#『第十二章』#
合計で五〇〇着以上の服を作ってしまった俺は、暴食覇者にて保管した。
そしてその中で一番出来の良かった服で、なおかつ俺が一番気に入っている一着を今着ている。
その服装は、ハイネックジャケットならぬ、ハイネック学ラン。スタンドカラージャケットならぬ、スタンドカラー学ラン。
ハイネック学ラン、スタンドカラー学ランを合わせたような服装で、ズボンは服のデザインに合った裾の長い感じ。
これも服と同じで少し制服?スーツ?に近い形と色である。
まるで「僕、○強だから」と言いたくなるような服装ではあるが、紫がかった黒の長い髪の毛に合わせようとしたらこうなってしまったのだ。
すなわち、服の全体の色は紫黒色ということ。
ちなみに俺は昔、新撰組が好きであった。だから新撰組のような白の模様が袖口付近にある。
また服の見た目は変えるかもしれないが、今はこれでいいだろう。
少し話は変わるが、今は夕焼けが見える時間帯だ。
しかし俺から見て夕焼け中心部の真正面に人里?町?があるので今俺は歩いてそのところに向かっている。
俺は自分でも珍しいと思っていた。
こんな時間帯に活動しているからだ。
まぁ、俺が二日間休憩していたからさすがに動かないとなって思っていたんだけどね。
結構遠いい。
俺が向かっている人里は結構遠いいと思っている。
フォレスト・ボーダーからは本当に草原続きで見晴らしもいいのだが、人里がとても小さく見えることからも、結構距離があるのだと思っている。
俺の感覚だと大体一〇キロくらいはあると思う。て言うか一〇キロ先のものを確認できるって普通おかしいだろ。
これも竜種だからで片付けられるのだろうかと考えてしまう。
そう思いながらも俺は歩き続けていた。
飛んで行こうとも思ったが、この草原はとても心地いいので、歩いて行くことにした。時間ロスと言われてしまうかもだが俺は知らん。
人族の町に行くのだから俺がすぐに竜種だと言うことを悟られぬようにしなければならない。
なので人間と同等のオーラ放出にしなければいけないと思っている。まぁ、多分人間と同等だとしたら、オーラの放出をとても弱めなければいけないと容易に想像がつくのだが……。
一応、万能感知は三人称からの感知が可能なので、俺が今どれくらいのオーラを出しているのかを確認できる。
だから俺は歩きながらオーラを三人称で感知する様にする。
三人称で見るのは初めてだなと思いながら。
「……、いやまだメッチャオーラ出てるやん!」
つい独り言を言う俺。
多分前にオーラを抑えた時は八五%くらい抑えられていたはずだったが、三人称で感知すると本当に八五%を抑えられているのかと疑ってしまうほどオーラが溢れている。
これも竜種だからなのだろう。
なんだか人間とは合わない種族なのかもしれない。竜種って……。
これ以上どうやってオーラを抑えるのかを俺は知らない。だが叡智者がいないので聞くこともできない。
くそっ!
あと二六日くらい待たなきゃいけないのが辛すぎる!
そんなことを思いながら、肩を落として進む。
……
…
大体あれから二時間くらいかかったと思う。
ようやく門が見えて来たのだ。とは言ってもまだ一五〇〇メートルはあると思うけど……。
ちなみにオーラに関しては一応なんとかなった。
ほぼ無限の貯蔵を持つ暴食覇者で俺だけのオーラを体から放出する前に捕食して改善することができたのだ。
ここから見るに門の目の前でたくさん人が並んでいる。
多分入国するために並んでいるのだと思う。
まだ遠いが、門と塀の外見から察するに、『和』だとわかる。
塀の高さは人の大きさから見て多分七メートルちょいだろう。門の大きさは多分一六メートル。
全体的に東大寺の中門と周りみたいな感じ。
これぞ本物のワ○国だと思ってしまう。
門をくぐるには身元確認みたいなのがありそうだ。こういうのは定番中の定番。だからこそ、人が門の前で並んでいるのだろう。
一応どんな人間が並んでいるのか、千里眼で見るとしよう。
ざっと二〇人近くいる。その中には大きな荷車が何台もある。中には荷物を積んだものや、頑丈そうな檻をたくさん積んだものまでとても色々な荷物がある。
もしかしたらあの檻の中には奴隷っ……なんて思うこともしばしばだが、こんなところで奴隷を運ぶのはおかしいし思い違いだろう。
門のところには武士の兜以外の鎧を纏って太刀ではなく打刀を腰に差している人間が三人いて、その中の二人は門の左右で警備。次に残りの一人は門の前で荷物を置いてもらって荷物確認をしている。そして先ほどの服装をしていない身元確認をして中へ入れる二人の女性が、門の中に内蔵されている受付場所で座っている。
これを見て入るのは容易だと言う者はそうそういないだろう。
千里眼とはいえやはりまだ手に入れたばかり。性能もまだまだで身元確認の女性二人はぼやけて見える。しかし、美人だと言うことは確かだ。しかもその服装は現代で言う巫女装束!つまり巫女さんなのだ!
※巫女装束を着ているからと言って巫女さんと言うことはない。あくまでシルダが勝手にそう思っているだけである。
(これは早く行かなければな!)
そう思って俺は人間の速さで走り出した。
俺は竜種。普通に走ると人間では出せないほどの早さになる。だから魔物だとバレないように人間の速さで走ることにしたのだ。
……
…
俺が門の目の前に着く前には二〇人も並んでいた人間はいなかった。これは俺にとって好都合なこと。だって並ばなくていいってことだからだ。
そう思って俺は荷物確認の人に言う。
「この町?国?に入国したいんだけど♪♪♪」
「……、今日のところはもう入国ができぬのです。明日以降ならば入国の対応が可能となります」
すると荷物確認の者がそう言って去っていった。
その対応について俺は驚きの顔を出してしまった。
こういった入国に関して、入国できる時と、できない時があるのが衝撃的であったのだ。
「マジかよ……。また明日まで待機かよ……」
そんなことを誰も聞こえない声で呟く。
でもあの人間は普通に対応してくれた。つまり俺が魔物だと気づかれていないと言うことだと思う。
今更であるが、なぜ言葉がわかるかは、音波を万能感知を応用して理解できる言語へ変換されているからである。
話を戻して、明日になれば入国できるらしい。なら不本意であるが待つしかないだろう。
だから俺は一応この門から離れたところにある一本の木しかないところへ向かう。
「はぁ……、さっきまでのウキウキを返せよ……」
またも誰も聞こえない声で呟いてしまった。
{ガサッ ガサッ ガサッ ガサッ……}
そんな音が足の裏から聞こえる。草原を歩く音だ。しかし、耳障りとは思わなく、心地良い音であった。
…………
………
……
…
そろそろ入国できるだろうか。
そんなことを日の出を見ながら思う。
すなわち黄昏てたと言うこと。一本の木の上で腰をかけて日の出る方向をずっと見ていた。
だが、黄昏る前に考えていたことがある。
そう。どうやって入国するかだ。荷物確認は、荷物がないから大丈夫だとして、問題は身元確認だろう。
「なんか絶対拒否られる気がするんだけど……」
日の出を見ながら苦笑して言う。
「それなら俺と一緒に入国するか?」
すると後ろ下の方から声がしたので、すぐさま下を見る。
ボォっとしていたせいで万能感知による発見に気付けなくてここまで接近されていたのに驚いていて、それにプラス、喋りかけてきた人間の姿を見てまたも驚いた。
喋り方が男っぽかったから、高い声を持つ男だと思っていたが、女であったのだ。
その姿はいかにも盗賊していそうな姿であったが、どうやら商人らしく、馬車に乗っていた。
少し幼女に近い感じで、見た目だけだと多分小四くらいだ。
ていうかさ、馬車で来てたのに気づかなかったなんて……。
「どうする?」
するとまた幼女がそう言う。
「本当にお前とで入れんのかよ?はぁ……」
俺は日の出を見ながらため息をつく。
これは偏見だが、やはり幼女に見えることから幼く感じてしまっている。
「今お前、俺を馬鹿にしたろ」
急にそう言われたのでビクッとしてしまった。
「一応言うと俺、これでも一〇〇年は生きてるんだけど……」
そう言って幼女は頭に被っていたフード付きマントのフードを取る。
するとそこには長い耳があった。
髪の毛を見ると短いツインテールの金髪。
俺はその姿を見て驚き、木から落ちてしまったが、難なく着地して幼女に近寄り問う。
「お前もしかして!エルフ族なのか?」
「そうさ!俺はエルフ族。お前みたいな若い俺っ子女より人生経験が長いんだ!敬え!」
あっ、この子イタい子かもしれないと内心思う。
「それよりお前、あの『小王国バベロニアン』に入国したいようだな。俺は紳士だから一緒に入れさせてもらおうか?」
どうやら時々イタい子なだけで優しいやつなのかもしれない。
俺にとってはメリットしかない。人族の国にも入れる。エルフとの交流もできる。だから俺は、
「助かる!じゃあ遠慮せず甘えるとするよ」
と言う。
「ちなみに、入国したら報酬ね」
「わかった。……えっ?」
やられた。そうだよ。相手は商人なんだから。
(まぁ、鱗でも報酬としてあげればいい話か……)
よくあるが、竜の鱗は高く売れるのが定番だ。
「わかったよ……。じゃあ竜種の鱗でどう?」
一応聞く。もしかしたらいらないって言われるかもだからだ。さすがにないと思うが……。
「えぇぇぇ!!竜種の鱗っっっ!!もしかしてお前ってドラゴンキラーなのか?もし鱗が本物ならあんたは勇者と同等の実力者だよ!」
急に大きな声でそう叫ぶ幼女エルフ。
鱗だとダメだ。そうすぐに俺は悟る。
「冗談だ。防御力がいい日常的に使える服なんてどうだ?」
これも鱗で作ってあるが、解析鑑定されても鱗だとバレないようにすることは容易だ。
「なんだよ冗談か……。びっくりしたぁー」
「これを売れば結構な儲けになると思うんだが、どうだって」
「あぁ、悪りぃ悪りぃ。ありがたくもらうとするよ。んで?いつ俺に渡すんだ?」
「二日後にその服を渡すでどうだ?少し日にちをくれ」
「それは構わねぇけど」
これで入国できる目処がついた。入れば中で身分証だの身元だのを作れるはずだ。簡単に言うと身分証明書が発行できると言うこと。
いやぁ、どうなるかと思ったけど、いい方向に進んでくれて良かったと思う。
「何時くらいから入国ができるんだ?」
「多分今は準備って感じだから、今並んでもすぐに入国ができると思うぜ」
俺はそのことを聞いて返事をし、門の前で待機しようと提案する。
するとすぐに許可が降りて門の前まで歩き出すことにした。
「そういえば俺名乗ってなかったな」
歩き始めてすぐにそんなことを言う幼女。
「俺の名はオーリア」
「俺はシルダ。ちょっとの間よろしくな」
最後にそう言って門の前に着くまで無言が続いた。