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ph2 サチコVSタイヨウ

カードバトル回です。サモンマッチのルールは雰囲気で伝われば幸いです。

 足元の魔方陣が周っている。どうやら私が先行のようだ。腕輪に掌を被せ、その手を前にスライドさせてカードをドローする。


 モンスターの体力はレベル×5だ。影法師は10、影鰐は15の合計で25ある。タイヨウくんのモンスターもわたんぼは5、アチェリー5、ドライグ15の計25だ。


 サモンマッチのモンスターの攻撃力は基本的には1~3で1フェイズに一回攻撃をしてくる。たまにダブルアタックができるモンスターもいるから要注意だ。


「私はMPを3消費し、魂狩りを装備する」


 残りMPが2になり、私の右手には大鎌が現れる。


「魂狩りの効果を発動します。相手のMPを2ポイント吸収する」

「うっ」


 私が大鎌を振ると残撃が飛び、タイヨウくんに当たる。そしてタイヨウくんのMPが減り、私のMPが2から4になった。


 モンスターのスキルを使うにはMPがいる。レベル1のモンスターならMPは1。レベル3ならMPは3必要になるから、面倒な攻撃を避けるには相手のMPを奪うのが一番だ。


「私はMPを2消費し、影法師のスキル影渡りを発動。影と名のつくカードをサーチできる。影法師」

「りょうかいマスター!」


 私の腕輪から一枚のカードが飛び出し、目の前に浮かんでいる手札に加わる。


「MP1を消費して魔法カード影舞を発動。レベル3以下の影と名のつくモンスターの攻撃を二回行えるようにする。対象は影鰐」


 影鰐に魔法エフェクトがかかる。これで攻撃の準備が整った。


「影法師と影鰐でわたんぼを攻撃」


 影法師の攻撃力は1。影舞で二回攻撃出来る影鰐の攻撃力は2。順当にいけばわたんぼは倒せるが……。


「MP1を消費してわたんぼのスキル、ワタガード発動! 相手の攻撃を2軽減する!!」


 わたんぼから綿毛が飛び出し、綿の壁が生成される。影鰐と影法師の攻撃で綿の壁は崩れるが、わたんぼの体力は2残っている。


 やはり、わたんぼのダメージ軽減スキルを使うか……アチェリーのスキル効果はモンスターの装備カードを破壊するものだったから迂闊にモンスターに装備カードを使用することもできない。


「……私はフェイズを終了します」

「へへっ、じゃあ次は俺の番だな! ドロー!」


 タイヨウくんはドローすると同時にMPが3回復する。残りMPは5だ。


「俺は大地の斧をドライグに装備させる! ドライグの攻撃力はプラス1され、3になる! 更に、MP1消費してブリテンの加護を発動!5フェイズの間、俺のMPの回復量が1増える!」


 あー、やっぱMP増強魔法くるかぁ。厄介だなぁ。……いや、相手のMPを奪うプレイングする私が言えた事じゃないけどね。逆に自分がされたら絶対に嫌だわ。


「MP3を消費してスキル湖からの目覚めを発動! この攻撃の攻撃力が2倍になる! 影法師に攻撃だ! いけ! ドライグ!!」

「小僧! 偉そうに指図するなと言うとろうが! もっと低姿勢で言わんか!!」


 ドライグは文句を言いながらも影法師に攻撃する。ドライグはタイヨウくんの精霊で、タイヨウくんとよくケンカをしている。しかし、不満を訴えるくせに素直に言うことを聞いてるところを見るに、ドライグはツンデレなのだろう。ケンカする程仲が良いと言うやつだ。


 そんな無駄な分析をしつつ、手札からカードを一枚取り出した。


「MP1を消費して魔法カード影隠れを発動! 影法師、影に隠れて回避」

「おっけー!」


 影法師はドライグが攻撃した瞬間影に潜り、斧を回避する。


「それならダブルアタックだ! ドライグ、もう一度攻撃だ!!」

「わしの話を聞け!」


 ドライグの攻撃が影法師に直撃する。モンスターが攻撃を受けると、召喚者したサモナーにもダメージがくるため、ビリビリとした痛みが走る。


「わたんぼとアチェリーも影法師を攻撃だ!」


 ドライグに続き、わたんぼとアチェリーの攻撃を受け、影法師の残り体力は5になってしまった。


「俺のフェイズはこれで終了だ!」


 タイヨウくんはニコニコと笑いながら、楽しそうにサモンマッチをしている。次はどんな攻撃をしてくるんだろうとキラキラした目で此方を見てくる。


 なんか、すごい主人公だなぁって思う。


 これってアレか? 主人公に感化されて、貴方と戦えて初めてサモンマッチが楽しいと思えたの。ありがとう。みたいな感動エピソードをしないといけないのか? そして主人公に惚れてしまうみたいな展開になるのか?


 いやいや、流石にそれはないか。それにこれはこの世界がアニメの世界だった場合の想定だし、アニメだとしてもそんなチョロインいるわけないか。……いないよな?


 このマッチが終わった後を不安に思いつつもカードをドローする。


「私は魂狩りの効果発動。相手のMPを2奪う」


 装備カードは一度装備すると、破壊されない限り永久的に効果を使える。フェイズ開始時と奪取した分で現在のMPは5だ。そして相手にMPはない。魔法やモンスター効果を使用される心配もない。


「私はMPを1消費して装備カード冥界の使者の衣を装備。この装備をしている間は、相手モンスターにダメージを与える度に1体につきMPを1回復する。更に装備カード闇の角を影鰐に装備。影鰐の攻撃力がプラス1される」


 モンスターは、装備カード(武器)を1枚しか装備出来ないが、プレイヤーは装備カード(鎧)と装備カード(武器)を1枚ずつ装備できる。これで私の戦闘準備は完成した。


「MPを3消費し、影鰐のスキル影喰らいを発動。この攻撃が全体攻撃になる……」


 影鰐が影の中に潜ると、フィールドに大きな魚影が現れる。魚影は相手モンスターの方に向かって泳ぐと、相手モンスターの足元から影鰐が現れ、その大きな口で3体とも飲み込んだ。


「うぐっ!」


 わたぼんは消滅し、アチェリーの体力は残り2、ドライグは残り12になった。そして、私のMPはさっき攻撃が成功したことにより4ある。


「私はMP1を消費して魔法カード影舞を発動! さらに3消費して影鰐のスキル影喰らいも発動させる! 影鰐! もう一度攻撃!! 影法師も一緒に攻撃しろ!」


 影鰐の攻撃でアチェリーも消滅した。ドライグの残り体力も8である。


「……私のフェイズは終了します」


 私の残り手札は2枚。そして衣のお陰でMPは2ある。私が有利ではあるが油断は出来ない。タイヨウくんはどうでるかと見つめていると…。


「……へへへっ」


 タイヨウくんはいきなり笑いだした。


 え? 何? 私何か面白いことした? 彼の笑いのツボが分からない。


「サチコ強いな! 俺、今すっげー楽しいよ!!」


 ……あぁ、熱血主人公あるあるか。強敵と戦ってピンチになると面白いと感じるドM思考ね。私には一生理解できないな。



「……それはなにより」

「ぜってぇ負けねぇからな!」


 タイヨウくんは勢いよくドローする。



「俺のフェイズだ! ブリテンの加護の効果でMP4回復! 更に、道具カード魔術師の秘薬を発動! MPを3回復する!」


 一気にMPを7まで上げるか…彼の手札は4枚…どう動く?


「ドライグのスキル湖からの目覚めを発動! この攻撃の攻撃力を2倍にする! ドライグ! 影法師を攻撃だ!」


「MP2を使用して影法師のスキル影縫い発動! このフェイズ中の相手モンスター1体の攻撃を不能にする!」


 これでドライグしかいないタイヨウくんは攻撃できない。このまま素直にフェイズを終了させてくれたらいいんだけど……。


「俺はMPを2消費して魔術師の助言を発動! 相手モンスターのスキルを無効にする!」


 ですよね! そう簡単に勝たせてはくれないのね!!


「ドライグ!」

「分かっておる!!」


 ドライグが影法師に向かって斧を振り上げる。


「ますたー……ごめ……」

「影法師!!」


 影法師がドライグの斧で切り裂かれた。同時に、私の全身にさっきとは比べ物にならない程の痛みが走る。


「っ、あぁあぁぁ!!」


 モンスターのダメージがサモナーに伝わる事をフィードバックと言うのだが、これが自身の精霊が倒されたとなると桁違いに痛い。私は大鎌を杖代わりにしながら体を支えつつ、タイヨウくんを睨み付ける。


「ドライグ! ダブルアタックで影鰐にも攻撃だ!!」


 MPのない私には影鰐を守る術はなく、影鰐が攻撃されるのを見守ることしかできない。


 ……まだ大丈夫だ。影鰐の体力は12も残っているのに対し、彼のドライグは8しかない。次のフェイズで持ち直せば全然巻き返せる。


「更にMPを1消費して魔法カード王の激励を発動! レベル3以下のモンスターをもう一度攻撃させる事ができる!」

「は?」


 ドライグの再攻撃により影鰐の体力がのこり9になる……まずい、もしも次のフェイズで対策ができなければドライグの湖からの目覚めからのダブルアタックで詰む。


「俺のフェイズは終了だ! サチコ! お前の番だぜ!!」


 私はドローすると、魂狩りを発動させた。MPは1しか回復かできないが、相手のMPを0にしてしまえば殴り放題だ。


「俺はMPを1消費して魔法カードブリテンの砦を発動! このフェイズ中、相手モンスターから受けるダメージを1軽減する!!」

「!?」


 くっそ、砦は想定外だった。只でさえ此方の火力は低いのに防御力を上げられてしまえばドライグの体力を削りきれない。それに、MPを使用されてしまったから回復もできない。


 私の今のMPは3、手札も3枚。影鰐は装備のお陰で攻撃力が3になってるが、砦のせいで影舞を使っても4しかダメージを与えられない。そうしたら相手の番で即終了だ。


 土壇場で巻き返してくるとか主人公補正がすぎるだろう。いや、勝ち筋はあるはず……考えろ……考えるんだ。……面倒臭くなってきたな、やっぱりここらで負けてさっさと終わらせようかな。


「サチコ!」


 タイヨウくんは満面の笑みで話し掛けてくる。


「サモンマッチ楽しいだろ!!」

「い……」


 いや別に? 思わずそう言いそうになるが、ふと直感が働き、自身に待ったをかける。


 あれ? これってキッズアニメで良くあるカウンセリングシーンじゃないか? 主人公に心動かされて感動する場面ではないのか? マッチが終わったら適当なところで楽しい発言しようと思っていたが、今が絶好の機会ではないだろうか? いや寧ろ今しかないだろう。


 私はそう結論付けると、彼の話しに合わせる為に口を開いた。


「うん、楽しい」

「!」

「でも……勝てたらもっと楽しい!」

「ははっ……そうこなくっちゃな!」


 タイヨウくんは嬉しそうに笑う。どうやら私の回答は正解だったようだ。


 さて、流れのノリに乗ってしまったので、ここで簡単に勝負を諦める訳にはいかない。せめて一矢報いるぐらいにはやらないとな。


「私は道具カード手札増強の護符を発動! デッキからカードを二枚ドローする!」


 私は引いたカードを確認してふっと笑った。


「MP1消費して魔法カード陰影を発動! 自身のモンスターを1体選択し、選択したモンスターはこのフェイズ中相手の魔法カードの影響を受けない! 影鰐! ドライグを攻撃!」


 影鰐がドライグを攻撃する。ドライグの残り体力は5


「更にMP1を消費して魔法カード影舞を発動! 影鰐! もう一度攻撃!」


 影鰐の攻撃が成功する。ドライグの残り体力は2になった。私のMPは冥界の使者の衣のお陰で3もある。


「最後に、影鰐のスキル投影を発動! このフェイズ中に自分が使用した魔法カードの分だけ相手モンスターにダメージを与える!!」


 私の使用した魔法カードは陰影と影舞の二枚だ。そしてドライグの残り体力も2。


「私の勝ちだ!」

「いいやまだだ!」


 タイヨウくんは楽しそうに叫ぶと、右手を上に掲げた。


「俺はブリテンの砦を破壊して効果発動! 自分のモンスター1体を選択し、相手からのダメージを1残して耐える! ドライグ! 大丈夫か!?」

「……っ、問題ないわい!」


 ブリテンの砦強すぎないか?これで消費MP1とか詐欺だろ。


「……私は影鰐に装備している闇の角を破壊し、MP1を回復してフェイズを終了します」


 私の残り手札2枚のうち、1枚は影隠れだ。次のフェイズは持ちこたえる事ができると思うのだが……。


 なんだろう、不安しかない。例えるなら、主人公がピンチの時にアニメのOP曲が流れて逆転される的な雰囲気が漂っているみたいなアレだ。


「……っ、タイヨウくん……」

「大丈夫だよハナビちゃん。タイヨウくんは負けない。……この僕に勝ったんだ、こんなところで負けるのは許さないよ」


 だ れ だ お ま え!!


 ハナビちゃんは分かる。タイヨウくんの幼馴染みでヒロインだろ? じゃあギャラリー席にいてもしょうがないね。だってヒロインだもの。


 でもその隣で強キャラ感出してるお前は誰だよ。何当然のようにレギュラー面して座ってんの? あれか? 精霊持ちになったタイヨウくんの実力を測ってやるとか上から目線で勝負挑んで負けて改心したとかそんなんか?


 どうでもいいが逆転劇の流れを持ってくんのやめろ。なんか嫌なんだよ…こう、なんとも言えない気持ちになるというか自分が何か悪いことしてる気分になるだろうが。


「俺のフェイズだ! ドロー!!」


 タイヨウくんは無駄に勢いのあるドローをする。タイヨウくんの手札は2枚になり、MPは4になった。


「ドライグ! 勝つぞ!!」

「当たり前じゃ!!」


 ドライグは影鰐に攻撃を仕掛けてきた。影鰐の体力は6になるが、まだ影隠れを使うタイミングではない。


「ダブルアタックだ!」


 更に影鰐の体力が減り、残り3になる。タイヨウくんの手札は2枚でMPも4ある。ドライグの攻撃は終わったが多分、手持ちカードの1つは……


「MPを1消費して魔法カード王の激励を発動!!」


 やはり予想した通りのカードを持っていた。ハナビちゃんとレギュラー面している少年がタイヨウくんの勝利を確信したかのごとく笑う。


「私はMP1を消費して魔法カード影隠れを発動! 影鰐、ドライグの攻撃を回避だ!!」


 まぁ、そう簡単に負けてはやらないが…ハナビちゃんと隣の少年の笑みが消える。しかし、タイヨウくんの笑みは消えなかった。


「やっぱり……そのカード持ってたか」


 私が攻撃を回避する事を確信していたタイヨウくんは、自身の精霊の名前を力強く呼ぶ。


「MP3を消費してスキル勝利への執念を発動!!この攻撃を絶対必中にする!!」


 あー……これは無理だわ。


 今完全に主題歌が流れてるわ。残り体力1からの逆転劇とかそんなん完全にアニメじゃん。主人公補正強すぎるわ。


 私は敗北を受け入れるようにそっと目を閉じた。










「楽しいマッチだったぜ! またやろうな!!」


 いや勘弁してください。


 タイヨウくんはニコニコと勝負する前と同じような圧倒的光属性の笑みで握手を求めてきた。ここは、握手に応じて綺麗に別れる場面だろうと、二度と関わりたくないと思いつつも握手に応じた。


「……うん、次は負けない」


 ここは笑みでも浮かべといた方が良いだろうと口角を無理やりあげて笑顔を作った。すると、タイヨウくんは目を見開き固まった。しかし、それは一瞬の事で直ぐに満面の笑顔に戻る。


「サチコ、お前笑ってた方がすっげぇ可愛いよ!」


 やめろ。息をするように口説くな。主人公あるあるのド天然発言とか洒落にならんぞ。


「これはライバル出現の予感ですね、ハナビさん」

「なっ! 私は別にタイヨウくんとはそんな……」


 だ れ だ お ま え!


 誰だよその眼鏡をかけた地味系の男の子は…この流れ二度目じゃね?


 あれか? 主人公の腰巾着して解説とかしたりする便利キャラか? ふざけんな余計な発言してフラグ建てたらタダじゃおかねぇぞ。そしてハナビちゃんも変な心配しないでくれ。タイヨウくんと私がそんな関係になることは絶対にないから。というかハナビちゃんの隣にいた強キャラ感ある少年は何処行ったんだよ。


 色々とツッコミたくなるのをグッと堪え、三人との話を適当なところで切り上げると、私はそそくさとバトルフィールドから去った。


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