう。


「おーい、直人! まだぁ? 日が暮れちゃうよー!?」

 まったく空気を読まない翼が、焦れたのか急かしてきた。……ナイスだ、腕白ボーイ!

「おお! もう日が暮れたというのに、引き留めてしまったな!」

「いえ、いえ! 一応、その『万能薬』?の詳しい情報を――

 ――すぐ済む! もう今日は泊まりでいいだろ! これから歩いて帰るとか、嫌になったぜ!」

 が、俺の提案はブーイングで応じられた。宿屋は、かなりのアレだしなぁ。

「なに実は、ほとんど分かっておらんのよ。ほんの数回ほどしか引き当てた話もなくてな」

 ……そんな雲を掴むような話では、俺らなんかにも頼りたくなるか。

「ばーか! ばーか! 馬鹿、直人! 虫に食われたら、直人のせいだからね!」

 なおも翼は中傷誹謗を繰り返し叫ぶ。……ちょっと酷いぞ、腕白ボーイ!

「前々から思っていたのですが……どうして直人は、この街に適当な家を買ってしまわないのです? あの宿屋に泊まるより、よほど衛生的でしょうし――

 この世界の基準だと、もう私達はお金持ちなんですよ?」

 ……さすが悟だ、冴えてるぜ。もっと早くに言ってくれよ。

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