〜決闘と成長〜
もっとロマンをぶっ込んでみたかった。
闘技場で2人の男女が向かい合っていた。片方は、腐っても貴族、雰囲気からただならぬ存在感がよく見て取れる。
「ふっ、このようなことをわざわざ俺様が直々に相手してやっているんだ。光栄に思えよ平民。」
もう片方は、落ち着いた雰囲気で、木刀を持ち、相手の貴族にも引けを取らないほどの雰囲気を持ち合わせている。
「貴族様なのですから少々言葉を選んでは?」
2人のやり取りを見た後、学長であるバハルド長が、落ち着いた声色で、
「では、この私自らが立会人を務めよう」
一呼吸置くと、すぐに声を張り上げ、
「ルールは簡単、武器、魔法、代行、良し。相手を戦闘不能にする。または、降参させた方の勝ち、命を奪うことは禁止とする!」
バハルド長の構えの合図で、キィが構え、クロアはリラックスした状態である。
「両者、初め!」
先に動いたのは、キィであった。
「一瞬で終わらせてやる。“ウィンドアクセル”」
すると、回りに風が吹き始めたかと思うと、キィは、暴風のごとく突進してきた。
「はは!コレが俺様の実力だ!」
本来の人間なら、この正拳突きで試合が終わっていた。なぜなら、発動し行動し終わるこの行動はわずか数秒で目標を捉え終わっているのだから。
「少し手荒かったかもな。衣服が飛び散っていないと良いがな」
暴風が止むころには、闘技場の壁に大穴が空いていた。
誰もいない大穴が、
「何、、、?」
そして、キィの背後から、
「どうかしましたか?壁などを殴って」
誰もが、目を疑い、声のする方向を見ると、そこには、傷がつく所か、ほこり1つない制服を着ているクロアが立っていた。
「何、、、だと、、、」
半歩、後ろに下がり、キィは今度は、薄笑いの表情を浮かべ、
「ふふ、、、どうやら俺様が無意識に避けてしまったようだな。次は当てるぞ?」
「そうですか」
そういうと、クロアは、木刀を腰に刺した。
「何のつもりだ、、、?」
「次は、当たるのでしょう?でしたらお構い無しにいくらでも来たらどうですか?」
その行動で、完全にキィは声を荒げた。
「どこまで俺様をコケにする!手抜きのつもりか貴様!ならば望み通りにしてやる!!“ウィンドアクセル”!!!」
それから、キィの猛攻はいくつも続いた。まさに、竜巻が、大蛇のようにのたうち回っているようであった。
「クソが、、、、」
「クソが、クソが、クソが!!!」
だが、それよりも驚くべきことに、少女は、華麗に帯刀のまま、その大蛇をかわしていた。
荒れ狂う暴風の中に佇み、暴風が避けるように、暴風の中を優雅に踊っているように、
「何故、、、」
大蛇は、何故、髪一本触れることができないのか分からないでいた。
そして、暴風が収まった頃にはこれ以上激しく動くことが出来ないでいた。
「もう終わりですか?」
少女は、息切れ1つせずそこに立っていた。
「平民、、、ごときが、、、図に、、のるなぁ!!!」
最後に、大蛇が、今まで以上の暴風を生み出し、飛ばしてくると、少女は、木刀を抜き、、、
「ここでは、みな立場は同じなのですよ」
一瞬消えたかと思うと、キィの背後に現れた時には、暴風が嘘だったかのように消え去り大蛇は、膝から倒れた。
一瞬の静寂、そして、
「勝負ありじゃな」
バハルド長の言葉と同時に、回りで観戦していた生徒たちが一斉に大歓喜した。
クロアが、控室に戻ると、キクロだけおり、
「お見事です。お嬢様」
「ありがとうキクロ」
「私自身、大変歓喜しております。」
「そうなの?私コレでも強い種族なんだけどな」
「それは知っています。ただ、、、」
「?」
「あの、お嬢様が、学園を崩壊させなくて大変歓喜しております。成長しましたねお嬢様」
「流石にそれは酷すぎじゃない!?」
個人的に前半より後半のやり取りが好きです。