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ph179 クロガネとの決着

 私は、この状況をどうひっくり返すかを考える。


 チェルノボクを倒されたのが痛すぎる。ブラックドッグをレベルアップさせる前に倒す算段だったのに……。


 このまま、次のフェイズで二対一になれば、先輩の攻撃を凌ぐのもままならない。だったら、狙うはロギウル。このフェイズで確実に倒す!


「影法師でロギウルを攻撃!」


 影法師がロギウルに向かって走り出す。先輩は反応を見せない。そのまま攻撃は通り、ロギウルの体力は6になった。


 ──レベルアップするなら、今だ!


「影法師、いくよ!」


 私は影法師とマナを循環させる。黒いマナが充満するこのフィールドでは、レベル2の影法師を完全に実体化させる事はできなかった。けど、レベルアップした姿なら話は別だ。


 私はカードに強くマナを注ぎ込む。


「レベルアップ、進化! レベル4、破戒僧影法師!」


 影のオバケのような姿から、霧を裂くように形を変える。


 ボロボロの僧衣を纏い、両手で錫杖を構えた破戒僧影法師が現れた。レベルアップした事で、攻撃権も回復している。


 ここで流れを変える。その想いを込めて、私はそっと目線で合図を送った。


「蝕影の指輪の効果を発動! このフェイズ中、スキルが使用不能になる代わりに影法師の攻撃力は4増加しら6となる! 影法師、ロギウルを攻撃」

「御意!」


 指輪から走った黒いマナが影法師の身体に流れ込む。その輪郭が揺れ、黒煙のような影が肩口から立ち上がる。影法師は静かに錫杖を構え、すでに狙いを定めていた。


 ブラックドッグのスキルは怖いが、MPが1の先輩はすぐに発動できないはずだと賭けに出る。すると、ロギウルへの攻撃はそのまま通り、体力が0となったロギウルが消滅した。


 ここまでは予定通り。あとは、先輩がどう出るか。


『俺は、MP1を消費して手札から魔法カード蘇る炎の残滓の効果を発動』


 ──きた!


『自身の場にいる地獄または炎属性のモンスター1体を対象とする。対象としたモンスターのレベルと同じ枚数、ダストゾーンにある炎属性カードをゲームからドロップアウトさせることで、そのモンスターの任意のスキル1つを、MPコストを支払わずに即座に発動させることができる』


 先輩のダストゾーンのカードが12枚から8枚まで減る。


『ブラックドッグのスキル、死への誘いを発動。このフェイズ中に受けたダメージの数値プラス、ブラックドックの攻撃力分のダメージを相手モンスター1体に与える。対象は、破戒僧影法師』


 影法師の今の体力は9。そして、先輩のモンスターがこのフェイズ中に受けたダメージは7。ブラックドッグの攻撃力は3。合計10ダメージが影法師に降り注ぐ。


 私の手札では、このフェイズ中にブラックドッグを倒すことはできない。次の先輩のフェイズを考えると、ここでフェイクソウルを破壊されたら、勝ち筋が完全に無くなる!


「私は、手札から魔法カード、闇夜の計略を発動! 自身のフィールド上にいるモンスター1体を選択し、そのスキルに必要な本来のMPコストを支払うことで、このカードはそのスキルと同一の効果を発動する!」


 蝕影の指輪のデメリットで影法師はスキルを使えないが、このカードならスキルを魔法カードとして発動できる。


「私は、MP4を消費して影法師のスキル、呪詛返しを選択!! 相手モンスターがスキルを発動し、自身のモンスターに影響を与えた時、その効果を自身から相手モンスターに移す」


 黒い衝撃波が逆流する。影法師の錫杖が空を裂き、呪いの奔流を弾き返した。


 ブラックドッグの体が大きくのけ反る。返されたダメージに耐えきれず、体力は8まで減少した。


 先輩のMPはゼロ。ここで、畳み掛ける!


「影法師! ダブルアタック!!」

「承知!」


 影法師が疾風のごとく踏み込む。その刹那、先輩の足元に新たな魔法陣が広がり、ブラックドッグとの間にマナの循環が始まる。


 全ての七大魔王(ヴェンディダード)を取り込んだことで変質した先輩の黒いマナが、ブラックドッグを包み込んでいく。その濁流のような気配に抗えず、ブラックドッグは激しい苦痛に顔を歪めた。


「ぐっ……」

「ブラックドッグさん!」


 思わず声を上げる。ふらつく足取りのまま、ブラックドッグがこちらを振り返った。その瞳には、明らかに正気を失いかけている色が浮かんでいる。


「……すま、ねぇ……嬢ちゃん……さすがの俺も、いし……き……が……あああああああ!!」

「ブラックドッグさん!!」

「主!!」


 影法師がすかさず私の前に立ちはだかる。黒いマナの奔流から、私をかばうように錫杖を構えた。


 ブラックドッグの絶叫が空間を揺るがす。それでも、先輩は構わず淡々とレベルアップの宣言を始めた。


『地獄の番犬よ、地獄の業火で全てを焼き尽くせ。レベルアップ、レベル5──ヘルハウンド』


 瞬間、まばゆい光が空間を満たした。私は反射的に両腕を顔の前にかざし、目を守る。


 光が収まり、そっと目を開ける。そこに立っていたのは、もはや私の知っているブラックドッグではなかった。


 体は異様に膨張し、全身から黒いマナが滲み出している。濁った涎を垂らし、血走った目でこちらを睨みつけていた。


 レベルアップ後の姿──ヘルハウンド自体は知っている。


 けれど、これは違う。


 今の姿は私の知るヘルハウンドではない。七大魔王(ヴェンディダード)の影響なのだろう。


 目の前にいるのは、もはやブラックドッグじゃない。理性を失い、何をするか分からない、危険な存在だった。


「っ、影法師!」

「はっ!」


 私はすぐに攻撃を再開させた。影法師の一撃は確かに通ったが、レベルアップによって回復したヘルハウンドの体力はまだ8。しかも、フェイクソウルも残っている。 


 今の私のMPは0。丸腰でフェイズを終了させるのは不味い!


「私は手札から道具カード、黒影の盟約を使用! このカードを使用することで、ダストゾーンにある影属性カードを1枚選択し、その効果をコストなしで発動する! ただし、使用後にそのカードをゲームからドロップアウトさせる」


 私が選択するのは──。


「私は影鋏を選択! デッキからカードを3枚ダストゾーンに送り、MPを3回復する!」


 手札は残り1枚になったけど、MPはなんとか3まで戻った。


 ……大丈夫、次のフェイズは、これで耐えきってみせる!


「私のフェイズは終了です」

『俺のフェイズ……ドロー』


 先輩の手札は3枚、MPは3となった。


 今の状況で、レベル5のヘルハウンドのスキルは発動できない……はず。けど、そんな甘い展開になるとは思えない。


『俺は手札からサークル魔法、灰焦の顕現を発動。このカードがフィールドにある間、すべてのプレイヤーのダストゾーンにあるカードは「炎属性」を持つものとして扱う』


 ダストゾーンのカードを全て炎属性に変える? ……まさか!?


『俺は手札から道具カード、煉獄の灰を使用。ドロップアウトされている炎属性カードを最大5枚まで選択し、それらをダストゾーンに戻す。この効果で戻したカードの枚数分、自身のMPを回復する』


 しまった……!


 ダストゾーンから戻されたカードが次々と炎の中へ滑り込むように舞い戻り、先輩のMPが一気に8まで回復した。


『俺はMP5を消費してヘルハウンドのスキル、死炎を発動。自身及び、相手のダストゾーンにある炎属性のカードをゲームからドロップアウトし、その枚数分の攻撃力を得る』

「くっ!」


 私のダストゾーンのカード10枚。全てが取り除かれる。ヘルハウンドに攻撃された時に備えて、発動しようと思っていたカードも、今のタイミングでは使えない。


 やられた!


 さらに、先輩は自身のダストゾーンからも4枚をドロップアウトさせて……ヘルハウンドの攻撃力は18。


 ……なるほど。影法師の残り体力は9。半減しても、フェイクソウルを割れる。そのラインを正確に狙ってきたってわけだ。


『ヘルハウンドで攻撃』

「私は! MP2を消費して手札から魔法カード、冥闇の吸引を発動!! 相手から受けるダメージを半減し、半減したダメージ分のMPを回復する!!」


 只ではやられる訳にはいかないと、相手の火力を逆手に取り、自身のマナに変換させた。


「いっ……きゃああああああ!!」


 衝撃が全身を貫いた。鈍い音が響き、体が宙に浮く。


「あ、るじ! くっ!」


 影法師のフェイクソウルが砕け、マナの粒が弾け飛ぶ。


 次の瞬間、私はフィールドの端に叩きつけられていた。背中を結界の壁に強く打ちつけ、その反動で地面に崩れ落ちる。


 焼けつくような痛みが身体中を走る。息を吸うだけで肺が軋んだ。


「主!!」


 影法師が駆け寄ってくる姿が視界の隅に映る。私は唇を噛み締めながら、それでも視線だけはフィールドに向け続けた。


 MPは10まで回復した。けれど、ヘルハウンドの体力も餓狼血牙の効果で16にまで戻っている。回復された差は、あまりに大きい。


 このまま地面に這いつくばっている場合じゃない。立ち上がらなきゃ……次の手を打たなきゃ……!


 歯を食いしばり、両手に力を込めて体を起こそうとする。でも、全身がバラバラにされたみたいに痛い。筋肉という筋肉が軋み、ナイフで刻まれるような鋭い痛みが骨の奥から湧きあがる。


「っぐ……!」


 呼吸もままならない。意識がぼやけて、視界がぐらつく。さっきまで確かに感じていた大気のマナも、今は遠く霞んでいくようで──。


 まずい。時間がない。このままだと、本当に立てなくなる。マナも、体力も、全部限界に近い。


 ──立て。お願い、動いて……!


『……俺はダストゾーンにある魔法カード、復讐の炎をゲームからドロップアウトさせて効果を発動』


 ゾクリと背筋を冷たいものが這い上がる。先輩が動いた。嫌な予感しかしない。


『自身のモンスター1体のスキルを一つ選び、発動できる。おれは……ヘルハウンドの魔黒炎牙を選択』


 やばい、やばい、やばい……! ダメだ、まだ体が動かない。起きろ、私の足! こんなところで終わっていいわけがない!


『このフェイズ中、相手モンスターへの攻撃が成功した時、相手のモンスターの装備及び相手プレイヤーの装備を全て破壊することができる』

「っ!!」


 蝕影の指輪が砕け散る。先輩のカードに反応するように、ヘルハウンドの体がうねり、禍々しい炎がその身に絡みついた。


『装備を破壊することに成功した場合、破壊した装備カードの枚数分の攻撃力を加算し、再度攻撃を行うことができる』


 ヘルハウンドは、攻撃力が19となり、再攻撃できるようになった。このまま寝ていたら、負ける。 


『ヘル、ハウンド……で……』


 来る。次で決めにくる気だ。この攻撃を、通す訳にはいかない!


『あああああああああ!』

「!」


 叫び声が、空間を裂いた。


 先輩が頭を抱え、膝をつく。


 身体を震わせ、絞り出すような声で叫びながら、蹲っていた。


 その苦悶の姿に、思わず息を呑む。まるで、内側から何かに壊されそうになっているみたいに、痛々しく、苦しげで、けれどどこか人間らしさが戻ってきたようにも見えた。


「……せ、んぱい?」

『……さ、ちこ……』


 その瞬間、先輩の瞳にうっすらと光が戻った。かすれた声で呼ばれた私の名前に、確かな“先輩”の意思が宿っている。


「先輩! 正気に……!」


 顔を上げかけたそのとき、先輩がこちらを強く見つめてくる。懇願するような目だった。


『……に、げろ……』

「!」


 その声は苦しげで、それでも必死だった。黒いマナに包まれた身体から、今にも崩れ落ちそうなほどの意志が絞り出されている。


『おれは……おま、えを……傷つけたく……ねぇ、んだ……頼むか、ら……にげ……て、くれ……』


 泣きそうな声だった。私のことを案じる、その優しさに心が揺れる。


 でも。


「いやです!!」


 思わず叫んでいた。喉が張り裂けそうになるほどの声で、先輩の言葉を押し返す。


「絶対に嫌です! ここで引く訳にはいかないんです!!」

『サ、チコ!!』


 先輩の叫びが聞こえる。黒いマナが、彼を飲み込もうと蠢いている。


 そうだ。私はこんな場所で寝てる場合じゃない。


「……私、先輩に言いたいことがあるんです」


 震える手で地面を支え、腹筋に力を込めて上体を起こす。


「先輩に、伝えなきゃいけない事があるんです!」


 片膝をつきながら、歯を食いしばり、重たい身体を引き上げる。


「……言い逃げなんか、させません」


 ようやく立ち上がった。足はふらついているけど、意志は揺らいでいない。


「逃げて、たまるか!!」

『サチコ!』


 先輩の声がはっきりと響いた次の瞬間、黒いマナが激しく噴き出す。まるで、彼の意思を押し潰すように、荒れ狂っていた。


『く、そが!』


 先輩が呻くように叫び、頭を抱えて膝をつく。苦しげなその姿は、まるで何かと激しく争っているようだった。


『ふざけんな……黙れ! これ以上サチコを傷つけんなら、絶対ぇ許さねぇ! 俺は、もう……二度と!!』


 荒々しく頭を振り、何かを追い払うような仕草。私には見えないけど、きっとアフリマンの声が、先輩の中で響いているのだろう。


『サチコは……さち、こだけ……は……ヘルハウンドで……やめろ。だめだ。ふざけっ……影法師を……違う! 動くな! だまっ……攻撃っ、サチコ!』


 ヘルハウンドの目がギラリと光る。次の瞬間、狂ったように影法師へと牙を向け、喉元へと飛びかかってきた。


「MP4を消費して影法師のスキル、影縫いの術を発動!」


 私は即座に叫ぶ。影法師の足元から伸びた影が蛇のようにうねり、ヘルハウンドの全身を絡め取る。


「このフェイズ中相手モンスター全ての攻撃を不能にする!!」


 ヘルハウンドの牙が、影法師の喉元に届く寸前で止まった。黒い鎖のような影が、その巨体をぎりぎりで制した。


 先輩の顔が、わずかに安堵の色を浮かべる。けれど、それも一瞬。すぐに苦悶の表情へと戻り、奥歯を噛みしめるようにして俯いた。


『……サチコ……今の俺は、自分を制御できねぇんだ……だから、……頼むよ……俺に、お前を……傷つけさせねぇでくれ……!』


 先輩の叫びが、胸に突き刺さる。哀しみと後悔、全部が滲んだその声に、一瞬だけ怯む。


 でも、だからって、ここで折れるわけにはいかない。


「安心してください」


 確かに、私の手札は0。影法師の体力も残り1。ヘルハウンドは体力16、フェイクソウルも残ってる。普通に考えたら、勝ち目なんてない。


 だけど。


「ここからは、1ダメージも受けないんで」


 私は、真正面から先輩の目を見据える。


「制御できない? 上等ですよ」


 先輩のフェイズが終わり、私のフェイズが回ってくる。


「全然負ける気ないって、言ったじゃないですか」


 フェイズ開始時のMP回復と同時に、デッキからカードをドローする。そして、手にしたカードを見て驚く。


 ……ここで、このカードを引くなんてね。


 負けたら全て終わる。そんな瀬戸際で引き当てたカードに、思わず笑ってしまった。


「初めて会った時みたいに完膚なきまでに叩き潰すんで、覚悟してください」


 本当に、この世界の命運は…………どこまでいってもカードゲームが握っているらしい。


 絶対に勝てと言わんばかりにきたこのカード。まるで、運命が私を導いているようだった。


 これ以上、マッチを長引かせる事はできない。ここで終わらせる。それが、私の覚悟だ。


「私は、MP4を消費して影法師のスキル、影千切を発動!」


 影法師の足元でマナが蠢き、その身を包む。


「このフェイズ中、フェイズ開始時の自身の残りMPと同じ数値分、攻撃力を加算する!」


 このフェイズが始まったとき、私のMPは9。影法師の攻撃力が、瞬く間に11まで跳ね上がる。


「影法師! ヘルハウンドを攻撃!」

「御意!」


 影法師が地を蹴り、錫杖を振り上げながらヘルハウンドへと迫る。


『っ! MP1を、消費して……手札から魔法カード、炎禍の礫鎧を発、動。このフェイズ中、相手モンスター1体の攻撃力を半減し……さらに、減少した……攻撃力と同じ数値分、自身のMPを回復する』


 声が乱れ、口調も途切れがちだった。先輩は明らかに、自分の体を自分の意思で動かせていない。それでも、戦いを止められずにいる。苦悩の中で、それでもカードを繰り続けている。


 影法師の攻撃力は5まで減少し、ヘルハウンドの残り体力は11も残ったが、先輩の手札を0にすることができた。


 ……これでいい。


 先輩のMPが魔法カードの効果で7まで回復する。私はすかさず影千切の追加効果を発動させた。


「攻撃が成功した場合、相手モンスターのフェイクソウルを1枚破壊し、MPを2奪う!」


 影法師の錫杖が光を放ち、ヘルハウンドの体を直撃する。


 よし、これでフェイクソウルを破壊できたし、私のMPも7になった。


「……先輩、覚えてますか? 二回目の私とのマッチ」


 あのときの逆転劇が、今もはっきりと胸に刻まれている。あれと同じ状況に、今の私は立っていた。


「私は、MP3を消費して手札から魔法カード、冥界の闇営業を発動!」


 先輩との二回目のマッチ。ギリギリまで追い詰められ、逆転できたこのカード!


「このフェイズの戦闘中に回復したMPの数値だけモンスター1体の攻撃力を上げる!!」


 炎禍の礫鎧で回復したMPが5、影千切で回復したMPが2。合計7。今の影法師に、それをすべて上乗せする。


「……先輩。今から言いたいこと言うんで、耳の穴かっぽじいてよぉく聞いてください」


 今の影法師の攻撃力は12。ヘルハウンドの残り体力を上回った。


「お前なんかに……誰が負ける(惚れる)かああああ!!」


 私はすっと目を細め、アフリマンに乗っ取られそうになっている先輩を見つめる。


「いつも勝手に暴走しておいて、最後だけカッコつけて自己犠牲? ……そういうの、一番腹立つんですよ」


 私のMPは4残っている。ヘルハウンドのスキルを発動されても、影法師のスキルで対抗できる。


「私を本気で負かしたい(惚れさせたい)なら……生きて、なりふり構わず勝ち(口説き)に来いよ」


 視線だけで影法師に指示を送る。影法師は黙ってうなずき、錫杖を振り上げた。


「……そしたら、少しは考えてあげなくもないです」


 その言葉と同時に、影法師の一撃がヘルハウンドに直撃する。凄まじい衝撃と共に、黒い獣の姿が煙に溶けるように消えた。


 残り体力11を一撃で貫き、盤面から姿を消す。


 静寂が訪れる。カードが、場の空気を支配する音も、今はもうない。


 ──私の、勝ちだ。




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