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#『第十四章』#






 貴重な荷物を宿に入れ終わり、俺はベッドにジャンプして入る。

 ふかふかなベッド……、とは言い切れないふかふか具合ぐあいではあるが、とても久しぶりにちゃんとしたベッドに乗っかったせいか、とても感動してしまった。まぁ、嬉し涙は出ないけどね。 

 そんなふうにしていると急に扉が開く。

 オーリアが帰ってきたのだ。しかし驚くことはない。万能感知ばんのうかんちで察知してわかっていたからだ。

 一応オーリアに渡す服も暴食覇者ぼうしょくはしゃから取り出して置いてある。大体三五着くらいだ。

 俺の作った中でも失敗作だが、この世界では品質の良い服となっているので、大丈夫だろう。


「何してんだよ……」


「お帰りなさいませ」


 まくらいたままオーリアの方を見ようと寝っ転がりながら振り向き、少し低い声で決めて言ってみた。


「はぁ……、呆れた……」


「まぁまぁ、落ち着けよ。一応服の方は用意しといたから」


 そう言われてしまったので暴食覇者ぼうしょくはしゃでさっきまで格納かくのうしていた三五着くらいの服を指差して見せる。

 ぐちゃぐちゃにイージーチェアの上へんでいたのはみなかったことにしてくれ。

 オーリアが俺の指差した方に振り向くと、驚いてるような声をあげて俺に、


「お前、こんだけの服をどこで持ってたんだよ」


「ふふっ、極秘ごくひさ!」


 まだ俺は同じ体勢である。


「触ってごらん」


 俺はそう言う。

 この世界のぬのの一般的な材質がこの枕と同等なら俺が作った服の材質は驚くだろう。

 オーリアは、言われなくとも確認するために触るさ、と言わんばかりの目で俺を見て積み上げてある服の方に歩き出て、服に触る。


「えっ……?なにこれ?この材質、大臣レベルほどの服の材質だ!どこで手に入れたんだ!ハケ!」


 すると俺に色々なことを言って、途中から俺に乗りかかって首を絞めて降りながら、ハケ!、と言ってくる。ぶっちゃけて言うと超怖い。このエルフが。

 俺も抵抗してるがなかなか抜け出せない。人間の力くらいで抵抗してるからだ。

 そのことからこのエルフ……、いや、オーリアは普通に力が強いと言うことだ。しかし、


「ほいっ」


 俺はそう言って武術を使って逆にオーリアを警察が犯人を捕まえる時にやる関節技であるハンマーロックをベットの上でやる。

 昔の俺ではできなかった芸当だが、今の俺にはできるのだ。


 ※ハンマーロックという名をシルダは知らない。形だけ知っているだけである。


 オーリアはなにされたかわかってなかったらしい。


「はぁ……、参ったよ。降参だ」


 そう言われたので俺は関節技をやめる。


「今の技は教えてくれるよな?」


 するとオーリアは倒れていた体をベッドの上で持ち上げ、ベットに座りそう言う。


「今のは関節技ってやつで、えぇっと……。なんて技か忘れた。ってより知らん。俺の出身国の国技に含まれる技の一つだった気がする」


「やられた感覚からして対人用の技ってところか……、にしても対人用の技を使うってことはお前ってもしかして、暗殺者アサシン忍者しのび狩人ハンターとかをしてたのか?」

  

 無論俺はそんなことをしたことはない。できるのはアニメやドラマ、小説などを見たり書いたりしていたため、想像でやったにすぎない。


「いや?俺はそんなことはしてないぜ」


 だがら俺は墓穴ぼけつ掘るのをけるため、一応真実を伝えておいた。


「シルダには謎が多すぎて、それを思う俺が頭痛くなってくる……」


 そんなことを言って頭を抱えながら言うオーリア。でも俺も同じ立場だったら同じようになると断言できる。

 しかし商人としてこいつは人、一人にのめり込みすぎじゃないか?とも思う。

 俺の知っている商人像は、交渉するものとは、そこまで関わりを持たないで、全ての交渉人と同じ対応を取り、利用できるものは利用して、がっぽり稼ごうとする。これが俺の想像する商人像だ。

 でもなんだかこいつは俺の考えていた商人像と結構異なるところが多い。

 もしかしたら表に出していないだけで、本当は俺の想像している商人と変わらないかもしれないが、見る限り本当に俺の想像していた商人と違いすぎる。服装もそうだ。馬車とかが横になかったりすると、ほぼ盗賊のように見える服装。

 しかしそれは置いておこう。


「まぁ、鉤爪を渡す五明後日ごあさってまでにお前が信用できると俺が判断したら色々な話をするよ」


「……、本当だな?信用していいな?」


「いいぜ。あっ!ちょっと待って。その日に俺のことを話すことになったら、絶対に驚くなよ」


「なっ?何言うのかわからないが、善処するとしよう」


 うんうん。これでいい。あらかじめ期限を設定して話しておけば……。

 どうやらこいつは俺についての情報が知りたいらしい。ならそれを利用して仲間になってもらおう。

 …………

 ………

 ……

 …

 あれから一日半が過ぎた。

 俺は宿の中でオーリアから少し前にスキル効果を全て教えてもらった。無論、瞬間記憶能力カメラアイのことだ。

 そして今、俺はこのスキルで習得するために必要なこの世界の文字、言語が全て記載きさいされている辞書を読んでいる。

 簡単に読んでいっているだけで理解できていた。すなわち、開発者かいはつしゃで作ったコピースキル、瞬間記憶能力カメラアイはきちんと機能していると言うこと。

 ちなみにその辞書の分厚ぶあつさは、通常の辞書ページ、一八〇〇くらいだが、この辞書ページはその三倍くらいの厚さ。三倍で単純計算すると五四〇〇ページだ。

 そして今、流れで読んではいるものの、ページ数はやっと七〇〇ページちょいを読み終わらせた感じ。

 全部読み終わるまで、一日中ずっと読んでいたとしても三日はかかると思うが……、いや、五明後日ごあさってと言ってしまったのだ。それまでに読み終わらせなければならない。イコール!休憩をたくさんとっていけないと言うこと!


「はぁ……。ダッル……」


 ベットに寝そべりながら辞書を片手に、大の字で言う。

 今はオーリアがいないのでそう言ったのだ。


「何が、ダッル……、なんだかな……」


 そのままの体制で顔をオーリアに向ける。


「今お前がいない妄想が確立かくりつしつつあったのになぁ……」


 そう、オーリアがここにいない妄想をしていたのだ。


「なにそれ!ひどくない?」


 俺の方に結構大きい声で言ってくる。そんな大声で言わなくても聞こえてるっつぅの。

 だが、こんな感じのロリも嫌いじゃない。むしろ……、スッキッ……!

 そんなふうに思って、ムフン!って感じの顔をしたら、オーリアは俺からキモって顔をして引いてしまった。


「いかん!こんなことをしてる場合じゃない!」


 和んでいる途中ふとそう思い、ベッドで寝っ転がったままであるが、辞書を読み始めた。

 ……

 …

 人間の食事を摂る昼食時間になり、オーリアは俺に昼食のような簡単な食事を俺に差し出してきた。

 でもここで俺が少し人間と違うということを匂わせるために、


「あっ、俺食事とか必要じゃないから。俺の分は別に食べていいよ」


 と言う。

 多分確定にオーリアには俺が何なのか明かすだろう。ならその時驚かれないように、俺が人間じゃないことを匂わせればいいんじゃないかと思ったのだ。


「食事を取らないと集中もできないぞ」


「平気平気。安心してくれ。俺マジで食事とか睡眠とか必要じゃないから」


 うっ……。少しあからさまだったかもしれない。


「あぁーも!じゃあ勝手にしろよぉ!」


 おっ!大丈夫だった。ここでまだオーリアについて分かった。もしかしたら彼女は鈍感どんかんなのかもしれない。

 ……

 …

 またも時間は経ち、オーリアは商人の仕事をしに、貴重な荷物を馬車に乗っけて行ってしまった。

 だが俺は彼女を千里眼せんりがんで監視することにした。

 無論理由は簡単。俺はこの世界の文字などを理解するプラス、オーリアを見極める。という二つの中で、オーリアを見極める。は、こういう時にしないと見極められないと思ったからだ。まぁ、ほぼ確定で話すつもりではあるけどね。

 いちいちこいつはダメだ。じゃあこいつはどうだ?なんてことをするのがダルいと思っているわけでは決してない。

 すると、彼女が立ち止まり、馬車にある荷物を少し取り出して変な店に入って行くのが見れた。

 確かあの荷物の袋の中には俺がやった服が入っていた気がする。やはり品定めするのだろうか。そんなことを思いながら、辞書を読みつつ千里眼せんりがんで監視する。

 ちなみに声は聞こえない。

 オーリアが店員に上下一着ずつ服を見せる。するとその店員が品定めするために奥に持って行ってしまった。

 やっぱり品定めだ。

 でも嬉しかった。簡単に受け入れて売っていたらキツい。疑うってことは信用していないプラス、用心深いとも捉えられる。

 すると店員が服を品定めし終わったのか持ってきて、手で二〇とジェスチャーを取った。

 これが金貨二〇枚だとしたら……。

 金貨一枚で日本円一〇〇〇〇だったから、合計で二〇〇〇〇〇円を売るって感じになる。これを三五着とらると単純計算で、七〇〇〇〇〇〇円だ。金貨だと七〇〇枚。

 そんなふうにいやしいことを考えていたらオーリアが何かを話し始めた。でも聞くことはできない……。



     ◇◇◇



「これとほぼ同じ感じの服が合計で三五着はあるんだけどさ、ここでだと何着買い取ってくれる?」


 俺は仲の良い店員に言う。


「全て買い取ることはできるが、他国ではこれを売らないのか?それと、どこでこんな品質が良い服を手に入れた?」


「どこで手に入れたかは聞かないでくれ……」


 俺はため息をついて舌を向き言う。

 自分の情報は言わないでくれ。そんなふうに言われてしまったからな。

 それに、このおっさんが金貨二〇枚という額を出すってことは、あいつは悪徳ではないと言うことだ。


「提供者から口封じされているのか」


「もう一つの質問に対してはだね」


 こいつの話を無視して俺は言い始める。


「もう俺、商人として行き詰ってんだ。商人としての欲ももう無くなっている。だから今日で商人をやめようと思ってるんだ」


「てことはこの服、含めて馬車にある全ての荷物をワシに全部売り払うってことか?」


{パチン!}


 おっさんがそう言った瞬間、指パッチンをして、あたり!と言った。

 でも馬車と引竜いんりゅうは売らない。

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