体温ほどのやさしさを
昨秋、白鳥省吾賞に応募した作品です。
漠然とした理想にくらりとして
からだに鉄の重みと無力をおぼえ
わたしはもう前にはすすめない
わたしはもう前にはすすめない
そんな気がめいるような迷路の果てで
わたしはゆめをみていた
芳しい香りもしなければ
めぼしい収穫もないゆめを
やさしさをください
脈打つようなやさしさを
人肌にあたためられたやさしさを
やさしさをください
乱れすさんだ草原のはてで
ただ冷たい風にこおってゆくひとよ、
静止したみずうみの底で
じぶんの鼓動すらも忘れてしまったひとよ、
手をつなごう
手をつないでいよう
体温ほどのやさしさが
こころの虚無をみたすまで
体温ほどのやさしさが
手をほどいたあともじんと残る