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ph58 SSSC開催


 アイギス本部に着いた私は、執事っぽい人。確か田中さんだったかな? その人に腕時計型端末を渡された。SSSCの参加者全員に配られている物らしい。それを装着しながら、田中さんに案内されるまま屋上へと向かう。


 ダビデル島まではヘリで移動するらしい。屋上のヘリポートの上にヘリコプターがあり、既にタイヨウくん達が乗っていた。



「サチコ! おはよう!」


 私に気づいたタイヨウくんが、大きく手を振っている。


 タイヨウくんの隣には、腕を組みながら、いつものポーズでクールに座っているヒョウガくんいた。どうやら私が最後のようだった。時間には全然間に合っているので、慌てずにのんびりと二人の元へと向かった。


「おはよう。また寝坊しかけたんだって?」

「う゛ぐっ!」


 私の指摘に、タイヨウくんの視線が泳ぐ。


「もしかして、ハナビから連絡あったり?」

「ご明察」


 タイヨウくんが気まずそうに頭を掻く。その腕の動きとともに揺れる見慣れないミサンガが視界に入り、ほっこりと心が暖まる。


 赤いビーズが編み込まれた明るい色のミサンガは、タイヨウくんのイメージにピッタリとあっていた。売り物のような綺麗な仕上がりだが、私はこれがハナビちゃんの手作りだと言う事を知っている。情報源はモエギちゃんだ。流石恋愛オタクである。そういった話題には抜かりない。


 タイヨウくんを起こした時に渡したのだろう。彼女が顔を赤くしながら渡してる姿が思い浮かび、いやはや青春ですなと顔がニヤついた。


 是非ともその瞬間を見たかったと親戚のおばちゃんの気分になりながらヘリに乗り込み、どうせいるんだろと警戒しながらクロガネ先輩の姿を探すようにキョロキョロと見渡す。しかし、その予想に反して先輩の姿はなかった。


 ……クロガネ先輩はいないのか。てっきり駄々をこねて、ギリギリまで着いて来ると思っていたのに、意外だな。


「クロガネ坊っちゃんはいませんよ」

「うわっ!?」


 後ろから聞こえた声にビックリして振り返ると、パイロットスーツを着た田中さんが立っていた。


「クロガネ坊っちゃんは最後までサチコ様をお見送りしたいご様子でしたが、コガネ様がお許しにならず、泣く泣くお先にご出発されました」


 あれ? この人私と一緒に屋上に来たよね!? いつの間に着替えたんだ!?


「お見送りできない代わりにと、坊っちゃんからサチコ様宛のプレゼントをお預かりしております」


 田中さんの洗練された動作に流され、思わずクロガネ先輩からというプレゼントを受け取ってしまった。


「坊っちゃんがこの場におられないのは、決してサチコ様を蔑ろにしている訳ではなく、事情があっての事とご理解頂けたら幸いです。そのプレゼントを選ぶ際、私もご同行させて頂きましたが、心を込めて選んでいるご様子でした。坊っちゃんのお心は変わらず貴方様を思っておりますのでご安心下さい」


 おい、何か勘違いしてないかこのじいさん。


 つい受け取ってしまった先輩からのプレゼントをいらないと返そうにも、田中さんは頑なに受け取ろうとしない。このまま押し問答を続けても無駄に終わるであろう事を悟り、取りあえず、プレゼントだといって渡された手のひらサイズの小箱をレッグポーチにしまった。そして、何でこの人がパイロットスーツを着てるんだと訝しげに見ていると、それに気づいた田中さんは好々爺な笑みで笑った。


「ほっほっほ。五金家の執事たるもの、いかなる乗り物の運転が出来て当然ですよ」




 ……マジでか。











 ヘリに乗ること約1時間。見えたダビデル島の景色に驚いた。


 ダビデル島は6つのエリアに分かれていた。5つの島が、真ん中の1つの島を囲むように配置され、全ての島が大きな橋で繋がっていた。


 それぞれ、森林エリア、火山エリア、砂漠エリア、鉱山エリア、湖沼エリアと呼ばれ、それらの島に囲まれた真ん中の島は氷山エリアと呼んでいるそうだ。


 人工物とはいえ、火山がある島の近くに青々しい森林の島があったり、砂漠化している島の近くに氷山があるなど、滅茶苦茶な景色にツッコミを入れたいところだが、どうせ全部マナの力だとごり押しされそうなので諦めた。





 ヘリは、ダビデル島の近くに停泊している豪華客船に向かって飛ぶ。どうやらこの船はSSSC参加者専用の船らしい。ダビデル島に上陸するにはこの船でなければいけないようだった。


 田中さんに船に設置してあるヘリポートの場所に着陸してもらい、ヘリから下りる。すると、腕時計型端末がブルブルと着信を伝えるように震えた。


 端末を起動させると、空中にSSSCのロゴが表示されたディスプレイが現れ、男性と思わしき声が流れた。


『皆さま、おはようございます。本日進行を務めさせて頂きます。アレスと申します。参加者全員が揃ったようなので、サモナーソウルサバイバー杯──通称SSSCを開催する事をここに宣言させて頂きます』


 アレスと名乗った男性は、ディスプレイ越しに淡々と続ける。


『これより、皆様にはダビデル島にてバトルロワイアル形式でマッチをしてもらいます。SSSC参加チームは合計47チーム。その中から最大4チームのみ、決勝トーナメントに出場する事ができます』


『決勝トーナメントに出場する条件は、チームポイントの合計が100ポイントととなり、氷山エリアにチーム全員がたどり着くことです』


『選手1名の持ちポイントは3ポイント。マッチをする前にお互いに賭けるポイントを決め、勝った方が相手のポイントを得る事ができます。チームの合計ポイントが0になった時点で脱落となります。また、チーム間でのポイントの移動も出来ませんのでご注意ください』


 腕時計型端末が震える。端末に視線を向けると、画面に3という数字が表示された。どうやらこの端末でポイント管理をするようである。


『制限時間はありません。先着順となっておりますので、4チームが氷山エリアにたどり着いた時点で終了となります』


『それでは、皆様か悔いの残らぬような全力のマッチが出来ることをお祈り致します』


 アレスの言葉が終わると同時に、足元が光出す。そして、薄れていく自身の体に嫌な予感がしながら下を見ると、いつの間にか大きな魔方陣が描かれていた。


 これって転送魔方陣では? え? これでダビデル島に飛ばされるのか?


「影薄!!」

「サチコ!!」


 タイヨウくんとヒョウガくんが私の方へと手を伸ばす。このままバラバラになるのは不味いと私も手を差し出すが、触れる前に私の腕が消えた。


 2人の焦った表情が見えるが、タイヨウくんの体も、ヒョウガくんの体も半分以上が透けている。こりゃ後で合流するしかないなと諦め、せめて砂漠や火山エリアに飛ばすのは止めてくれと祈りながら目を閉じた。



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