#『第十五章』#
今度は変なおっさんが、金貨を入れた頭くらいの袋をオーリアに渡して、オーリアは銀貨六枚、銅貨二枚を受け取って、最後になんか話しながら二人でオーリアの馬車まで来て、荷物を下ろし始める。
もちろん俺は何をしているのか全然わからない。
そして荷物を下ろし終わるとオーリアは、引竜を紐で軽く引っ張ってその場から離れた。
もう馬車には何も乗っていない。全部荷物を下ろしてしまったからだ。
「こりゃ〜、問い詰めんとな」
俺は千里眼からオーリアを見て、誰もいない部屋で不気味そうに言い、クスッと笑みを浮かべる。
だが、オーリアはこの俺がいる場所とは真反対の方向に行き始めた。
すなわち、すぐには帰ってこないということ。
まぁ、そろそろ辞書も読み終わるし、丁度読み終わった時間帯に帰ってくるなら、いいかね。
よく考えれば俺には思考万能加速がある。
これのスキルを少し応用して使えば、すぐに読めると気づいたのだ。決して楽したいからといって色々と試行錯誤していたわけではない。
このようなことから今日中にでも読み終わると言うこと。
引き続きオーリアを千里眼で監視してても大丈夫。
そう言えば今、アグネリンドは何をしているのだろうか。
最近あの話し方が恋しくなってしまっている。
その理由は簡単で、アグネリンドの喋り方が前世の仕事場の後輩と似ていたからだ。声も似ている。
(へぇ〜。オマエ、転生者なんだ……)
するとアグネリンドの声が聞こえた。
でもなんだろう。結界には移動してない。
(今、何で私の声が聞こえてるか、疑問に思ってるだろ)
「いや、何でわかったんねん」
「オマエが二回にわたって私のところにきた結果、私もこっちに意識だけだがこれるようになったと言うこと。まぁ、精神保護体が作ることは出来ないから、オマエの中でしか活動できないけどな」
そうそう、俺の後輩もこんな感じの話し方だった。俺だけにではあるが、彼女は俺が先輩だとわかっていてフレンドリーに接してきていた。他の彼女からしたら先輩の者には敬語をきちんと使っていたのにだ。でも、俺もフレンドリーに接してきてくれた方がやりやすかったため何も言わなかった。
とりあえず、辞書をを読みながらでもアグネリンドと会話できるので、会話することにした。
「そう言えばさ、アグネリンド、初めて会った時に言ってた暴星竜、リアグリンドって誰?、この前聞こうと思ってたらそん時忘れてて聞けなかったからさ……」
(なるほど、……ごめん!私もやっぱ分からん!)
はぁっ?舐めてんのかよ。と言いたくなったが、思い殺す。
「多分、暴星竜って言うくらいだから竜種だと思うんだけど」
(ほんとにごめん!分からん)
その返答から俺は多分、何か隠している、と考えた。
……
…
あれから決行な時間を使って話して、最後に俺は、
「なぁ、アグネリンドに耐えられる精神物質保体を俺が作ることができればこの世界に出れるってことだよな……」
と言う。
あまり大きな意味はない。なぜか気になったのだ。
でも、できるなら俺から出してやりたいとも考えている。
(できる。でもな、私に耐えられ精神物質保体るはそう簡単に見つからない。竜種である私本人ですら作るのは困難なのだからな。オマエが天災級なら可能だろうがな)
「アグネリンドは天災級じゃなかったのか?」
(前までは天災級だったんだけど、封印されて弱体したせいで竜災級に落とされたんだよ)
アグネリンドが本当のことを言っているのだとしたら、封印したやつはアグネリンドと同じの、天災級、もしくは上位の竜災級となるだろう。しかし、それが勇者による者なのか、はたまた同種族にやられた者なのかは教えてくれなかった。
それにしても、三つのことを同時進行している俺ってやばくない?無理はしてるけどすごくない?
オーリアを千里眼で見てわかったことは、どうやらこの国の王のところに行っているのがわかった。
◇◇◇
俺は王城の目の前まで来ていた。
その理由は、俺の商人としての仕事を引退すると伝えに来たと言うものだ。
俺はこの国で一番の商人であると同時に、王直轄の極秘な情報省の大臣だと言うこともあって、この前入国する時、門を簡単に通れたと言うわけだ。
無論俺はこの二つの役職を辞めるために来たということ。
大臣の地位は、俺よりも優秀な奴がいるため問題ないと思ってるし、商人は、これもこの国に俺よりいい商人の素質を持っている奴に預けるから問題ない。
つまり、これからはのんびりゆっくり余生を送りたいのだ。
門番のところまで行き、
「俺の名はオーリアだ。王に大事な要件があり参った次第だ」
と言う。
すると門番は俺に丁重な対応で門の中に入れた。
引竜と馬車は門の中にある、専用の場所に置いて、王城本体に入る。
「……、やっぱり広いな……」
そんなことを思い、言う。
王城に入る時、いつも思うことだ。
このでかい廊下を今俺は一人で歩き、王室まで行く。
この国は他国と違って小さい。つまり小王国ということだ。だが、王城の大きさは、他の小王国の王城より小さい。我が国の王城の構造と、他国の王城の構造が全く違うからだと思う。
{コンコンコン……}
そう王室の扉を手でノックする。
「……誰か」
「極秘情報省、大臣。オーリア。と言えばいいんだったっけ?」
「フハッ!なんだ、オマエだったか!入るが良い」
そう言われたので俺は遠慮なく扉を開き、入室する。
一面畳で、奥のど真ん中に王がいた。
「相変わらず声デケェな!」
俺も大声で王に言いながら俺は王に、またも歩いて近寄る。
◇◇◇
とうとうこの国の王と対面したらしい。
王の姿はどことなく『徳川家光』に似ていたのは驚きだった。よく教科書で見かける徳川の資料で着ている黒色の服と、頭に変なのをつけていて、面白い形のセンスみたいなやつも持っている。
オーリアは貴族かなんかか?と思っていたが、当たっていたらしい。もしくは大臣、だったり?
そんなことを思いながらも辞書を読む。
ちなみにアグネリンドとはもう会話していない。
あれから少し話してまた別れたのだ。
普通に会話できるようになったとは言っても、やはり時間制限はあるらしい。やっぱり彼女と話すのは和む。
そして次の辞書のページを開こうとすると気づく。もう残り五ページちょいだと言うことだ。
やっぱり思考万能加速になってから優秀だなぁ〜。
はい。そんなことを思っていると、とうとう読み終わっちゃいましたなぁ〜。
思ったよりも早く読み終わってしまった。
なので今から外に出て、万能感知もきって、文字が読めるかどうか確認することにした。
うむうむ。読める。これで外に出ても安心だ。
この言語形式はなんとなく中国語とかじゃなくて英語に似ている。俺は英語が超苦手だったから、楽に習得できてよかった。
そんなことを思いながらも俺はオーリアを見ている。見ている限り、あまり進展があるようには見えないが……。このことについても帰ってきたら話してくれるのを祈るしか無いな。
そんなことを思って、千里眼を解くことにする。すごくない?すごくない?と思ってはいたものの、二つや、三つを同時進行するのはとても疲れた。
前世で俺は『完全並列思考能力』というすごい能力を持っていた。普通のマルチタスクとは違って、切り替え、という作業をしないで仕事ができていた。すなわち並列意思みたいなもんを持ってきたって感じ。
あの頃は完全並列思考能力を使用しながら仕事をしていても疲れなかった。しかし、その世界に来て、久しぶりに使ったら疲れるようになっていた。だから進展がなさそうだなと俺は思ってオーリアを千里眼で監視するのをやめたのだ。
…………
………
……
…
あれからずいぶん時間が経った。多分時間は八時を過ぎたあたりだと思う。
ちなみに俺はオーリアの監視をするのはあれからしなかった。万能感知もあれから発動していない。たまには普通もいいだろうと急に思ったからだ。
今なら後ろから脅かすこともできることも忘れてはいけない。
すると外から物音が聞こえた。玄関からは真反対のところから。しかしそこには何があるか俺は知っている。馬車用の車で言うと駐車場があるのだ。
そのことから、
「帰ってきたか?」
と口に出して言う。
それと同時に、今度はどうやってお出迎えをしてやろうかと考える。しかし、もしオーリアだとしたら着々と回り込んで宿に入ろうとするだろう。ならばこれしかない。
すぐにできる荒技!そう。荒技とは言わないが、玄関前まで行ってすぐ前に作っていたメイド服に着替えて。これでみんなはわかっただろう!
「メイドの、お帰りなさいませ、ご主人様♡をしてやるのだ!」
エルフに通用するかどうかの実験にもなる。決して、変な気持ちがあるからと言うわけではない!ないのだ!
すると目の前の扉が開く。
オーリアは疲れた顔をしていたが俺にはそんな知らん。
「お帰りなさいまヒェ……。ゴッホん!お帰りなさいませ。ご主人様♡♡♡」
最初らへんで言葉を噛んでしまったが問題ない。最後にはメイドカフェで見て学んだ技、かわいい投げキッスをしたから。
しかしオーリアの反応は……。反応はとても哀れむ顔を俺に向けてくる。
彼女は歳の割には中身が若い感じだったが、この目はなんと言うか、職場で好意を抱いていたかわいい上司に哀れれむ顔をされた時と同じくらいオモイ。
あの頃もそうだったが……、何か、大切なもんを無くしてしまった気がする……。
「……入っていいか?」
「あっ……、うん……」
そう言って壁による。
するとオーリアは俺を見ながら横切る。
オワタ。今更だが、超後悔したのである。
しかし、こんなに遊んでっ、いろいろなことをしているが、本当の目的である技術者探しは忘れていないことを知っていてほしい。
……
…
そのあと俺は何もなかったかのようにオーリアに何をしてたか聞いた。もしかしたら隠すとも思ったが、きちんと話してくれた。それはきちんとさっきまでの言動とも一致していたことは俺だけが知っていると思う。
どうやらオーリアはこの国では極秘情報省の大臣&この国一の商人だったらしい。だが、この二つの席を今日、退けるために外出したと言うことだ。
この時、オーリアは今までの話し方ではなく、真剣な話し方で、今までの話し方が演技だったと気付かされる。
俺からしたら、オーリアが商人の座を退けるとなると、不都合があるのだが、俺はそんなことは言わなかった。
「それとね」
そんなことを言ってオーリアは腰に下げていたやけに大きいチャラチャラ言う袋を俺に渡してきた。
だが俺は、これは?と言うほど馬鹿じゃない。大体察しがつく。
「俺の服の分だろ」
「そう。でもこんなにいらないから」
つまり結局オーリアへの報酬はなしということだ。でも、
「俺にも一応プライドというのはあるんだよ。だからな……」
そう言って袋の中に入っているものの半分よりちょっと多めをベッドにチャラチャラと音を立てながら落として分ける。
それは金貨である。おそらくあの時のジェスチャーから考えるに、七〇〇枚はあると思う。てことで三五〇枚以上を落としているのだ。
「これ最低でもこれぐらいは受け取ってもらう。……、文句は言わせん!」
俺はそう言って他の袋にベッドに落とした金貨を移し、オーリアが口を開けた瞬間、喋らすまいとして言い、袋を渡す。
「お前はこれからゆったりと暮らすんだろ?なら貯金は沢山あって困るもんじゃない……。俺は貯金がそこまでなくて苦労したこともある……」
「シルダはどうすんのよ」
「もう待ちきれないか?俺についてのことが」
「当たり前じゃない?気になるのは」
オーリアはもう喋り方が普通の女のようになっていた。二つの重い座から退けたことによってだろう。
「じゃあ今から外出するぞ。またここに戻ってくるけどそこは安心しろ。今から黄昏の大森林に行く」
俺はそう言って宿の扉を開けて出る。オーリアはなんで外出?と言う顔をしていたが、数秒後にオーリアも扉を開いて宿のの部屋から出た。
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《魔物災害レベル》
ランクE
※一人の大人よりは弱いが群れるので注意
ランクD
※普通の大人一〇で勝てる
ランクC
※戦闘経験持ち大人一〇でギリ勝てる
ランクB
※一小国の軍事力で対処可能
ランクA 鬼災級
※一小国の総力を結集すればギリで対処可能
ランクA+ 竜災級
※大国の総力を結集すれば対処可能
ランクS 天災級「カタストロフィ」
※一国家では対処不可能。全国家でも分からない
ランクS+ 神災級「ディオデロフィ」
※神の領域