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第30話 ネヴァン商会

「名前は?」

「クリュー。そっちは剣士のオルヴァリオ。で、コレクターのリディ」

「コレクター? チームじゃねえのか」

「『サスリカ』の為に一時的に組んでいただけよ。あと貸し借りも色々あってね。まだしばらく行動は共にするわ。サスリカのこともあるし」

「まあなんでも良い。俺はエフィリス。知ってるか」

「さっき知った」

「てことは外国人だな」

「ラビアだ」

「同盟国か。歓迎するぜ」


 立ち入り禁止となった美術館へ入る。途中、すれ違う警察官にそれとなく挨拶をしながら、『氷漬けの美女』の置かれていた場所へ。

 そこには壮年の刑事が居た。


「ああ館長さん……て、ぞろぞろ連れてきたな」

「すみません刑事さん。捜査に協力してくれるトレジャーハンターさん達です」

「捜査に協力? ハンターが?」


 刑事は顎髭を撫でながら訝しげに彼らを見た。


「あれ、エフィリスさんか。なら納得だ」

「おう。あとこいつらは俺の連れってことで良い。実力はある。必ず『グレイシア』を取り戻す」

「ふむ。じゃあ話を進めよう」


 本当に、『氷漬けの美女』は無くなっていた。クリューは虚空を見詰める。そこには。数ヶ月前にはあったのだ。美しい氷に包まれた『彼女』が。解かしてやれる筈だったのだ。今日。


「現場……台座の裏にこれがあったんだ」

「?」


 刑事が持っていたのは、鳥の羽根だった。黒い羽根だ。何の変哲もないような。


「それがなんだ? 公園に行けばいくらでも手に入る」

「警察の間じゃ、少し前から話題でね」


 首を傾げたエフィリスに、羽根を渡す。エフィリスはくるりと回転させて、裏を見た。


「『ネヴァン商会』」

「!」


 そう、書かれていた。黒い羽根に、白い文字で。刻まれていた。


「商会、なんて名乗ってるが、まともな商売などしていない。人身売買から違法物取引、トレジャーの横領、悪質な転売。武器の密輸に強盗殺人。貧民街から身元不明の子供を拐って解体して売るようなガチ犯罪組織だ。確認されたのはずっと昔だが、最近になって活発化してきた。外国では『特級トレジャー』もよく狙われている」

「……そんな奴らが、俺の『グレイシア』を」

「捕まらないのか」

「ああ。トレジャーハンターは知らないだろうが、既に国際指名手配はされている。だが尻尾すら掴めない。こんな羽根をわざわざ残すほど『馬鹿』なのにな。ネヴァン商会という名前以外は、頭の名前も構成員の数も分からない」


 ネヴァン商会。クリューやオルヴァリオは勿論、リディも初めて聞く名前だった。それが、『氷漬けの美女』を盗んだ犯人。国を挙げて捜索して見付からない犯罪組織。


「分かった。ともかく『ネヴァン商会』だな。知り合いのハンター全員に当たってみる。クリュー、お前は?」

「…………」


 犯人は個人ではない。そもそもあんな巨大な氷の塊を個人で動かすことはできない。犯罪『組織』を追う。クリューは一切怯まないが、その手段をどうするのか。


「……少し考える。もしかしたら情報を得られるかもしれない」

「お前も何か伝手があるんだな。分かった。拠点はどこだ? 何か分かれば報せ合うぞ。俺は基本的にこの都市に居る。ハンターズギルドにお前達の名を伝えておく」

「……拠点、か」


 クリューは頭を捻った。そんなこと考えたことも無いからだ。だから自然に、オルヴァリオを見た。


「へ、拠点? 考えてねえや」


 オルヴァリオも、同じだった。だから自然に、リディを見た。


「……あんた達、ほんとド素人なんだから……。ラビアじゃ遠すぎるし、じゃあ暫定であたしの家にでもしとくか。伝書バトもあるし」


 やれやれとリディは紙を取り出し、さらさらと住所を書いてエフィリスへ渡した。


「お前はルクシルア人だったのか」

「まあね」

「ふむ。近いほど連携は取りやすい。館長はここから離れるなよ。定期的に報告に来る。情報共有していくぞ。じゃあな」


 受け取ったエフィリスは、踵を返して美術館を出ていった。行動が早い。これが『特級ハンター』なのだろう。


「あたし達も行くわよ。このこと、家に言っておかないと」

「リディの実家?」

「ええ」

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