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ph199 最強を決める日

 先輩のタイヨウくんへの一方的な言いがかり騒動がひと段落したあと、私はアゲハちゃんたちと合流し、そのまま試合観戦へ。


 本戦出場者にはチケットなしで観戦できる権利があり、その特権にあやかってタイヨウくんとヒョウガくんの試合を観ることにした。


 二人ともいい顔でマッチしている。会場も、ママヲさんの熱血実況とセツオさんのテンション高めな解説で大盛り上がりだ。


 タイヨウくんへの力強い声援に、ヒョウガくんのファンクラブらしき黄色い声まで飛び交って、国民的人気アイドルのライブ会場のような雰囲気になっている。


 そんな中、アゲハちゃんがハナビちゃんに「アンタもタイヨウに黄色い声援飛ばしたら?」と茶化し、ハナビちゃんは「も、もう!」と照れながらぷいっと横を向いた。……可愛いかよ。


 そんな微笑ましいやり取りを眺めていた、ちょうどその時──


「っ、クソが!」


 どすん、と私の隣に豪快に腰を下ろしたのは、悪態とともに現れた渡守くんだった。


「あ、四回戦でヒョウガくんに負けた渡守くんじゃないですか。お疲れ様でした」

「一言多いんだよテメェは!」

「すみません、根が正直なもので」

「チィッ……!」


 盛大に舌打ちしながらも、渡守くんの視線はバトルフィールドに釘付けだ。


「……ヒョウガくんの応援ですか?」

「ンなわけあるか殺すぞ」


 暴言が飛んできたが、目はしっかりとフィールドに向けたまま。


 ……このツンデレめ。


 天邪鬼な態度の渡守くんに内心呆れていると、トントンと肩を叩かれた。振り向くと、アゲハちゃんが気まずそうな顔でこちらを見ている。


「……あたしら、席外した方がいい感じ?」

「いやなんで?」


 席を外すならどう考えても後から来た渡守くんの方でしょ。ハナビちゃんも「本当に大丈夫? 邪魔じゃない?」とか言わないで。何が悲しくて渡守くんと二人で観戦しなきゃいけないんだよ。二人が立つなら、私は意地でもついてくからな。


 そんな謎の気遣いに、心底やめてくれと思っていると……。


「サチコちゃ〜ん! 僕も混ぜてぇ〜!」


 明るい声と一緒に、背中に軽い衝撃が走った。振り返ると、元気いっぱいのユカリちゃんが私の背中に抱きついていた。


「センくんどいてよぉ。サチコちゃんの隣は僕の!」

「ウルセェ、俺に指図すんなクソチビ」


 当然のように拒否されていた。しかもビクとも動かない。……頑なすぎる。どんだけ命令されるのが嫌なんだよ。


「ユカリ様、急に抱きつくのは危ないですよ」

「だいじょーぶだも〜ん!」


 そのまま当然のように膝の上に座ってくるユカリちゃんに、私は少し戸惑いながらも相手をする。その横で付き添いのエンラくんが「すみません」と丁寧に頭を下げてきたので、私は軽く手を振り、「気にしないで」とジェスチャーで応じた。


 ふと視線を上げると、後ろではアボウくんとラセツくんが周囲の観客にひと声ずつ丁寧にかけながら、座れるスペースを探しているのが見える。


 結果的に、周囲の観客たちが快く場所を譲ってくれたおかげで、前後の列に散らばりつつも自然と近くに集まるかたちで観戦することができた。


 ──や、優しい世界!


 そのあとアボウくんは、近くにいたハナビちゃんとアゲハちゃんにも「お嬢から話は聞いてるじゃんよ。いつも世話かけちまって悪いな!」と、観戦の邪魔にならない程度に明るく話しかけていた。


 二人が気まずくならないよう、さりげなく空気を和らげるようなその振る舞い。初対面の場でも気を遣わせない、絶妙な距離感と自然なノリに、思わず感心する。


 ……な、なんてやつだ!? あいつ、本当に小学生か!?


 そのコミュ力と気遣いレベルの高さに驚愕していると、膝の上のユカリちゃんがチョンチョンと私の腕を突いてきた。


「サチコちゃん、サチコちゃん」

「どうしたの? ユカリちゃん」

「あのね、僕ね……」


 一拍置いて、ユカリちゃんはぽつりと言葉をこぼした。


「僕ね、RSGが終わったら……もう、今までみたいにサチコちゃんと遊べなくなっちゃうんだ」

「え……?」


 ユカリちゃんは寂しそうに、私の服の端をぎゅっと握る。


 周囲はヒョウガくんとタイヨウくんのマッチで盛り上がっていたけれど、私たちの間だけ時間が止まったようだった。


「それって……どういう意味?」

「本格的にね、天眼家の次期当主教育を受けることになったんだよ。それで、エンラとアボウとラセツは、僕の補佐として本家に残ることになったの」


 私はユカリちゃんの手に、そっと自分の手を重ねる。


「……無理やりじゃないよね?」


 私の問いかけに、ユカリちゃんは「大丈夫だよ」と微笑んで、安心させるように頷いた。


「僕が望んだことだから……」


 そのまま私の胸元に頭を預けて、私にしか聞こえない小さな声で続けた。


「……ほら、サチコちゃんも知ってると思うけど、僕ってさ、長生きできない予定だったでしょ? だから昔は、婚約者だけ決められて、血を残したら終わり……そんなふうに決められてたんだ」


 私は思わず、ユカリちゃんの頭をそっと抱きしめた。


「でも、もう違うんでしょ?」

「うん。世界の仕組みが変わったからね。おかげで、これからも生きていける」


 ユカリちゃんの声は穏やかで、その先に語られる未来は、とても明るくて、眩しかった。


「絶対に、いっぱい長生きするんだぁ……サチコちゃんと一緒に歳を重ねて……それから、サチコちゃんと同じぐらい大切な人に出会って、結婚して、子供ができて。サチコちゃんの子供と友達になれたら嬉しいな。恋人になってくれたら、もっと嬉しい。家族になって、孫も生まれて、それでね……大切な人たちに囲まれて、静かに人生を終えられたらいいなって思ってる」


 ──優しく、でも確かな決意が込められていた。


「でもね、その未来を叶えるためには……まだ邪魔なものがいっぱいあるんだよねぇ」


 ユカリちゃんは悪戯っぽく笑ってみせる。


「だから僕が天眼家のトップになって、色んなことを変えてやるの。あ、サチコちゃんもさ、もし将来、旦那が嫌になったらいつでも言ってね。問答無用で離婚させるから! ない証拠もでっちあげてみせるよ!」

「それはさすがにダメでしょ」

「なんで? せっかく当主になるんだから、私物化してなんぼでしょ?」

「ははっ……次期当主様は、悪い子だね」

「そんな僕も可愛いでしょ?」


 ユカリちゃんの笑顔につられて、私もつい吹き出してしまう。


 たわいないやりとりだった。けれど、その軽口が心をほどいていく。


 そんな穏やかな空気を打ち消すように、会場が一気にざわめきに包まれた。


『──ッたぁぁぁぁぁぁ!! 決まったぁぁぁッ!!』


 ママヲさんの雄叫びのような実況が、会場のスピーカーが爆発するかの如く響き渡った。


『ギリギリのせめぎ合いを制したのはぁッ! 太陽のように輝く少年、晴後タイヨウ選手だあああああ! 会心の一撃ッ!! 魂の一閃ッ!! 冷酷無比な氷のカウンターを、その情熱で打ち破ったあああッ!! 氷川ヒョウガ選手、ここで無念の敗退いいいいいッ!!』


 どっと湧き上がる観客の歓声。割れんばかりの拍手と叫びが、ネオ東京サモンアリーナを揺らす。


 私たちのまわりでも、アゲハちゃんやハナビちゃん、アボウくんたちが、次々と立ち上がって拍手を送っている。


 私とユカリちゃんも顔を見合わせ、笑い合ってから同じように立ち上がり、拍手を送った。




 こうして大会二日目が幕を下ろし、ベスト8が出揃った。


 その中に残ったのは、クロガネ先輩、タイヨウくん、そしてシロガネくんの三人だった。


 私は明日も特権を利用して観戦を行うため、今日は余韻に浸る間もなく、早めに家へと帰ることにした。






『さああああ、ネオ東京サモンアリーナッ! RSG三日目もヒートアップ中ぅぅッ!! 激戦を勝ち抜いた猛者たちによる準決勝第一試合ぃぃ!!』


 大会はついに三日目。準々決勝を経て、いよいよ準決勝に突入する。


 私は観客席から、静かにフィールドを見下ろしていた。


 他のみんなはタイヨウくんの応援だ。私は一人、隠れるようにしてこの会場にいる。


『準決勝第一試合に登場するのはこの二人ぃぃッ!! 気品と美貌を兼ね備えた、まさに歩く芸術ッ!! その完璧すぎる王子スタイルと甘いマスクで、ファンクラブは現在・公・認・で・三つぅぅ!? 白き貴公子──五金シロガネ選手だあああッ!!』


「きゃあああああああ! 素敵いいいいいいい!!」

「こっち見てええええええ! ああああああ! 私死んでもいいいいい!!」

「シロガネ様ああああ! 頑張ってええええええ!!」


 フィールドに登場した瞬間、場内のあちこちから黄色い声援が飛び交う。……相変わらず、ものすごい人気だな。


『そして対するは──ッ!! 無愛想? 粗暴? だから何だッ!? その全てを貫くは圧倒的な強さッ!! 止まることなき全勝街道を突き進む、黒炎を纏いし地獄の覇者──五金クロガネ選手だああああッ!!』


 どよめきと共に湧き起こるのは、熱狂にも似た興奮。私の前ではしない不機嫌そうな顔、つっけんどんな態度。なのに、会場の注目を集めてしまうような、強い存在感を放っている。


「うおおおおおおお! やったれえええええクロガネええええええ!!」

「またお前の強さを見せつけてくれえええええ!!」

「あのキザ野郎をぶっ倒せええええええ!!」

「ちくしょおおお! モテるからっていい気になってんじゃねえぞナルシスト貴公子がよおおおお!!」


 ……なんか、私怨たっぷりな声援が混じってる気がするけど、気にしないこととする。


『しかもぉぉッ!! この二人、なんと五金財閥の実の兄弟だああああッ!! 同じ家に生まれ、同じ道を歩み、そして今ッ! この決戦の舞台で真っ向勝負ッ!! これが血の宿命!? 最強の座を賭けた魂の対決だあああ!!』

『きゃあああ〜ッ、来たわ来たわぁッ! 兄弟対決ってだけでもご飯三杯いけるのに、よりにもよってクロガネ選手とシロガネ選手よぉッ!? これはもう……伝説確定よぉぉんッ!!』


 解説席ではセツオさんが、椅子から転げ落ちそうな勢いで身を乗り出している。


「……()さん」


 静かに、だが確かな決意を込めたシロガネくんの声が響いた。


「僕は今日、貴方(・・)を超える!!」


 彼はすっとMD(マッチデバイス)を構え、まっすぐ先輩を見据える。


 そこに、かつて先輩を見下していた彼の姿はなかった。


 一人のサモナーとして、先輩に立ち向かおうとしていた。まるで挑戦者のように、強敵を前に向き合う者の目だった。


「正義の審判を始めよう──コーリング! ミカエル! アズラエル!」


 金色の光が降り注ぎ、翼を広げた天使が降臨する。


「……興味ねぇよ」


 クロガネ先輩もまた、ゆっくりとMD(マッチデバイス)を構えた。


「ぶち殺せ──コーリング。ブラックドッグ、ロギウル」


 黒炎が走り、唸り声と共に地獄の獣が地を踏み鳴らした。


『シロガネ選手……ッ! なんて凛々しくて清楚なの……ッ! お顔よしッ、所作よしッ、性格よしッ!! ああんっ、もうっ! 最推しいぃぃい〜〜ッ!!』

『解説ぅぅ、欲望が漏れてるうううッ!! だがそれがいいッ!! そんなシロガネ選手が、この準決勝でどんな輝きを放つのかぁぁッ!! そして対するクロガネ選手は──弟の挑戦、正面から受け止める構えだああ!! この試合(マッチ)……互いにとって、ただの勝負じゃねえッ!! 運命を分かつ、宿命の一戦(マッチ)だあああッ!!』



『さあ、みなさんご一緒にぃぃぃッ!! せえええええのッ!! ──レエエエエエッツ! サモオオオオオン!!』


 そうして、因縁の五金兄弟対決が幕を開けた。





 





 私はただ、呆然としていた。空いた口が塞がらない。


 あまりにも一方的だった。……いや、最初から勝負は決まっていたのかもしれない。


 そう思えるほどに。どれだけ手を尽くしても、その一手先を読まれ、打ち返される。


 反撃の糸口すら与えられないまま、試合は淡々と進んでいく。


 誰も声を出せない。誰も目を逸らせない。


 クロガネ先輩の圧倒的な強さが、空気を、場を──すべてを黙らせていた。



「はぁっ、はぁ……!」


 手札もMPもなくなり、膝をつきそうな体で、それでもシロガネくんは必死に立ち向かっていた。


「くっ、僕はまだ……! ダストゾーンにある──」

「MP1を消費して魔法カード、業火の牽制を発動」


 低く響く声が、冷たく戦場を断ち切る。


「このフェイズ中、相手が魔法カードを使用した瞬間に発動できる。その効果を無効化し、さらに2ダメージを与える」

「あ──っ!!」

「くっ、主!!」


 ミカエルのフェイクソウルが砕け、光の粒となって消えていく。これで、クロガネ先輩の攻撃を防ぐ術は完全になくなった。


「……ブラック、やれ」

「はいよっ!」


 まるで、もう勝敗は決まったと言わんばかりに背を向ける先輩。同時に、ブラックドッグの牙がミカエルを捕らえた。


 神聖な羽根が千切れ、眩い光の破片となって宙に舞う。それは、大天使が最後に残した痕跡だった。



 静寂。



 歓声も悲鳴も出ないまま、観客席は凍りついたように沈黙していた。


 ──だが。


『は、はぁぁぁあッ!? お、おいおい……終わったぞ!? 終わっちまったぞぉぉぉッ!!』


 沈黙を破ったのは、ママヲさんの震えるような絶叫だった。


『五金クロガネ選手、準決勝ッ!! またしても圧倒的勝利いいいいいい!! ここまで全試合がほぼ完封ッ!! まるで嵐ッ! まるで猛獣ッ!! 容赦なしの妥協なし! これぞ黒鉄の灼熱ッ!! 五金クロガネッ!! この男、ほんとに止まる気ねえぞおおおッ!!』

『ぐ、ぐふっ……すごいわ……! ワタクシ、あまりの鮮やかさに一瞬脳内が真っ白になったわよぉん! あれはもう、圧倒じゃなくて粉砕! 会場ごと持ってかれる勢いだったわッ! これぞクロガネ選手の真骨頂よおおお!!』


 それを皮切りに、ようやく観客席からも感情が爆発する。


「うおおおおおおッ!!」

「すっげえ……!」

「クロガネ選手やばいって……あれ、もう人間じゃねぇ!!」

「強すぎて言葉が出ねぇ……!」


 歓声、どよめき、悲鳴、称賛──すべてがないまぜになって、ネオ東京サモンアリーナを埋め尽くしていく。





 え? 待って、クロガネ先輩つっっよ! 私あんなのに勝ったの? ま? 


 先輩が強いのは知ってた。知ってたけどさ、こんな……まさか、あのシロガネくんですら、あそこまで一方的にやられるなんて……。


 シロガネくんの実力を知っている分、改めて実感する先輩の異常な強さ。


 無言で会場を去っていく先輩の後ろ姿を見ながら思う。


 もしかして、あの時勝てたのは──


 いや、今さら考えても仕方ない。もう、決勝戦が待ってる。タイヨウくんの方も、そろそろ決着がついてるはず。みんなと合流しよう。


 そう思考を切り替えて、私は決勝戦が行われる会場へと向かった。






 ネオ東京サモンアリーナで、最も大きな観客収容数を誇るA会場。その中央に設えられた特設バトルステージの上──決勝戦は、そこで行われようとしていた。


『さあああああッ!! ネオ東京サモンアリーナが震えるぅぅッ!! リジェネシス・サモンマッチグランプリことRSG! いよいよ決勝戦の開幕だああああッ!!』


 ママヲさんの絶叫が、会場中の熱気をさらに押し上げる。


『今日ここまで、数多の猛者たちをなぎ倒し、勝ち残ったのはこの二人ッ!! まさかの顔合わせッ! 驚きの対決カードッ!! 誰が予想した、このファイナルバトルをおおおッ!!』


 演出による火花と煙が噴き上がり、上空のホロビジョンに二人の選手が映し出される。


『まず紹介するのはこの男ッ!! 一次予選はギリギリのボーダー通過ッ! 二次予選でも最下位から這い上がりぃ、本戦では初っ端からランキング2位を撃破ぁッ! 続く強豪戦も正面突破ッ!! 崖っぷちを生き抜いてきた熱き挑戦者ッ!! 晴後タイヨウ選手だああああああッ!!』


 ホロビジョンに映るのは、土壇場で逆転するタイヨウくんの姿……どれもギリギリで勝ち抜いてきた、手に汗握るシーンの数々だ。


『どこまでも前向きッ! どこまでも一直線ッ!! 真っ赤に燃える闘志と全力スマイルで会場を照らし続けてきたッ! まさに今大会最大の熱源ッ!!』


「タイヨウおおおおッ! 信じてるぞおおおッ!!」

「ぶっちぎれええええええ!! このまま優勝だああああッ!!」


 歓声に応えながら、タイヨウくんがバトルフィールドに登場する。


『そして対するは──ッ!! 一次予選から猛き牙を振るい、誰一人近づけぬ無双の進軍ッ!! 二次予選も首位のまま突き進みッ!! 本戦では焼き尽くし、薙ぎ払い、ただ一方的に勝ち続けるッ!! 五金クロガネ選手だああああッ!!』


 ホロビジョンが切り替わる。映し出されるのは、次々と敵を圧倒していくクロガネ先輩の姿だ。


『容赦なし! 妥協なし! 叩き潰すだけの試合運び! 誰の挑戦も一撃で沈める破壊力!! この男こそ、本大会最強の象徴── 無慈悲の猛王うううううう!!』


「圧勝以外いらねえぞ、クロガネええええ!!」

「焼き尽くせぇぇッ!! 無慈悲の猛王うううううう!!」


 観客の歓声が渦巻く中、先輩はゆっくりとバトルフィールドへ歩みを進める。無表情なその横顔には、揺るがぬ自信が現れていた。


『さあッ!! 真逆の道を歩んできた二人が、今ッ!! この場所で正面衝突するッ!! 運命を切り開くのは──太陽の拳か、猛王の鉄槌かッ!!』


 両者が、マッチデバイスを掲げる。


「先輩、楽しいマッチにしようぜ! コーリング! アグリッド! ツァイトウルフ! モグレット!」

「……ぶち殺せ、コーリング。ブラックドッグ、ロギウル」


 二人のモンスターたちが、同時に召喚される。咆哮と振動が重なり合い、会場の空気が一気に張り詰める。


『いざ尋常に──レエエエエエッツ、サモオオオオオオンン!!』


 燃え上がる決戦の舞台。


 激突する意志と意志。


 そして、勝利の栄光を手にしたのは──




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