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第11話 試し撃ち

「この辺で停めましょうか」

「まだ陽があるぞ?」

「クリューに1発くらい撃たせてあげたいし。火も起こさなくちゃいけないしね」

「なるほど」


 ピィ、と甲高い音の笛を吹く。犬達はそれを受けてぴたりと停まった。


「一面銀世界ね。いい景色」

「……確かにな」


 ずっと眺めていたオルヴァリオはともかく、クリューはようやくテントから出てきた。買ったばかりの防寒着に身を包み、雪の大地を踏みしめる。


「寒っ!」

「いや、そんなヘソ出してるからだろお前は。上なんか着ろよ」


 リディの格好は見てるこっちが寒くなりそうな軽装である。観念した彼女も防寒着を取りにテントへ戻った。


「どうだ? 銃」


 オルヴァリオが訊いてきた。


「難しいな。覚えることが多い」

「そうか。なあ知ってるか? この辺りはもう危険区域だ。猛獣が出る」

「猛獣」

「凶暴な動物のことだ。未開地には沢山いる」

「大丈夫なのか?」

「さあな。俺も、剣術を使えるとは言え猛獣を相手にしたことは無い。やってみないとな」

「まあ、最初は誰もそうだな」

「な」


 オルヴァリオはやはり上機嫌だった。早くその剣を使いたくて仕方がないのだろう。


「オルヴァリオ。あんたは火。必要なものはテントにあるから。クリューはこっちよ。あの林で試し撃ちしてみましょ」

「分かった」

「犬のエサとかは?」

「買ってあるから水と一緒に用意してあげて」

「分かった」


 出てきたリディはぱっぱと指示を出して、クリューを連れて近くの林へと向かった。


「そういえば、銃を俺が使ったらリディはどうするんだ」

「あたしにはこれがあるわよ」


 リディの小さなバッグには、鉄の塊のようなものが入っていた。いくつかのパーツに分かれており、組み立てていくと形が分かってくる。


「弓か」

「アーチェリーよ。それも最新式。持ち運びも便利なあたしのお気に入り」


 木を加工して作られた弓は見たことがあるが、こんな金属の塊は初めてである。なんだか厳つく、ゴテゴテしている。


「まあ、あんたは気にしなくて良いわ。さあ、あっちの木の枝を狙ってみなさい」


 木の枝を的に見立てる。クリューとの距離は10メートルくらいだ。


「撃てば良いか?」

「待って。まずはこれよ」


 リディは、クリューに石ころを手渡した。


「投げてみて」

「?」

「いいから」


 言われるまま、クリューはそれを投げ付ける。的どころか木にさえ当たらなかった。


「右に逸れたわね」

「そうだな」

「じゃあもう一度。今と全く同じ投げ方で、角度だけ調整しましょうか」

「分かった」


 リディは教師でありクリューは生徒だ。取り敢えずは素直に従ってみる。

 今度は左に逸れていった。


「修正しすぎたわね」

「そうだな」

「今度は当てられる?」

「ふむ」


 さらにもう一度、石ころを投げる。するとようやく、的の枝ではないが目標の木には当たった。


「当たったぞ」

「そうね。分かった?」

「何がだ?」

「『射的』っていうのはね。如何に『同じように撃つか』なのよ。あとはその照準を移動させるだけ。がむしゃらに撃つんじゃなくて、頭で考えて狙うのよ」

「……なるほど。今の3回とも違う投げ方をしていれば、当たるまでに時間が掛かってしまうのか」

「正解。ま、それをできるだけの運動神経と反復練習がとっても必要なんだけど。旅じゃ弾が限られてるから、効率良く練習しないとね」


 ぽん、と。銃を手渡された。今日の授業によりそれを危険物だと深く理解しているクリューは、彼女が簡単に自分に手渡したことを、一定の信頼の証であると判断し嬉しく思った。


「こう構えて、ここを見るの。身体を真っ直ぐ。とにかく真っ直ぐ。これを意識して」

「……ああ」

「反動はあるけど慣れるしか無いわ。取り敢えず撃ってみましょ」


 リディの合図で、引き金を引く。

 大きな銃声が林に響いた。

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