第三話 ディスカッションと自己表現
今回は短いです!
次の日。
一限は後輩とのグループディスカッションの時間だ。
ディスカッションルームに登校した俺に待っていたのは、一年の花木の雑なイジリだった。
「スベリマン! 昨日の雄姿はまさに勇士! 俺、きちんと見届けてましたよ!」
と、花木は立ち上がって拍手をしながら、教室に入った俺を出迎えたのだ。
生徒たちの視線が集まるのがわかる。
なかには、同情からと思わしき、生笑いを浮かべている生徒もいる。
「スベリマンでござる。切腹すればよろしいか?」
花木の隣に着席しながらそれを返す。花木は、先輩を先輩と思わない言動で有名だ。
相変わらず、こいつの口は絶好調である。まったく、いい性格をしている。
「まーた、今日も絶好調ですねぇ! そうそう、その個性こそ開星高校のエース! 頑張り度トップは伊達じゃないですね!」
「うるさいな! 頑張る人を馬鹿にするな!」
花木は机から身を乗り出して、ニヤニヤしながら悪口を続ける。
「フゥー! 流石の立花先輩ですね! ……今日の授業も暴れるんすか?」
「当たり前だよ。他の脆弱な意見なんて蹴散らしてやる。頑張り度トップの実力を見せてやるよ」
袖をめくり、筋肉を見せつけながら花木に言う。花木は目をキラキラさせて見ている。
そうだ。これが俺だ。
いつだって自分の意見を持った、常に頑張っている高校生。
いつも俺は努力していた。
小学校のときは国際ボランティアに精を出し、中学校では特別努力賞を受けた。
高校ではプレゼンとディスカッションで全国六位の成績を取ったこともある。
今は、開星高校でトップの評価点を取れるように頑張っている。
「いいっすねー。立花先輩って根っからのイイ人で、そのうえで自己表現できるから。俺なんてちょっと悪口言わないと目立てませんよー」
「いや、俺は普通だよ。それは、お前が単に性格悪いだけなの。目立たなくても、自分の意見言っていればいいだろ」
「そう上手くはいかないっすよ。悪口は分かりやすい自分の意見っすからね。演技です、学校の俺は全部!」
「嘘つけ、お前は根っから性格悪いだろ!」
「だから、演技なんですってー」
花木はよよよ、とわかりやすく泣き真似をはじめた。
俺が頑張れば頑張るほど、裏で泣く人が沢山いるのは知っている。
学校選抜のディベートでどうしても自分の意見の根拠を見つけられずに反対だけを唱えたヤツもいるし、ディスカッションで数分沈黙しただけのヤツが、最下位の評価点に沈んだことも知っている。
内心、そいつらを痛ましく思っているが、俺も頑張らなければいけないのだ。
そうでなければ両親の期待に沿うことはできない。両親の期待に沿えなければ、家を追い出されるかもしれない。
そんなことを考えながら、つくづく赤井がいてよかった、と思った。
赤井がいなければ、自分を強く保てなかっただろう。
花木のように意地悪ではないし、自分の意見が無いわけでもない。
あいつがいるから、俺は適度にリフレッシュしながら優等生をやれているのだろう。
今回も読んでくれてありがとうございました!
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