ユダヤの福音書 第一章
1
1イエスはお生まれになられた。
2その包まれたイエスが置かれた飼い葉おけは普通の飼い葉おけであった。
3その為、汚くはあったがひと通りの機能を持ち合わせていた。
4しかも、その義理の父、ヨセフは常人で、大工をやっていた。
5処女マリヤはお生まれになられたイエスを見つめてこう言った。
6この子は偉大な指導者になる。この子は王の王になるべき者。
7神がマリヤの口から喋られたので、その様な言葉が出たのである。
8全く、神の為せる事は常人では理解しがたく、ヨセフも頭を使うのをやめ、義理とは言え、子のイエスを抱いた。
9全く、神の為せる事は一目でも分からず、二目でも分からず、三目に成ってようやく、少しは納得が行く。そういう類の秘跡だったのである。
10そして、イエスは大人に成り、バプテスマのヨハネから洗礼を受け、ようやっと教える立場になられたのである。
11弟子達はマタイ、ヨハネ、ペテロ、アンデレ、ヨハネの兄弟ヤコブ、フィリポ、バルトロマイ、トマス、タダイ、ヤコブ、熱心党のシモン、著者であるこの時点ではまだ何もやっていないのに裏切者扱いされるこのイスカリオテのユダ、その他である。
12特に、イスカリオテのユダは自覚が異常で、生きている自覚がはっきりとあった。
13イエスを裏切る事で、それは失われたと思われているのである。
14他の弟子達は自己主張が激しいが、イエスが死ぬまでは常人のレベルだったのである。信仰を除いて。
15特に、自殺と罪障の狭間にあったこのユダはユダ・カーナとして、先に神に、千年を生きる体を、千年は死なない体を与えられて、その千年の間にこの書を書くのである。
16いわば、人間の中で、生きている自覚を増やす事は至難であったが、世すなわち、第一世界を超えて、第二世界に来たならば、それも容易になったのである。なぜなら、人が優しく、接し方が柔らかい為に、このユダの中にあった悪も骨抜きになってしまったのである。
17懐柔されたこのユダはその後、第二世界にて「ユダヤの福音書」という大著を書かせていただいたのである。小説版福音書という事だから、誰もが読める書を目指して書いたに過ぎないのだが、第二世界にてヒットしたのを皮切りに、こうして、第一世界の協力者を得て、元の国がある第一世界に発表する次第である。
18批判は受けようが、発表してどういう反応を貰えるのか。楽しみにしていたのだったが、所詮は稚著。どんな反応でも後悔はしない。反応がなくてもまあ、いいとするか。