#『第十三章』#
門の目の前で入国できる時を待っていた俺とオーリア。
オーリアは俺よりも本当に人生経験が長い。向こうの世界で三七年生きていたが、オーリアはこの世界で一〇〇年以上生きているエルフ族らしい。
だがオーリアの見た目だけは幼女なのでやはり子供扱いしてしまいそうになる。
「シルダは俺の手助けをする人って言う設定で行くからそれに合わせろよ」
このように、幼女姿のものからガチの命令のようなものを言われると少しイラッとするが、別に今はどうでもいい。
「わかったよ。てことは俺が馬車を引いた方が荷物確認者にあやしまれないんじゃねぇの?」
「うっ……、確かに……。じゃあそうしよう」
今の話から察する者もいるだろうが、この一〇〇年以上生きているオーリアは、人生経験は長いが、お馬鹿なのだ。
まぁ、でも悪い気持ちはしない。向こうの世界ではなかった子供ができた感覚があったからだ。別に俺がロリコンなわけではない。
……
…
大きな門が開き、合計で五人の人間が出てきた。そのうちの三人は武装して、残りの二人は巫女装束をきた女性がいる。しかし昨日のものたちとは違う。当たり前だ。
ちなみに言うと、今日一番最初に入国できるのが俺とオーリアである。
後ろを見ると結構長い列ができているが、前を見ても誰も並んでないからだ。すなわち行列の先頭。
「最初の者、荷物確認を行う!備品なども確認するのでその場で立っておくこと!」
うっわ厳しいぃー。
するとオーリアは動揺する素振りもせず、
「俺はオーリアという者だ」
と言った。
すると、
「これは失礼した。では身元確認のところで名を書いて下され。付きそいのものもだ。その後の案内は身元確認者が教えてくれようぞ」
そう言って俺たちの後ろに回り、同じことを言う。
しかし俺はそれよりなぜオーリアという名を出しただけで荷物確認がされなかったのか不思議に思う。しかし今は聞くところではないから、入国してから聞くことにする。
「オーリア様と……」
「あっ、シルダです」
「申し訳ございません。こちらにお名前をご記入ください。そのあと、荷物確認、身元確認不要で入国してください」
「りょーうかい!」
いやおかしいだろ!言っちゃったよ!不要だって!もしかしてこの国のお偉いさんなのか?
「ほら書け」
するとオーリアが俺にそう言う。
オーリアの手元を見ると名前が書いてある紙があった。そこで俺はさっき言われたことを思い出し、馬車から降りて紙の前までいき、名前を書くためペンを持ち、『シルダ』とオーリアの名前の下に書く。
「……あの、失礼ですが、こちらはなんと書いてあるのでしょうか」
すると紙を見た巫女装束の人が俺の字を見てそう言う。
「シルダって書いたつもりですけど?」
「あっ、大変失礼しました……。どうぞご入国ください」
俺の書いた字の上にシルダと小さく書いて、俺たちを案内する。
これは本当に失礼だ。字が汚くて読めなかったと言ってると同じ。
そこそこ字は綺麗な方だと思っていたんだが……。
さっきからオーリアからの視線が痛いし……。この世界では俺の字は汚すぎるのだろうか……。
門をくぐった俺たちはまず宿確保をするため宿のところまで行こうとする。すると、
「なぁ、さっきお前が書いた字って古代文字だよな」
「いや、ちげぇよ。のそんなに俺の字が汚かったかよ!」
少しキレ気味で答えてしまった。
「字は綺麗だよ……。でもあの形式の書き方は古代文字しかないんだが」
俺は普通にカタカナを書いただけだ。
「もしかしてこれも古代文字に分類されるのか?」
そう言って馬車から降りて指で地面にひらがなや、漢字を何個か書く。しかしオーリアが言うには全て古代文字に分類されるという。
まぁ、日本語はとても万能な言語プラス文字だからな。
「なるほど。だから彼女は俺の字が読めなかったのか。でもさ、そうしたらお前らの言葉も文字も俺には古代語、古代文字で伝わってるぞ」
言葉が理解できるのは万能感知を応用して理解できる言葉に変換して理解できているのだが、なぜオーリアたちが書いた文字も理解できる文字に変換されているのだろうかと思う。
そして疑問がもう一つ。多分俺が喋っている言語は日本語。なのになぜ言葉が相手に理解されているのか。いやでもそんなことを考えても意味ないと瞬時に理解する。
支障をきたさないものならそのままでいいだろう。しかし文字を相手に書く時、理解されないとこれは支障をきたすと言ってもいい。
文字に関してはスキルでどうにかできることなのだろうかと思う。
「……、もしかしたらシルダ、万能感知、もしくはそれ以上の感知系スキルを持ってる?」
「ん?あぁ、持ってるよ」
「んなら、そのおかげで言葉も文字も理解できたんだろうよ」
俺は少し疑問に思う。つまりオーリアは、万能感知は文字も応用して理解できるように変換してくれると言っているようなもんだ。しかし、オーリアが言ったことは納得がつく。というか合っているだろう。
なので俺は検証するため万能感知を一時的に解除する。
すると周りから聞こえる声が全てわからなくなってしまった。建物やのぼりに書いてある文字が理解できない文字になっているのがわかった。
なにかオーリアが言っているようだが、理解できない言葉で言われてあるから全然わからない。だから俺は万能感知を元に戻すことにした。
するとあら不思議、全て理解できるようになったのだ。
そこからわかることは、万能感知に進化する以前からこのような能力を、気づかない間に発動していたということだ。
某アニメに、脳に負荷をかけて一瞬にして言語、文字などを習得できるという話があった。このようなことをできたらとても助かるんだが、叡智者に聞けないから、オーリアに聞くことにする。
「話変わるけどさ、情報を一瞬にして習得することとかってできるか?」
「さては文字の書き方を一瞬にして習得しようとしてるな。生憎とそんな便利なスキルはないぜ、って言いたいところだが、似たようなやつはあるぜ。確かスキル名は、『瞬間記憶能力』だった気がする。でもこのスキルは生きていく中で獲得するのは不可能なスキルだ。つまり、生まれつき低確率で獲得されるスキルで、もう獲得できないってこと」
そんなふうに教えてくれた。でも俺には可能なのだ。なぜなら『開発者』というユニークエクストラスキルを持っているからだ。
なんだかオーリアに悪いなと感じてはいるが、それよりすぐに文字を書くにこと関するのは対処できそうだというのが大きくてそこまでオーリアに気が回らなくたっていた。
「その瞬間記憶能力ってスキルの効果全て教えてくれ!」
「えっ?なんでだ?まぁ、いいけど……。わかってるな?報酬を」
「あぁ、わかってる。竜の鉤爪でどうだ?」
「……、それも嘘だろ……」
「いや、本当だ。でも約束がある」
「……えっ!?、まじめにほんとなん!?」
なぜオーリアが訛った口調で言うのかは大体予想がつく。だが、俺はそんなことお構いおなく、
「一。俺についての詮索をしないでくれ。二。鉤爪を提供する俺に関しての情報は開示しないでくれ。この二つの条件を飲んだ上で竜の鉤爪を提供する。オーリアには多分何も損はないはずだが……、どうだ?」
そうするとオーリアは少し手を組んで悩む素振りをする。
もしかしたら俺なんかにはわからない商人にとって損があることを言っただろうか。
「……、うん、いいぜ。その条件、条件を呑んでやる。それとな、多分、瞬間記憶能力のスキル効果だけじゃ少なすぎるからよ、その鉤爪一本、金貨一五枚で買うでどうだ?本当だったら竜の鉤爪は金貨二五枚はくだらないものだが、そこはスキル効果の提供で穴埋めさせてもらうぜ」
少し少なくないか?とも思ってしまうが、俺はまだこの世界のお金に関してまだ何も知らない。もし異世界アニメと同じ形式だったら結構高い値段だと言うこと。
しかし俺はこれでいいかなと思っているので、
「その提案、乗った」
と、OKの言葉を送る。
オーリアには俺が竜種だとは言ってない。だが、竜の鉤爪に関しては俺が竜の姿にならなければ採取できない。だから俺は、オーリアにその時、竜種だと明かそうど思う。
しかしきっと驚くだろう。
でも信用できる商人には明かした方がいいと思ったのだ。
商人は色々な国にも行き来していると思う。それなら俺の目標としている手助けを知らず知らずしてくれるはずだ。
……
…
オーリアと一緒に宿に着き、馬車に乗っている貴重な商品などを盗まれぬように部屋の中へ運んでいる最中だ。
今気づいたが、馬車と言っても、荷車を引いていた動物は馬ではなかった。
その生物は、ヴェロキラプトルという小型肉食恐竜と、翼を持たない竜の混合体のような姿をする、引竜という種の魔物だった。竜種とは全く違う種属らしい。
俺を見るなり引竜は少し体を震わせて後ろに少し下がっているのがわかる。
前世でもそうだったが、こう言ったペット?みたいなやつって色々と敏感だよなぁ。
ちなみにオーリアは用事があるからと言って、後のことを俺に任せてどっかに行ってしまった。
「はぁ……、人使い荒いな。ご主人様」
そう引竜に語りかける。
しかし引竜は俺に怯えたままうんともすんとも言わない。
「お前は知ってると思うけど、一応同じ竜系統なんだから怯えないで仲良くしようぜ」
俺はそう言って引竜に近寄り、ペットのようにヨシヨシする。
ヨシヨシしているその間も怖がっているのか、震えていて、その振動が俺にも伝わってきた。
しかしヨシヨシを続けている間にだんだんと震えが収まっていったので、一応竜系統なんだからがそんなちょろく懐くこととかはするなよ、と思ってしまう。
ヨシヨシをやめると俺は荷物の移動を再開した。