ハッピーエンドは自分で勝ち取れ
「さて、長い間ずっとやりたかったことを実行しますか」
エマは縛られた王と王妃と妹二人の前に立った。
「ではまず王からでいいかしら」
「エマ、相手は人間だから加減しろよ」
「そう言えば人間は殴ったことがないからちょっと不安ですね」
王はか弱そうなエマの拳を受け、赦しを乞えば何とかなるだろうと甘い考えでいた。
「娘よ!今まですまなかった。父が悪かった。王の座は魔王に譲ろう。私のことは王から一貴族へと落としてくれて構わない。殴って赦してくれるなら殴ってくれていい!」
エマは無表情なのに怒りが溢れた顔をしているのをルドルフとベイリーは横目で見て恐怖を顔に出さないようにしていた。そしておもむろにエマは王を殴りつけた。王は宙を舞い、ドサリと落ちたときには気を失っていた。
「あなたが父だと言うのも腹立たしいですが貴族になれると思っているお花畑までとは思っていませんでした。殺しはしてません。牢にでもぶち込んでおいてください」
エマを気に入った魔族達が無害そうな人間に牢屋の場所を聞きながら王を連れて行った。
「エッエマ!さっきからなんなの?!無口で無表情だったあなたが別人みたいじゃない!さっきの王を殴ったあのおかしな力も何?!あなたの腕力じゃ無理でしょ!魔族が化けているんでしょ!」
「無口で無表情なのはあなた達に憎まれていたのに感情を出すわけないでしょ?後、あの力はスキル持ちなんです私。あなたぐらいなら簡単に殺せれるぐらいの力を持っているんですよ。あなたを殴るのは一番最後にしてあげますので待っててくださいね」
「いっいやぁぁぁーーーー!」
エマは光の速さで妹二人と王妃を殺さない程度に殴り、とても清々しい顔をしていた。出会った中で一番の笑顔だっただろう。
「エマ、よかったな」
「ええ、とてもスッキリしました。後でもう二、三発ほど殴っておきたいですが」
こうしてルドルフとエマは乗っ取りに成功し、腐敗していた国は活気ある皆が笑顔になれる国へと成長していった。
「エマ〜、結婚したのに忙しすぎてなかなか会えないのが辛い…」
「しょうがないでしょう。魔界もこちらの国も治めているんですから忙しいに決まっています」
「兄上、結婚できたんだから泣き言言わないでください。魔界のほうは父上がなるべく表立って働いてくれてるんですし。それにだいぶ国が安定し始めたのでなるべく夫婦の時間を作ってあげますから」
「ベイリーありがとう!やはり持つべきものは出来る弟だな!」
「今日の午後に何とか休みを作ってあげますので午前は頑張ってくださいね。では私はあちらの仕事をしてきますから兄上はさっさと仕事してください」
ベイリーは忙しそうに部屋から出て行き久しぶりに二人きりになれた。
「やったな、エマ!仕事頑張るか!」
「そうですね、よかったです」
エマはルドルフに近付きキスをした。
「エマ…?」
「ルドルフに出会えてよかった。ありがとう、愛してます」
「俺も愛してます…」
顔を真っ赤にしたルドルフを見てエマはやっぱり可愛いな、と思った。