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第20話 古代遺跡

「そっち! 最後の1匹!」

「おう!」


 翌日。

 遺跡の前まで来た一行は、猛獣の群れに襲われていた。昨日のフロストウサギと比べると小さな、猿のような猛獣だ。すばしっこく動き回り、鋭い爪で攻撃をしてくる。10匹以上居たが、今ようやくオルヴァリオが最後の1匹を斬り殺した。


「ふう。終わったか」

「ええお疲れさま。ふたりとも怪我してない?」


 こういう相手は、弓より剣の方が戦いやすい。近くへ寄ってきた相手には、リディは短剣で応戦していた。苦戦したのはクリューだ。


「クリュー。お前血が」

「掠り傷だ。それよりオルヴァの方が怪我してるじゃないか」


 防寒着は無惨に切り裂かれ、鮮血が垣間見えている。痛々しい光景に、リディは目を剃らしかけてしまう。


「取り敢えず応急処置するから。服脱いで待機!」

「寒っ!」

「文句言わない。傷口から菌とか入ったらヤバいわよ」


 ここへ来て、危険地帯の厳しさを味わっていた。クリューももう何度も発砲しており、弾も少なくなっている。


「レイホウザルの群れね。集団での狩りでフロストウサギだって狩っちゃう危険な猿よ」

「いや危なかったな。オルヴァ大活躍じゃないか」

「……だが奴等からも何度も攻撃を貰ってしまった。まだまだ鍛えねえとな」

「(嬉しそうだな……)」


 ひとつひとつの傷は深く無く、問題は無さそうだった。休憩の後、ようやく遺跡の中へと入ることになる。


「……古代遺跡か」


 巨大な滝壺が見える崖に作られた、石積の壁。今にも崩れそうなほど不安定に見えるが、しかし大きさは今まで見たどんな建物よりも巨大だった。


「どうして、こんな不便な所に建てたのかしらね」

「敵が居たんだろうな。トラップもそれが理由だろう。そうまでして、隠したいものがあった」

「『グレイシア』か」

「恐らくな」


 10年前に発見されてから、怒濤のように何人ものハンターが入り。もうお宝は掘り尽くされたとされている遺跡。


「まずはリディの見付けたお宝だな。あのおっさんの話は後だ」

「ええ。こっちよ」


 リディの案内で、3人は遺跡に足を踏み入れた。


「トラップってどんなのがあるんだ?」

「落とし穴からの剣山とかかしら」

「えっ。死ぬじゃねえか」

「死ぬわよそりゃ」


 暗い。当然だが陽の光は届かない。だがリディはしばらく恐れずに進んでから、壁を触る仕草をした。


「?」

「灯りが点くのよ。確かこの辺に……」

「!」


 パッ、と。

 一瞬にして、周囲が明るくなった。火は無い。松明も持っていないし、焚き火がある訳では無い。勿論太陽光も届かない。

 白か黄色のような明るさがあり、部屋全体を見渡せた。つるつるの光沢がある白い床と壁、天井に囲まれた不思議な廊下だった。


「なんだこれは?」

「古代技術でしょうね。まだ使えるなんて相当凄い技術みたい。遺跡ごとは持ち帰れないから、研究もできないけど」

「いつかは研究されるだろうな。もっと山道を整備して、安全が確保されれば」

「まあ、そうね。好きに荒らせるのも今のうち」

「言い方」

「あはは」


 慎重に進んでいく。生き物の気配は無いが、しかし見たことの無い光景に不気味さを抱く。


「トラップはいつ作動するんだ?」

「入り口付近のはもう無いわよ。色んなハンターが壊して回ったから」

「なるほど」


 ザン、と。

 天井がひっくり返り、数十本の槍が隙間無く降り注いだ。


「!?」


 あと一歩、前に進んでいたら。

 リディは串刺しになっていただろう。


「…………おいおい」

「無いんじゃなかったのか」

「あはは……。怖」


 寸での所で、クリューがリディを引き戻した。彼女は腰が抜けてしまったようだ。オルヴァリオも背中が冷えたのを感じた。


「マジで死ぬぞこれ……」

「だね。老朽化してて勝手に作動するトラップもありそう」

「まじかよ……」

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