習作
「な、なあ本当にいいのか?」
気弱な幼馴染のD太がそう言うと、先頭のガキ大将的存在の少年が気に食わない顔をする。
「うっせーな、どうせウワサなんて嘘っぱちだよ。」
「だが、もしもそんな奴が現れたらオレがけちょんけちょんにしてやるぜ」
ガキ大将は拳をシュッシュと突き出し、直後指をポキポキ鳴らす。余裕のあるような表情で言うが、正直不安であるこっちの身にもなってほしいのである。
隣にいるD太を見やると、私とほぼ同じ気持ちなのか表情が不安に彩られている。
「帰れると、いいね」
俯き、ポツリと独り言をこぼす。
なぜか、前にいるガキ大将の足音が聞こえない。いや、ヒグラシの鳴き声も、あの独特な温い気温も、そしてあの星が少ない夜空も、全て無くなった。そこは何も無い青い空間だった。
私はパニックに陥った。ここはどこだとかそんなのは吹き飛び、無き出口へがむしゃらに走った。
広い広い空間、疲れないはずもなく、私はぜえぜえと息を切らし、膝から崩れ落ちる。涙と汗がボロボロと出て、もう何がなんなのかがわからなくなった。
すると、後ろから誰かが駆けつけてきた。誰なのかも構わず私は、助けを求めるが如くそちらを見るが⋯⋯D太⋯⋯否、D太に似た“化け物”が、こちらを見下ろしていた。白Yシャツに少し長めの黒髪、全てが瓜二つだが、顔に大きい穴がポッカリと空いていた。
「R奈、タスケテ」
その声は、D太の声と何者かの声が重なったようだった。直後、甲高い悲鳴を上げながら穴から大量の血が溢れ出す。その体を食い破るように出てきたのは、白く、大きい布を被ったお化けのような怪物だった。
お化けは黒く枝のように細く、鋭い手で私の首を掴み、持ち上げた。グエッと悲鳴をあげ、吐瀉物を吐き出してしまう。
布を裂いたようにできた口を開き、ドス黒く先も見えない穴の中、私はそこに放り込まれたのだった。
ありがとうございました。